研究課題/領域番号 |
21K18016
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分90020:図書館情報学および人文社会情報学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
福井 佑介 京都大学, 教育学研究科, 准教授 (20759493)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 差別図書 / 表現の自由 / 知る権利 / 知る自由 / 図書館史 / 図書館情報学 / 公立図書館 |
研究開始時の研究の概要 |
童話『ピノキオ』を差別図書みなす1976年の告発から生じた、いわゆる『ピノキオ』事件は大きな社会的注目を集め、資料を扱う図書館の社会的責任を問うことにもなった。本研究は、『ピノキオ』事件に継続的に取り組んだ名古屋市図書館と告発者の動向を歴史的手法で解明する。あわせて、差別表現問題としての歴史的な位置、事件への対応の評価をめぐる当時の図書館界の対立の構図、事件の記憶の継承と断絶の在り方を検討する。
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研究実績の概要 |
今年度は研究の2年目であり、研究計画に則して、課題(a)「当事者の動向」に関するまとめとして、資料の整理と読み込みを進めた。特に、図書館員の立場で『ピノキオ』事件に関わった当事者は、動向を図書館問題研究会愛知支部の機関誌に継続的に報告しており、当時の動向をこれまで以上に詳細に把握することができた。同時に、告発者の側からの資料の収集にも努めた。 上記の課題(a)によって図書館問題研究会愛知支部の側から『ピノキオ』事件を検討できたことは、昨年度から着手し、すでに単著の中で論を展開した課題(b)「図書館界での反応」とも密接にかかわることであった。すなわち、今日の『ピノキオ』事件は「検討の三原則」に顕著なように、図書館界の一つの大きな教訓として継承されているが、同時代的な評価をめぐって議論も生じており、その最大の主戦場となったのは図書館問題研究会であった。『ピノキオ』事件に関わった一部の図書館員にとって、図書館問題研究会の支部の存在は、職場とは似て非なるローカルな情報共有と方針決定の場として機能していた。他方で、全国レベルの図書館問題研究会では、差別問題と図書館をめぐるそれぞれの地域的な事情も影響しながら、多様な立場から議論が続けられた。これは、当事者には図書館界のまなざしを意識させ、図書館界全体には、資料を提供することをめぐる図書館の社会的責任を意識させることへとつながっていった。これによって、「図書館の自由に関する宣言」の1979年改訂版が成立したり、図書館の中立性から知る自由(広義の知る権利の保障)へと図書館界の規範をめぐる議論が移行したりする一連の動向の中で差別図書問題が意識されることにつながった。そして、その一部は教訓として現在にまで伝えられ、一部は同時代的に決着しきれないこととして残されるに至った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概して、事前の計画に沿って調査・研究を進めることができている。引き続き、課題(a)に関わる資料調査は必要であるが、同時に、課題(b)は計画よりも早く進んでいる。総合的にみて、計画に遅れはみられない。
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今後の研究の推進方策 |
課題(a)「当事者の動向」では、引き続き、関連するアクターそれぞれの資料を進めると共に、次年度には、基本的な動向の総括を行う。課題(b)「図書館界での反応」では、当時の他の地域での類例との関連あるいは断絶に注目しながら調査を進める。次年度から開始することになっていた課題(c)「社会的反応」にも着手する。差別表現論の系譜や、『ピノキオ』事件についての各種の媒体の扱い方など、基礎的な調査から進めていく。
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