研究課題
若手研究
気候変動の将来予測のために生態系CO2吸収量の観測精度向上が鍵である。そこで陸上植物の光合成による生態系CO2吸収量(総一次生産量)を求めるため、高分解能分光放射計を用いて太陽光誘起クロロフィル蛍光(SIF)リモートセンシングを行う。この際に3次元放射伝達モデルを用いてSIFの林冠幾何・分光特性に起因する林冠構造依存性を解析することで、モデル・観測を融合させたより頑強な光合成推定を目指す。本研究ではユーラシア東部の重要な生態系タイプであり今後変動が注目されるカラマツ林(富士北麓)の観測タワーを利用し、SIFの変動要因と林冠構造依存性を明らかにし生態系CO2吸収量の推定精度を向上させる。
陸域植生の光合成推定のために太陽光誘起クロロフィル蛍光SIFの近接リモートセンシング観測とモデリングを行った。可視近赤外領域の高分解能分光放射データからフラウンホーファー線深度法によるSIFの導出を行うとともに対物距離における大気の放射減衰を補正した導出法も適用して検出性の評価を行った。観測された60 m四方の群落データにもとづく3次元林冠構造のモデルによる太陽光誘起クロロフィル蛍光SIFの放射伝達を計算した。観測からモデルへの精密な数値実装に注力し、3次元モデルの個葉蛍光入力データは計算値を用いずにローパスフィルタ葉クリップによる現地実測した反射・透過蛍光スペクトルを実装できた。3次元の群落モデルでは角度依存性が1次元モデルに比べ顕著であることが確認された。3次元モデルの計算結果を用いてルックアップテーブルによる観測幾何補正計算のプログラムを作成した。とくにタワー南面に設置した半球視野測定データにおける日変動には南中時の後方散乱成分がタワー構造により遮蔽されることから代表値を求めるにあたり観測幾何補正の必要性が大きいことが確認された。22年度の30℃以上の猛暑日前後の林冠蛍光と光合成の光利用効率についての解析を行い、大気飽差が15 hPa以上の日中に植物生理的なストレスに伴い総一次生産量が減少する昼寝現象が認められた。また関連研究で3次元放射伝達モデルによる蛍光放出の群落幾何依存性の解析について論文報告している。本研究によりユーラシア北東地域を代表する落葉針葉樹林(カラマツ林)の物質循環機能や気候変動の影響についての広域評価研究を進展させるための基礎的な知見を獲得することができた。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 5件) 備考 (1件)
Agricultural and Forest Meteorology
巻: 339 ページ: 109576-109576
10.1016/j.agrformet.2023.109576
https://cger.nies.go.jp/cgernews/202401/398006.html