研究課題/領域番号 |
21K17941
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分80010:地域研究関連
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研究機関 | 武庫川女子大学 (2022-2023) 神戸大学 (2021) |
研究代表者 |
野上 恵美 武庫川女子大学, 心理・社会福祉学部, 講師 (90782037)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | ベトナム / 高齢者 / 認知症 / 高齢者施設 / ケア / 認知症高齢者 / 医療化 / 家族規範 / 生活実践 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、高齢者特有の心身の不調に対する医療化が進む現代ベトナムにおいて、都市部の人びと(医療従事者や患者家族)が高齢者認知症という「新しい」疾患をどのように理解し対処を行なっているかを民族学的手法によって明らかにすることが目的である。本研究では、人びとの営為を、高齢者は家で家族が世話をすることが望ましいとされる伝統的な家族規範に収まらない実践として捉え、伝統的な家族規範と生活実践がせめぎ合う動態を描き出すことを目指している。
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研究実績の概要 |
2023年度は夏季に1週間と2週間にわけて、春季に10日間の日程でベトナムに渡航した。夏季調査の前半では高齢者とその家族との関わり方について調査を行い、後半では民間高齢者施設と宗教施設が運営する高齢者施設ならびに地域の高齢者会に訪問し聞き取り調査を行った。 夏季調査の前半では、ベトナム北部の2家族を中心に調査を行った。高齢者の子が海外にいる場合、年齢が近い同性の親族が世話係として関わっていることがわかった。具体的には、「日中の見守り・話し相手」「外出先への同行」などがある。 夏季調査の後半では、ホーチミン市の民間高齢者施設2ヶ所、宗教施設が運営する高齢者施設2ヶ所を訪問し、管理者に聞き取りを行った。聞き取りを通してわかったことは、民間高齢者施設は経済的に余裕がある家庭の高齢者が入居していることである。体がそれほど不自由ではない高齢者の多くは、基本的に家族の負担にならないように施設で生活し、時々家族のもとに帰るというスタイルで過ごしていた。施設宗教施設が運営する高齢者施設は、身寄りがない、家族がいても経済的に余裕がない高齢者が入居していることがわかった。 春季調査では、夏季に訪問した民間高齢者施設1ヶ所と宗教施設が運営する高齢者施設1か所と今回新たに1件の民間高齢者施設に訪問した。すべての高齢者施設において、入居できない条件は「感染症」と「精神疾患」があげられていたが、一方で認知症症状がある高齢者でも受け入れていることがわかった。 春季と夏季と調査を通して明らかになったこととして大きく2点があげられる。1点目は、ベトナムの民間高齢者施設は比較的経済的に余裕がある家族に浸透しつつあること、2点目は認知症症状がある高齢者も一般的な高齢者施設に入居できることである。今年度の調査では、家庭内だけでなくケアの現場においても認知症症状がケアを行ううえでの「問題」になっていないことがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね順調に進展した理由として、新型コロナウイルス感染症による移動の制限が解除され、国内外での移動が容易になったことがあげられる。また、昨年はベトナム側のカウンターパートからの協力を得ることにより、現地での調整がスムーズに進み、短期間で複数の施設を訪問することができ、ある程度まとまったデータを収拾することができた。一方で、これまでは新型コロナウイルス感染症の拡大の影響で計画とおりに研究を進めることができなかったことから、当初計画の3年で研究を完遂することができなかった。そのため、研究期間を1年延長することにした。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は夏季に補足調査を行い、ベトナム社会における「認知症」の医学的、社会的位置づけを明確にすることを試みる。また、これまで調査で得られたデータを文化人類学的な理論的な枠組みから分析し、ベトナムの高齢者ケアに関する研究の一成果としてまとめる。さらに、今年度は文化人類学会、東南アジア学会等の学会や研究会で研究の成果を積極的に発表していく。
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