研究課題/領域番号 |
21K17958
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分80010:地域研究関連
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
櫻田 智恵 名古屋大学, 人文学研究科, 学振特別研究員(RPD) (90808304)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
|
キーワード | 君主制 / イメージ戦略 / タイ / 東南アジア / 現代政治史 / 女官 / 側室 / ネットワーク / 人的ネットワーク |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、前タイ国王プーミポン(在位1946~2016年)の絶大な権威を支えた「人的ネットワーク」の実態を解明するものである。特に、前国王の祖母であるサンワーンワッタナーをはじめとする、ラーマ5世(在位1868~1910年)の90名を超える側室たちとその女官に焦点をあて、彼女たちの姻戚・交友関係が人的ネットワークの構築・維持に重要な役割を果たしたことを実証する。 具体的には、①側室らとその女官らが、王の権力基盤となる宮中ネットワークの構築に果たした役割、②彼女たちの姻戚・交友・生業関係を通した王室と政財界の紐帯の2点について分析する。
|
研究実績の概要 |
本研究は、前タイ国王プーミポン(在位1946~2016年)の絶大な権威を支えた「人的ネットワーク」の実態を、前国王の祖母であるサンワーンワッタナーをはじめとする側室らとその女官に焦点をあて、彼女らの姻戚・交友関係から解明するものである。 当該年度は、ラーマ5世の側室の葬式本を収集し、それらから親族関係リストを作成することを最優先課題として行なった。特に、ラーマ9世に繋がっている人々に医療関係者が多いことを鑑み、医療関係者から分析を進めた。この際、王妃が代々総帥を務めているタイ赤十字の活動への王室の関与や、ロックフェラー財団などとの関係性など、タイ国内の資料にとどまらず、現在収集可能な諸外国の資料を中心に収集、分析を行なった。特に、タイ赤十字の活動は、ラーマ9世の祖母であるサンワーンワッタナー付きの女官の進言によって実現したものであるため、タイ赤十字と王室の関係性や、当時の疫病の流行状況などについて調査、分析をすすめてきた。 同時に、タイにおける不敬罪についての情報を整理し、それが現在のタイ社会に与えている影響や、研究者による自己検閲的な行為が行われる要因などについて分析した。ここから、不敬罪と印刷法の関係性などについても考察を行なった。こうした「不敬罪」の影響は、タイにおける理想の君主像や「慈恵」の考え方などとも相関しており、イメージ戦略を展開する上で重要な役割を果たしてきたと考えられるため、今回の分析に加えた。 その成果の一部は、学会などで口頭発表を行なった他、次年度に掲載予定の論文や、出版が決まっている単著の中に反映させた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルスの影響もあり、渡航がまだ難しかったこと、国内移動の制限による日本国内での資料調査について、現地での調査ができず、資料を取り寄せる必要があるなどのタイムラグが生じたことが主な理由である。 また、聞き取り調査を実施予定だった主要人物の何人かが、高齢だったこともあって、昨年に引き続き急逝したことも原因の一つである。しかしながら、新たなインタビューを選定するなどしながら調査が進行していること、当初使用予定になかった日本国内の資料が見つかり、それを使用しての調査も並行していることなどから、次年度には遅れを取り戻せると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、引き続き、膨大な数の側室とその女官らの関係図の作成を引き続き進めるとと共に、バンコクにおいて女官経験者等、宮中での勤務経験を有する人物らに聞き取り調査を行う。これと並行し、女官らが姻戚関係を結んでいる経済界の人物や会社について、社史や葬式本を収集し、王室との関係性などについて分析をすすめる。 同時に、日本やアメリカ、イギリスなどインターネットで公開されている資料も用いながら、諸外国がタイ王室の活動をどのように分析、評価し、それが間接的にタイ王室の活動にいかなる影響を与えてきたのか(または与えていないのか)についての分析も行う予定である。
|