研究課題/領域番号 |
21K17955
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分80010:地域研究関連
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研究機関 | 明治学院大学 (2022-2023) 琉球大学 (2021) |
研究代表者 |
土井 智義 明治学院大学, 国際平和研究所, 助手 (60802402)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 沖縄近現代史 / 移民研究 / 植民地研究 / 市民権 / 非琉球人 / 在沖奄美出身者 / 日本人意識 / 西表島の炭鉱労働者 / 移民史 / 在沖本土籍者 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、米国統治下(1945-72年)の沖縄における本土籍者を対象に、当事者が取り組んだ活動(相互親睦、権利獲得要請、準領事機能等)と集合意識の関係を歴史学的に実証する地域研究である。当時の沖縄は、市民/外国人の区分が日本国籍ではなく沖縄県籍であり、他府県籍者(本土籍者)も外国人として管理された。 本研究は本土籍者を、1953年まで沖縄と同じ米国統治下にあった奄美からきた在沖奄美出身者とそれ以外に大別し、その法的処遇・活動等を詳細に再構成する。特に本土籍者の集合意識が、法的地位と重なる「在沖本土人」ではなく、復帰運動を担う沖縄住民と共通の「日本人意識」として再編されたことの歴史性を検証する。
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研究実績の概要 |
米国統治下の沖縄(1945-72年)では、米軍要員を除く被統治者が市民/非市民に区分されたが、その分割線は米本土や日本本土とも異なっていた。1954年以降、両者を分かつ基準は琉球政府が認定する「沖縄県」戸籍となった。その結果、強制送還の適用を受け、諸権利から排除される非市民(「外国人」「非琉球人」と呼称)に、沖縄県籍以外の日本国籍者(本土籍者)が含まれた。そして、かれらこそが入管の主要な対象であった。本研究は、非琉球人のうち本土籍者を対象とし、かれらの諸活動(権利獲得要請、相互親睦等)と集合意識との関係を歴史学的に実証する地域研究である。 2023年度は、米国統治下の沖縄における本土籍者の諸活動について、主に次の事項に関する資料調査と研究を実施した。 第一に、米国統治下の沖縄において本土籍者が活動する際、その前提条件となる入管を中心とする法的処遇との関係である。報告者はこれまで、本土籍者にとって生活を維持するための根幹的な法規である、強制送還や在留許可などを規定した入管制度の成立過程について明らかにしてきた。これらを踏まえ、当該年度は、1954年の米国民政府布令第125号「琉球列島出入管理令」(以下、第二次入管令)の制定以降の諸制度について調査した。とりわけ居住の安定につながる永住資格や「転籍」(琉球住民になる制度)に着目し、研究成果の一部を公表した。 第二に、在沖奄美出身者の同郷組織の研究である。奄美会に関する公文書や業界団体の資料を沖縄県公文書館や沖縄県立図書館を中心に調査した。 第三に、本土籍者として米国統治下の沖縄を生きた当事者へのインタビューの記録化である。 これらの成果は論文や研究コラムの執筆に加え、昨年度に明治学院大学国際平和研究所との共催で開催した国際シンポジウムの記録刊行にも盛り込んだ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで米国統治期の人口動態及び各市町村における人口比の調査、戦前に大日本帝国政府が行った国勢調査および沖縄県の人口調査に取り組んだ。また、在沖奄美出身者を中心とする本土籍者の基礎資料の収集とデータ入力、聞取り調査も実施した。 これらの結果、各市町村別の本土籍者数と割合の把握(奄美/その他別)、在沖奄美出身者による活動について解明が進捗した。これらは本土籍者の諸活動を分析する上で基礎事実を明らかにする意義をもち、奄美出身者の集住性にとどまらず、特定の業種への集中が示唆をもつ。 また2023年度は、本土籍者をめぐる歴史が、現代日本の外国人の権利保障や排外主義批判という課題にも共通することから、昨年度(2023年2月)に明治学院大学国際平和研究所との共催で開催した国際シンポジウム『「復帰」50年:「外国人」問題から共生を考える/米国統治下から現在まで』の記録を、明治学院大学国際平和研究所発行『PRIME Occasional Papers』第9号として刊行した。刊行に際しては、シンポジウムの記録にとどまらず、その後の研究成果も加えて、本土籍者を中心とする米国統治下の入管制度の概要、施政権返還後の日本法下における在沖外国人(旧植民地出身の朝鮮人、近年の海外から来た労働者を含む)の法的処遇、当事者の諸経験を総括できるような編集を行った。 上記より、課題の進捗状況はおおむね順調に進展しているといえる。当事者がますます高齢化する現実を踏まえ、聞き取りを積極的かつ継続的に実施する。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究推進方策としては、原則として申請時の計画を踏まえながら、適宜修正を実施して行なう。最終年度である2024年度は、主に次の3点に取り組みたい。 第一に、もっとも重視する在沖奄美出身者団体による活動分析である。これまで集計したデータに加え、あらたに入手した名簿も用いて、在沖奄美出身者の出身地ごとの動向も分析する。また、同郷組織が対応すべき利害としては十分にとりあげなかった社会的周縁層(とくに売春従事者など)の状況についても、公文書の供述調書などから再構成する。また、沖縄県公文書館では閲覧できない一部の米国民政府文書については、米国国立公文書館で資料調査を行い、閲覧する。また、奄美出身者の同郷組織を検証する場合、日本各地の奄美出身者団体との関係性も無視できない。沖縄の奄美会の特質を研究するため、東京や神戸などに所在する奄美出身者の同郷組織についても留意して研究する。これら在沖奄美出身者の諸活動については、日本移民学会等で報告し、論文化する予定である。 第二に、琉球住民だけでなく本土籍者も参加した復帰運動の「日本人意識」と、陳情書等にあらわれる非琉球人として特殊の利害を求める在沖奄美出身の集合意識を比較し、米国統治下の沖縄で「日本人である」という主体形成に関する総論を執筆する。 第三に、当事者への聞取りである。奄美出身者に加え、奄美以外の当事者にもインタビューを継続的に実施する。 なお、様々なリストは、謝金を利用してリスト化作業を委託し、データ作成の効率化・迅速化を図る。
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