研究課題/領域番号 |
21K18018
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分90020:図書館情報学および人文社会情報学関連
|
研究機関 | 安田女子大学 |
研究代表者 |
須山 巨基 安田女子大学, 心理学部, 講師 (60893229)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
|
キーワード | 文化進化 / 制度設計 / エコーチェンバー / 社会心理学 / 意思決定 / 協調問題 / 科学技術 / メタ科学 / 論文検索 / 公平性 |
研究開始時の研究の概要 |
インターネットの発展により情報が安易にアクセルされ、多様な価値観や文化が共有されると思われた。しかし、インターネットはむしろエコーチェンバーを引き起こし、検索者の都合のいい情報のみが表示され、偏った価値観が形成されることが危惧され始めている。論文の引用のされかたなどから科学においても同じことが生じていることを先行研究は明らかにし始めている。本研究は、こうした科学のエコーチェンバーがなぜ生じてしまうのか、またどうすれば解消されるのかを調査と実験を併用して検討する。
|
研究実績の概要 |
科学の中で生じているエコーチェンバー現象の一端を収穫と探索のジレンマ問題であるとみなし、実験ゲーム理論および、意思決定科学の知見を用いて、大規模な実験室実験を行った。 本年度も前年度に引き続き、制度を切り替えられるエルファロル・バー・ゲームを実施した。10から20人からなる集団を10セッション作り、参加者に自由な制度、及び厳格なルールが定まっている制度の2つを行き来してもらった。エルファロル・バー・ゲームでは制度に参加した3分2以上がバーに行くと満員となり0ポイント、未満であれば10ポイント、バーに行かないことを選んだ場合に5ポイント取得できた。前年度の結果ではゲームを20試行行うと、参加者は自ら選ぶ制度から離脱するのではなく、むしろ自ら選ぶ制度へ参加者の人数が増加することが見られた。今年度も同様の結果が頑健に見られるのか検討した。 その結果、前年度の結果は頑健に見られ、参加者は徐々に自由な制度へと移行する傾向が示された。また、前年度同様、自由な制度を支えている背景に、搾取され続ける参加者が制度を離脱しないで残ることが原因である可能性が示された。つまり、非協調的な社会がバーに行かない参加者によって維持され、コンピュータへの移行を阻害したことが示された。言い換えると、損をしてでも自らの行動の選択を取りたい人により、反協調ゲームが維持され、格差を生じさせてしまう可能性が示された。 この結果は論文への投稿している最中であり、かつ日本社会心理学会、日本人間行動進化学会、および招待シンポジウムにて発表済みである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度同様に実験を継続して行うことができた。のべ200名の参加者に参加してもらい、ネットワーク実験を実施した。実験の分析、および結果の整理は終了しており、現在論文を投稿中である。さらに、前年度のデータと合わせて学会にて発表が済んでいる。最終年度ということもあり、次の調査、及びそれらのデータの集計を急ぎたい。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、研究者の中で論文検索における規範がどのように維持されているのかを質問紙調査で明らかにしつつ、新たな実験室実験を実施し、前年度までに見られた結果がどのようなメカニズムによって維持されているのかを明らかにする。具体的には、研究者の中で研究を遂行する上でどのように論文を検索しているのか心理学系の学会に所属している研究者向けに質問紙調査を実施する。同時に、実験室実験では、従来確率的に報酬を変動していたコンピュータの制度を一律の金額であるが、自由選択制度をよりも低い報酬になってしまう条件に変更する。もし、参加者が不確実性を嫌って自由選択制度に残っていたとしたら、この条件で参加者はコンピュータの制度に離脱していくことが期待される。 これらのデータは春から夏にかけて収集する予定である。また、これらの結果は早くとも今年度の人間行動進化学会にて発表をすることを目標とする。
|