研究課題/領域番号 |
21K17905
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分64010:環境負荷およびリスク評価管理関連
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研究機関 | 静岡県立大学 (2022) 地方独立行政法人大阪府立環境農林水産総合研究所(環境研究部、食と農の研究部及び水産研究部) (2021) |
研究代表者 |
野呂 和嗣 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 助教 (80827642)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
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キーワード | マイクロプラスチック / プラスチックごみ / 多環芳香族炭化水素類 / 光化学反応 / 光分解反応 / 多環芳香族炭化水素 / 光分解 / 量子収率 |
研究開始時の研究の概要 |
マイクロプラスチック(MPs)に吸着した有機化合物(MPs吸着物質)は、生態系への悪影響や環境汚染因子としてのリスクがあり、世界中の海域で採取されたMPsから検出されている。しかし、このMPs吸着物質のリスクを評価するために不可欠な、動態に関する知見はほとんど得られていない。 MPs吸着物質の動態として重要だと考えられる光分解反応を定量的に評価するため、量子収率を算出する。①MPsの素材、②硝酸イオンの共存、③雪氷内の光の多重散乱によって光分解反応速度が変化すると考えられる。これらの条件下におけるMPs吸着物質の光分解量子収率を算出し、自然環境中のMPs吸着物質の動態解明の基盤を確立する。
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研究実績の概要 |
本課題では、太陽光、人工太陽光、紫外線を光源とし、マイクロプラスチックに吸着した多環芳香族炭化水素類への光照射試験を実施した。 太陽光を光源とした試験の結果、ポリエチレンマイクロプラスチックに吸着した多環芳香族炭化水素類が光分解することを世界で初めて報告した。また、硝酸塩が共存することで光分解が促進されることを明らかにした。これらの成果は、マイクロプラスチックを反応場とする光化学反応が環境中で進行していることを示唆した。多環芳香族炭化水素類は光分解によって毒性が増悪する可能性があることから、引き続きマイクロプラスチック上で反応する光化学反応を調査していく必要がある。 人工太陽光を光源とした試験の結果、多環芳香族炭化水素類の光分解速度はプラスチックの種類に依存することが明らかとなった。ポリスチレンのように芳香環をもつポリマーが光照射によってラジカルを放出し、吸着した多環芳香族炭化水素類の分解を促進している可能性が示唆された。官能基をもたないポリエチレンに吸着した多環芳香族炭化水素類の光分解速度は、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリアクリロにトリルなどに吸着した多環芳香族炭化水素類の光分解速度よりも1桁程度低かった。よって、ポリエチレンは多環芳香族炭化水素類を安定化させ長寿命化させる機能を持つことが明らかとなった。 人工太陽光を光源とした試験の結果、マイクロプラスチックに吸着した多環芳香族炭化水素類の量子収率は、溶存態多環芳香族炭化水素類よりも低く、土壌に吸着した多環芳香族炭化水素類よりも高いことが示された。天然に存在する土壌粒子よりもマイクロプラスチックは光分解が進行しやすい反応場であることが示唆された。マイクロプラスチックの汚染が悪化している現在、光化学反応が促進されることで毒性の高い光反応生成物が環境中に蓄積している可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
前職から現職への移動によるラボの移転や、コロナの影響による資材納品の遅れなどがあったが、当初の予定であった量子収率の算出は予定通りに成果がでている。また、紫外線照射装置やその他の資材の納品が遅れていたため、計画には無かったものの、所持していた人工太陽光による試験を実施し、光分解速度のプラスチック種類依存性を評価することができた。これらの成果をとりまとめ、年1本程度(受理1本、投稿中1本)で論文を投稿できている。 このように、計画通りのデータが得られている点、計画外の実験を遂行できた点、順調に論文投稿できている点を考慮し、「(1)当初の計画以上に進展している」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
計画通り、マイクロプラスチックに吸着した多環芳香族炭化水素類の光分解速度、量子収率、量子収率の温度依存性の算出試験を実施し、その成果を取りまとめる。 計画書ではガスクロマトグラフ質量分析計によって多環芳香族炭化水素類を分析する予定であったが、ヘリウムガスが入手困難であることを鑑み、2022年度に高速液体クロマトグラフによる分析法を開発した。本分析法によって、本課題の濃度範囲における多環芳香族炭化水素類を分析可能であることを確認した。よって、2023年度は高速液体クロマトグラフによる分析を実施し、ヘリウムガスの納品遅れや価格高騰による研究の遅れを回避する。
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