研究課題/領域番号 |
21K17948
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分80010:地域研究関連
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研究機関 | 岩手県立大学 |
研究代表者 |
大谷 実 岩手県立大学, その他部局等, 講師 (10826605)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 西ドイツ / 東ドイツ / マイノリティ / 包摂と排除 / 市民社会 / ナチズム |
研究開始時の研究の概要 |
ナチス・ドイツとホロコーストを経験した戦後西ドイツ社会は、その犠牲者であるシンティ・ロマ(「ジプシー」)といかに向き合ったのだろうか。本研究は、この問題について、戦後西ドイツで異なる経緯を辿ったバイエルン州とバーデン・ヴュルテンベルク州を事例に取り組み、ナチス期と戦後西ドイツ社会の連続面と断絶面を明らかにする。「ナチス期とナチス期以降のドイツ社会は、いかなる共通点と差異を有したのか」というドイツ史研究上の重要課題について、マイノリティと市民社会を手掛かりに答えようとする。さらに本研究は、マイノリティとマジョリティの関係について知見を提供し、現代社会における包摂と排除の在り方について再考を促す。
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研究実績の概要 |
本年度は、1950年代の西ドイツについて重点的に取り組んだ。戦後の西ドイツ社会は、1950年代に「経済の奇跡」を達成したとされる。だが、当時の西ドイツでは、一定の住居を持たず不安定な暮らしを送る「非定住者」問題への関心が高まっていた。また、古くから「放浪民族」と見なされていたシンティ・ロマの取り締まりをめぐる議論も活発化していた。 こうした点に着目しつつ、当時の各種議会資料(連邦議会およびバイエルン、バーデン・ヴュルテンベルク両州議会)を分析したところ、以下の点が明らかとなった。 ・1950年代のバイエルン、バーデン・ヴュルテンベルク両州では、シンティ・ロマは、「非定住者」と呼ばれる人々が社会問題化するなかで、再び注目され、取り締まりの対象として議論されるようになっていた。この背景の一つとして、「経済の奇跡」の時期であっても就労困難となっていた東ドイツ難民の存在があったと考えられる。これらの人びとは、既存の失業支援制度などの対象外で、住居もなく貧困状態となっており、「非定住者」と呼ばれていた。つまり、「非定住者」は、西ドイツ社会の最下層民の一部を形成していた。そこで、州レベルでは、民間福祉団体との協力による就労先の創出、ひいては西ドイツ社会への統合が模索されるようになった。 ・他方で、近代以前から迫害され、ナチス時代には絶滅政策の対象となったシンティ・ロマに関しては、憲法違反を犯してでも取り締まりを以前のように戻そうとする動きと、それを批判し、押し止めようとする動きが衝突しており、ナチス・ドイツ時代の政策評価をめぐって両極化する様相が看取された。 ・以上から、1950年代の西ドイツでは、失業など社会保障分野における放浪生活者支援が動き出したが、それは東ドイツ難民の救済、すなわち同じドイツ民族の救済が大きな契機だったことが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
・本研究活動は、新型コロナウイルスによる規制で海外渡航(ドイツでの史資料収集)ができず、とりわけ初年度の活動に大きな支障が生じた。これにより、スケジュール全体に遅れが生じている。 ・こうした事情により、本年度の活動は、本来昨年度実施予定のものであった。その意味では、当初の予定からは「やや遅れている」と判断する。
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今後の研究の推進方策 |
・次年度は、本年度入手した史資料の読解と分析をさらに進め、研究成果として公表していく予定である。具体的には、本年度の研究報告原稿をもとに、学会誌等への論文投稿をおこなう。 ・並行して、海外での調査研究(ドイツにおける史資料の収集)も計画している。主な訪問先は、ドイツのバーデン・ヴュルテンベルク州およびバイエルン州の予定である。
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