研究課題
若手研究
前立腺がん等に対する放射性同位体(RI)内用療法において高い効果が確認されているアクチニウム225は、その重要度の高まりにより供給量の不足が予想されており、国内での製造が求められている。現状、アクチニウム225は海外において多量の核燃料物質(トリウム229)からの分離により製造されているが、その手法は国内では実施困難である。そこで本研究では、電子線形加速器を用いたアクチニウム225の製造を目指し、アクチニウム225や他の医療用RIの製造法を検討し、更にその応用に向けた基礎検討を行う。
本研究では、放射性同位体(RI)内用療法において高い効果が確認されているアクチニウム225などの医療用RIの電子線形加速器を用いた製造法を検討し、更に、RI内用療法への応用に向けた基礎検討を行う。本年度は、以下の事項について実施した。(1)電子線形加速器によるアクチニウム225製造のスケールアップ:イオン交換樹脂等を用いて精製したラジウム226をターゲットとし、電子線形加速器により高エネルギーの制動放射線を照射することで、アクチニウム225のMBqオーダーの製造を行った。また、製造・精製したアクチニウム225を、誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP-MS)等を用いて分析し、含まれる不純物の評価を行った。(2)RI内用療法への応用に向けた基礎検討としてのRI内包フラーレン生成法の検討:ドラッグデリバリーシステム(DDS)への応用に向け、RIを内包したフラーレンの生成を目指し、不活性ガス雰囲気下でRIを含む試料にレーザーを照射する装置を構築した。構築した装置を用い、複数の圧力条件のアルゴンガス雰囲気下でグラファイトにレーザーを照射し、フラーレンの生成試験を行った。生成物を有機溶媒で抽出し、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて分析することで、フラーレンの生成に成功していることを確認した。また、RIを混合した試料を用い、装置からのRIの漏洩等がなく安全にレーザー照射実験が行えることを確認した。
2: おおむね順調に進展している
本年度計画していた研究について、以下のような順調な進展が得られた。(1)イオン交換樹脂等を用いて精製したラジウム226をターゲットとし、電子線形加速器により高エネルギーの制動放射線を照射することで、アクチニウム225のMBqオーダーの製造を行った。また、製造・精製したアクチニウム225を、ICP-MS等を用いて分析し、含まれる不純物の評価を行った。(2)DDSへの応用に向け、RIを内包したフラーレンの生成を目指し、不活性ガス雰囲気下でRIを含む試料にレーザーを照射する装置を構築した。構築した装置を用い、複数の圧力条件のアルゴンガス雰囲気下でグラファイトにレーザーを照射し、フラーレンの生成試験を行った。生成物を有機溶媒で抽出し、HPLCを用いて分析することで、フラーレンの生成に成功していることを確認した。また、RIを混合した試料を用い、装置からのRIの漏洩等がなく安全にレーザー照射実験が行えることを確認した。
次年度は、アクチニウム225の製造に必要なラジウム226の精製手法や、照射ターゲットのラジウムからのアクチニウム225の分離・精製手法の更なる検討を進め、不純物の一層の低減を目指す。また、フラーレンの効率的な生成条件を検討し、RI内包フラーレンの生成を目指した実験を行う。
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RSC Advances
巻: 11 号: 32 ページ: 19666-19672
10.1039/d0ra10196f