研究課題/領域番号 |
21K17945
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分80010:地域研究関連
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
佐野 竜平 法政大学, 現代福祉学部, 教授 (90805342)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | 障害者の暗黙知 / 障害者権利条約 / 循環型経済 / インクルージョン / 農福連携 / 障害と開発 / ビジネスと人権 / 障害インクルーシブな開発 |
研究開始時の研究の概要 |
経済成長が進む東南アジアにおける障害インクルーシブなビジネスに関して、象徴や慈善に留まらない障害者の役割の解明が必要となっている。一方、障害当事者が持つ固有の知識である暗黙知に焦点を当てた研究結果が集約されているとは言い難い。本研究では、東南アジアの人口の7割を占めるインドネシア、フィリピン、ベトナムにおいて、農林水産業に貢献する障害者の暗黙知の表出を行う。また、現地に生きる障害者の暗黙知とバリューチェーンとの関係を明らかにする。さらにバリューチェーン分析の結果を考察し、障害者の持つ知識の強みを明確にした上で、障害者が従事する農林水産業における持続可能な要素の抽出を行う。
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研究実績の概要 |
本調査の目的の達成に向けて、研究協力者とコミュニケーションしつつ、研究計画を一部修正しながら進めている。本研究の現在までの達成度は以下のとおりである。 (1) ポストコロナの動きの中で対面によるやり取りが可能となってきており、インドネシア・ベトナム・フィリピンを中心に研究協力者とのさらなる連携活動を計画した。実際、インドネシア・ベトナム・フィリピンの3カ国に実際に足を運び、本研究の論点につき深く意見交換することができた。研究を進める中でわかってきた農林水産業と障害者の暗黙知を明示するため、周辺国の農林水産業に従事する障害者の取り組みにも聞き取りを行った。 (2) 農福連携など様々な分野との連携活動に関する実践事例を集約するため、全国社会福祉協議会/全国社会就労センター協議会による農福連携等に関するワーキンググループメンバーの役割を担った。研究者は数ある事例の中からベトナムに関する事例を担当することになり、本研究に関連させつつ内容をまとめた。 (3) 主に障害者の暗黙知に焦点を当てる本研究に関連して、ベトナムの障害者就労や福祉現場の人材育成に関係する書籍を出版した。 上記は、3カ国を中心に東南アジアの農村部で活躍する障害者が持つユニークな暗黙知の特定を意図したことから積み上げてきた知見である。その一部が書籍や日本の主要な障害者団体による出版物に掲載されたことには手応えを感じている。発信してきたからこそ広がった具体的な2年目となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の2年目の活動として、研究の対象となっているインドネシア・フィリピン・ベトナムの3カ国を実際に訪問した。具体的には、農林水産業に従事する障害者の暗黙知の特定を進めるため、現地とのネットワークを活かした研究活動を行うことができた。これは、日頃からインドネシア・フィリピン・ベトナムの研究者や関係団体とコミュニケーションを取り、障害者の就労事例に関するヒヤリングを繰り返してきた土台があったためと考える。 インドネシアでは、障害者施策の主管省である社会省の障害担当課長や専門官とやり取りし、最新の動向について情報を得ることができた。また、障害インクルーシブなビジネスに関心を寄せる2つの大学において、対面およびオンラインの手法でフォーカスグループディスカッションの形で研究を進めた。その結果、障害者の就労事情のみならず、政策から現場実践の課題、障害者による農林水産業への参画の障壁に至るまで、幅広い知見を得ることができた。 ベトナムでは、労働・傷病兵・社会問題省の高官や専門官らをインタビューした。近未来に予定している法制度の改定や農村地域の現場課題など、最新の実践情報を得ることができた。また、ベトナムでは障害者の就労に関係して、福祉人材の確保や育成もまた論点になっている。こうした論点を丁寧に拾い、これまで積み上げてきた連携活動の実情を反映した内容を文面でまとめることができた。 フィリピンでは、政府の全国障害者問題評議会で活躍する障害担当官らと引き続きやり取りをしながら、障害者の就労に関する知見蓄積の共有を試みている。
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今後の研究の推進方策 |
いよいよ研究の最終年度となる3年目については、これまでの蓄積をベースに研究成果をまとめることを最優先とする。具体的には以下を研究の推進方策として考えている。 (1) インドネシア・ベトナム・フィリピンの3カ国を対象に農林水産業に従事する障害者の暗黙知の抽出を行ってきたが、関連する事例は周辺国にも広がっていることがこれまでのヒヤリング等でわかってきた。そこで、3年目については、対象国を前面にするというよりは「東南アジアにおける障害者の暗黙知の積み上げ」を軸にした活動を進める。できるかぎり具体的なフィールド訪問およびヒヤリングを通じて知見を集めつつ、農福連携を進める関係者等を対象にした出版物にまとめることを計画する。 (2) 研究者は、循環型経済とコミュニティ開発の手立てである「人馬のウェルビーイング」やポストコロナ禍で求められる「共用品・共用サービスの国際的な利用状況」などの研究も行っている。農林水産業における障害者の暗黙知の積み上げが他にどのような場面・機会に有効となるのか、研究の視点から分析していく。さらには、国連の障害者権利条約を参照しつつ、障害者固有の知見を特定国における障害者の労働及び雇用施策や実践に関連させた分析を行い、論文や雑誌記事にまとめる。 (3) インドネシア・ベトナム・フィリピンといった研究対象国に訪問する機会を伺いつつ、域内の国連機関の本部が集うタイでの知見の入手も視野に入れる。特に現地の大学や学会に積極的に参加し、出版物を中心に障害者の社会参画に有効な手立てであることを裏付ける事例のまとめにつなげる。
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