研究課題/領域番号 |
21K17886
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分63010:環境動態解析関連
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
栗栖 美菜子 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海洋機能利用部門(海底資源センター), 研究員 (80880864)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 海洋エアロゾル / 鉄 / 安定同位体比 / 人為起源 / 化学種 / 溶解性 / 鉄安定同位体比 / 北太平洋西部域 / 海洋大気 / エアロゾル / 同位体比 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、海洋大気中の微小粒子(エアロゾル)中の鉄に着目し、その溶解性の支配要因を探る。可溶性の鉄が海表面に供給されることで、植物プランクトンによる有機物生産を促進し、海洋の炭素循環や気候変動に影響するためである。溶解性を支配する要因として、鉄の供給源の違い(鉱物粒子か、人為起源か)や大気輸送中の化学反応による化学種の変化が考えられる。本研究では鉄安定同位体比の違いがエアロゾル中の鉄の起源の指標になるという研究代表者らの発見をもとに、洋上で採取した粒径別エアロゾルに対して、同位体分析により起源を明らかにした上で、大気輸送中の反応を反映する鉄化学種も分析し、鉄の溶解に寄与する要因を明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究では、海洋大気中の微小粒子(エアロゾル)中の鉄に着目し、その溶解性の支配要因を探る。可溶性の鉄の海洋表層への供給は、植物プランクトンの生産を活発化させ、海洋の炭素循環や気候変動にも影響しうる。エアロゾルの鉄溶解性を支配する要因として、鉄の供給源の違い(鉱物粒子か、人為起源か)や大気輸送中の化学反応による化学種の変化が考えられる。本研究では鉄安定同位体比の違いがエアロゾル中の鉄の起源の指標になるという発見をもとに、洋上で採取した粒径別エアロゾルに対して、同位体分析により起源を明らかにした上で、大気輸送中の反応を反映する鉄化学種も分析し、鉄の溶解に寄与する要因を明らかにする。
2022年度は、2021年2-3月に北太平洋西部亜寒帯域から亜熱帯域にかけて採取されたエアロゾル、2017年7月に北太平洋亜寒帯域において採取されたエアロゾルの鉄同位体分析と鉄溶解率の分析を進めた。また、放射光実験施設において鉄化学種の分析も進めた。
鉄同位体は、沿岸域から3000km程度の範囲において、燃焼起源の低い値が明瞭に見られた。日本沿岸と北米沿岸とを比べると日本沿岸の方がより低い同位体比が観測され、東アジア由来のエアロゾルに燃焼起源鉄が多いことが観測的に示された。また、冬よりも夏のほうがより低い同位体比が観測され、鉱物粒子の飛来が少ない夏に相対的に燃焼起源鉄の影響が大きくなることが確かめられた。外洋域では鉱物粒子に近い同位体比が広く観測され、他のモデル計算などから推定されるよりも燃焼起源鉄の影響が小さいことが示唆された。 鉄の溶解率は、燃焼起源が多い地点では高い傾向が見られたが、一方で燃焼起源鉄の影響が見られない外洋域でも高い溶解率を示す場合があった。今後、データセットを揃えて、総合的な議論を進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は、エアロゾル試料中の全鉄の同位体分析、溶解率の分析、放射光実験施設における鉄化学種の分析を進めた。同位体分析は、昨年度に多かった分析装置のトラブルに対処して、ある程度時間をかけて分析前の装置のコンディショニングを行うことで、その後の分析を順調に進めることができた。全試料の2/3程度を分析したので2023年度には残りの分析を追える予定である。 抽出実験による溶解率の分析は、予想よりも鉄の濃度が低い試料が多く、試料量を増やして再分析することが多かったため想定よりも進まなかった。一方で、後半には分析する装置の条件を再検討することで高感度化に成功した。2023年度は新しい条件でより多くの試料を分析することを考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度には、残りの試料の同位体分析、溶解率の分析を終わらせる。 溶解率の分析は、高感度化した分析法を用いること、試料量を増やすことで、きちんと検出できる濃度でデータを得られるように留意する。 すでにほとんどの分析を終えている2017年航海の試料については、早めに論文投稿を進める予定である。 また、2021年航海の試料についても、各種データの取り纏め、学会発表等を進めていく。
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