研究課題/領域番号 |
21K17883
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分63010:環境動態解析関連
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研究機関 | 気象庁気象研究所 |
研究代表者 |
藤田 遼 気象庁気象研究所, 気候・環境研究部, 研究官 (40823266)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | メタン / 温室効果ガス / 同位体比 / 安定炭素・水素同位体 / 放射性炭素同位体 / 粒子フィルタ / 放射性同位体 / 炭素循環 / 気候変動 |
研究開始時の研究の概要 |
重要な温室効果ガスであるメタン(CH4)の全球循環の解明は気候変動対策を推進する上での喫緊の課題であるが,各排出源・消滅源の推定には未だ大きな不確定さがある。本研究では大気中CH4濃度,CH4の安定炭素・水素同位体比および放射性炭素同位体比の観測データを数値モデルによって統一的に再現することで,全球CH4の排出源・消滅源の最適な推定値を求めることを目指す。さらに,得られた推定値と複数の社会シナリオに基づく排出予測データを用いて,CH4濃度・同位体比の2050年までの将来予測と観測システムシミュレーション実験(OSSE)を行うことで,CH4排出経路の推定手段としての同位体観測の有用性を検証する。
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研究実績の概要 |
メタン(CH4)は二酸化炭素に次いで重要な温室効果気体であり、大気中での寿命が短いために温暖化緩和への短期的な削減効果が高いことで知られる。このため、CH4の排出量推定の精緻化は温暖化予測や気候変動対策にとって重要である。本研究は大気中CH4濃度と、排出・消滅プロセスの情報を有するCH4の安定炭素・水素同位体比および放射性同位体比の観測データの時空間変動を解析することで,全球CH4の各排出源・消滅源の最適な推定値を求めることを目的とする。 前年度から改良を加えたモンテカルロ粒子フィルタとボックスモデルを用いて、各種同位体データによる拘束条件と排出源・吸収源に関するパラメータの事前分布の不確かさが、CH4排出量の事後分布に与える影響を明示的に調べた。その結果、安定炭素・水素同位体比および放射性同位体比を全て組み合わせた場合、化石燃料起源のCH4排出量は従来の限られた同位体データに基づく推定値よりも約30%小さくなることが示された。安定炭素同位体比データに基づく過去の研究は、数値モデルに既知として与えている全球平均の微生物起源の同位体比又は各種消滅過程に伴う全球平均の同位体分別係数の過小評価によって、起源別のCH4排出量推定にバイアスが生じている可能性が示唆された。本研究手法により同時に推定された加圧水型原子炉からの放射性CH4排出量は、独立した観測データに基づく同排出推定値と整合的であった。安定炭素・水素同位体比と放射性同位体比の長期観測データを複合利用することで、従来の不確かさ要因であった加圧水型原子炉起源の放射性CH4排出量等のパラメータ推定の精度が高まり、より確からしい化石燃料起源のCH4排出量の推定に寄与した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和5年6月から8月まで育児休業の取得に伴う研究の休止によって、当初の研究計画よりもやや遅れが生じている。前年度に投稿した論文の査読結果を踏まえ、ボックスモデルおよびパラメータ最適化手法の改良を行った。また、様々なモデル設定条件下での追加感度実験を相当数実施し、推定結果の妥当性に関する評価を精緻化した。これらの改訂を経て、アメリカ地球物理学連合の学会誌へ論文を再投稿した。論文受理までに想定以上に時間を要しているが、査読結果が戻り次第引き続き対応を行う。
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今後の研究の推進方策 |
改良後の粒子フィルタにより得られた最適なメタン排出源・消滅源に関するパラメータ推定に基づき、メタン濃度および同位体比の長期将来予測の再計算を行う。得られた結果から様々な社会経済シナリオ下におけるCH4排出経路の推定手段としてのCH4同位体観測の有用性を評価する。最新の大気中CH4濃度および安定炭素・水素同位体比データを用いて、それらの時空間変動に関する解析を行う。
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