研究課題/領域番号 |
21K17882
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分63010:環境動態解析関連
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研究機関 | 九州大学 (2022) 関西学院大学 (2021) |
研究代表者 |
伊藤 茜 九州大学, 工学研究院, 助教 (30844659)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | クロム / 安定同位体 / 汽水域 / 化学種 / 有機物 / HPLC-ICP-MS / 環境復元 / 同位体 / HPLC / 風化 |
研究開始時の研究の概要 |
地球表層環境の変遷は生物の進化や大規模鉱床の形成に密接に関わっており,その解読は地球化学分野において重要な課題である.重元素同位体の一つであるクロムの安定同位体比は, 酸化還元反応によって顕著な変動を生じる事から,古環境復元のツールとして利用されてきた. しかしながら, 陸域-河川-海洋の移行過程でのクロム同位体比の変動要因や保存性については統一的な見解がない. 本研究では, 地質や環境条件の異なる河川において, 濃度-存在形態-同位体比のマルチ分析から,移行過程での同位体比変動を支配する生物・地球化学反応を定量的に理解し, 酸化還元の代替指標としてのクロム同位体の有用性を評価する.
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研究実績の概要 |
本研究では,陸水試料のクロム同位体分析のための濃縮法として固相抽出ディスクを採用した手法を検討してきたが,汽水や海水のように硫酸イオンを多量に含む試料には適さないことが予備実験から分かった.そこで,今年度は新たに鉄(II)水酸化物共沈法と高感度MC-ICPMS分析の基礎検討を行った.濃縮法では,適切な共沈剤の添加量,pH,熟成時間を決定し,河川水および汽水試料で95-98%の回収率が得られる条件を決定した.装置条件検討では,sweepガス流量の調整により中分解能モードで約50-100 ng Crの微少量で分析可能であることを確認した.また,δ53Cr値が-5‰から+9‰の標準試料を作製し,DS-TIMSとMC-ICPMSの測定値の比較から分析値の妥当性についても確認した.しかし,陸水試料では,δ54Cr値とδ53Cr値 の非質量依存の関係が見られた.原因については今後究明していく. さらに,昨年度の調査より,流下に伴いクロムの価数変化が示唆された高知県の二つの河川において,河川水を採取し,クロムの存在形態および同位体比の変動を調べた.その結果,周辺から生活排水が流入しているK川では,流下に伴い塩濃度が増加するにつれて,全クロム濃度の減少,Cr(VI)からCr(III)への還元,δ53Cr値の上昇傾向が確認され,生活排水由来の有機物による還元および河川水からの除去が生じていることが示唆された.一方,周辺が農耕地域であるS川では,流下に伴い全クロム濃度は減少するが,クロムの価数および同位体比の変動はK川と比較して緩慢であった.これは,クロム濃度の低い河川水もしくは海水との混合による単純希釈がS川でのクロム濃度減少の主な要因であると考えられる.今後は溶存有機物濃度や微量元素濃度,懸濁物粒子中のクロム濃度の関係から化学種変化と同位体比変動の要因についてより詳細を明らかにしていく.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
溶存有機炭素濃度測定については異動に伴いやや遅れているが,その他の計画については概ね順調に進行している.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,高純度試薬を用いてブランクの低減を試み,鉄(II)水酸化物共沈法の濃縮操作によるクロム同位体比への影響についても確認する.また,陸水試料の分析結果では,δ54Cr値とδ53Cr値 の非質量依存の関係が確認された.これは 54Crに対して38Ar16Oの干渉の影響が相対的に大きいことが要因として考えられる.これについては今後の検討課題である. 来年度は,河川堆積物や懸濁物質の採取を行い,河川水の流下に伴う存在形態および同位体比の変動について要因を明らかにし,先行研究との比較から陸水-海洋間でのクロム同位体比の保存性と環境復元プロキシとしての有用性について評価していく.
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