研究課題/領域番号 |
21K17879
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分63010:環境動態解析関連
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研究機関 | 総合地球環境学研究所 (2022) 京都大学 (2021) |
研究代表者 |
大西 雄二 総合地球環境学研究所, 研究基盤国際センター, 特任助教 (10847677)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 琵琶湖 / 底生動物 / 微生物 / 核酸 / 安定同位体 / リン |
研究開始時の研究の概要 |
炭素・窒素安定同位体比測定に適した微生物からの簡便な核酸抽出手法を検討する。その後、様々な微生物を炭素・窒素・リン濃度を様々に変化させた培地で培養し、菌体と培地中の炭素窒素源との同位体比の差を測定する。さらに、核酸・アミノ酸・脂肪酸などの代謝物質の化合物ごとの濃度プロファイルと炭素・窒素同位体比を測定することで、核酸の生合成代謝の活性と菌体と栄養源との同位体比の差との関連を考察する。また、これらの結果を琵琶湖深層の生態系に適用することで、新たな生態系解析手法の確立を目指す。
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研究実績の概要 |
本年度は、昨年度に採取した試料の分析を進めた。夏季に琵琶湖最新部(推進90m)と水深50m地点の湖底で採取された堆積物と底生動物の硫黄同位体比を測定した。堆積物からは高濃度の硫化物が検出された。その硫黄同位体比を測定したところ、その硫化物の起源が堆積物内での有機態硫黄の嫌気分解や、硫酸還元細菌による硫酸還元によって生じていると考えられた。さらに、その硫化物が堆積物深部で硝酸還元型の硫黄酸化細菌によって消費されていることも明らかとなった。この堆積物で生成、消費されている硫化物の硫黄同位体比と、底生動物の硫黄同位体比を比較することによって、底生動物の硫黄栄養源の内、約60%が硫化物に由来することが明らかとなった。これはこれまで淡水環境ではほとんど知られていなかった、硫黄循環に関する新たな栄養経路である。 これらの成果によって2件の国内、国際学会での発表と、1件の国際誌への論文投稿を行った(現在査読中)。 上記で示した新たな栄養経路は堆積物内での強い貧酸素環境によって生じていると考えられる。そのため、湖水の全層循環が生じにくく、湖底が貧酸素水塊に覆われる夏季に調査を行った。新たな栄養経路が夏季の成層期特有の現象であるのか、それとも年間を通じて生じているのかを明らかにするために、循環期である3月にも調査を行った。成層期調査と同様の試料を採取し、分析を進めていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題開始時点で、新型コロナ感染症の流行により研究計画を大幅に修正せざるを得なかった。しかし、修正以降の計画については概ね順調に進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、2022年3月に採取した試料の分析を進め、淡水湖における硫黄の生物地球化学循環の季節性を検証する。季節性が見らる場合は、隔月で調査を行うことで、硫黄循環の季節変化を追跡する。これによって、年間を通じての硫黄循環を定量的に明らかにすることができる。 また、琵琶湖は湖水中の硫酸イオン濃度が低い淡水湖であるが、反対に湖水硫酸イオンが非常に高濃度に含まれる淡水湖(例えば、福島県の猪苗代湖)でも調査を行い、硫黄循環の比較を行う。これにより、本研究で明らかにした新たな硫黄栄養経路が琵琶湖に特有であるのか、より一般的な現象であるのかを検証する。
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