研究課題
若手研究
薬剤耐性菌は、感染症治療の難渋化やアウトブレイク発生時に制御困難に陥るなど生命を脅かす細菌として問題であり、国を挙げて取り組むべき重要対策課題とされている。根本的な解決に向け、耐性菌発生源の追究と制御は喫緊の課題であるが、現在耐性菌はヒトのみならず動物・環境からも検出されおり、多角的な解析と包括的な理解が必要である。本研究ではヒトおよび環境排水中に分布する耐性菌の耐性遺伝子や菌の特徴について遺伝学的背景から解明する。また耐性遺伝子拡散機構について明らかにする。以上より得られるデータを勘案し、排水を利用した薬剤耐性菌監視システムの構築と耐性菌が発生しない抗菌化学療法、排水処理方法の提案を目指す。
耐性菌発生源の追究と制御は喫緊の課題であるが、現在耐性菌はヒトのみならず動物・環境からも検出されおり、多角的な解析と包括的な理解が必要である。本研究は、医療関連感染予防の観点からヒトおよび環境排水中に分布する耐性菌の耐性遺伝子や菌の特徴と関連性について遺伝学的背景から解明し、また耐性遺伝子拡散機構について明らかにすることを目的としている。2022年度は、引き続き国内の医療機関の排水採取、分離培養を行うとともに薬剤耐性菌の解析をすすめた。1回/月サンプリングを行い、2023年3月までに計4029株の薬剤耐性グラム陰性桿菌およびグラム陽性球菌を保存した。それぞれの分離株に対して菌種の同定、薬剤感受性、耐性遺伝子の検索を行い、薬剤耐性菌の性状、遺伝学的特徴について解析を実施した。大腸菌、肺炎桿菌をはじめとする腸内細菌目細菌、シュードモナス属、エロモナス属、アシネトバクター属など多様な菌種が分離され、耐性遺伝子についても本邦のヒト臨床で報告の多いCTX-M型を保有するESBLやIMP型カルバペネマーゼなどが存在した。さらに、ヒト臨床ではあまり分離報告のない菌種からもそれら耐性遺伝子が検出されており、これらの由来や耐性獲得機構について詳細な解析をしているところである。またヒト臨床由来耐性菌との関連性を明らかにするため、ヒト由来株として、IMP-34産生アシネトバクター属の耐性プラスミドの配列を決定し、構築機構について解析を行った。この結果は、国内および海外の学会にて報告を行った。
2: おおむね順調に進展している
従来の研究計画の通り、1回/月のサンプリングを継続して行い、分離培養により当初予定した数以上の菌株を保存することができた。また、耐性遺伝子の解析においてもヒト臨床で分離されるもの度同様のものが検出され、その獲得機構やヒト由来株との関連性について検討を進めているところである。詳細な解析を行うべき株が多数存在し、時間を要してはいるが、おおむね順調に研究を遂行できている。
これまで収集した耐性菌の解析をさらに進めていくとともに、ヒト由来株についても同様に収集し遺伝学的背景を明らかにする。ヒトと排水由来の耐性菌解析により得られた結果を比較、統合しながら両者の関連性と相違性について解析する予定である。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件)
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