研究課題/領域番号 |
21K18031
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分90030:認知科学関連
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研究機関 | 立命館大学 (2022-2023) 早稲田大学 (2021) |
研究代表者 |
布山 美慕 立命館大学, 文学部, 准教授 (30797311)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 文章理解 / 解釈学的循環 / 多義性 / 段落分け / 量子認知 |
研究開始時の研究の概要 |
人は、部分(単語や文)も全体(文章全体)も多義的な文章を、どうやって理解するのだろうか?文章は一般に多義性を持ち、かつ、この多義性を考慮した文章理解は、教育における深い読みや、芸術における美的感覚喚起とも関連し、重要とされる。 本研究では、多義的文章の理解解明のため、文章の部分と全体の循環的理解過程の解明を目的とし、その数理モデル構築と検証を行う。研究方法は、読者の部分と全体の理解を時系列で推定可能な認知心理実験と、機械学習による文章の階層構造分析を併用する。本研究が達成されれば、教育への応用や美的体験の解明にも繋がり、また、文章の自動生成や自動翻訳等の人工知能技術への応用も期待される。
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研究実績の概要 |
本年度は、文章の曖昧性・多義性が単一の意味に解消されるのではなく、むしろ複数の意味からなる創発的な意味理解をもたらす可能性を探求する研究を進めた。比喩文(比喩的意味と字義的意味の両方をもつ多義文とみなせる)の理解では、いくつかの比喩文理解において、読者は多義性・曖昧性を文脈に応じてある程度解消しつつも、多義性に起因する創発的な意味理解を行っている可能性が示唆された。また、多義的な解釈が可能な物語文章の理解においても、物語の解釈が曖昧になる時点で、読者が多義性や曖昧性を単に解消するのではなく、創発的意味理解を行う可能性が示唆された。これらの結果を国際会議2件で発表した。 本研究目的は文章理解におけるトップダウンとボトムアップ処理の循環的相互作用を明らかにすることであるが、もし文章の曖昧性・多義性が単一の意味に解消されないならば、その相互作用の制約条件は、単一意味への解消が条件である場合から大きく変わることとなる。そのため、循環的相互作用の推定を行う際の制約を調べる上で、本研究成果は重要である。現在、本研究成果を踏まえた新しい認知モデル構築に向け、国内外の研究者と議論を進めている。 読者が事前に段落終端予測可能かを分析し、議論した論文については、加筆修正を行い、改めて学術雑誌に投稿予定である。現在、共著者と議論を行い、論文修正を進めている。 以上の結果をもとに、新たな認知モデルを検討し、当該モデルを検証可能な認知実験を2024年度に行うことを予定する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究開始時には考慮していなかった、読者が多義性や曖昧性を単に解消するのではなく、むしろ多義性や曖昧性を活かした新規性の高い理解をする可能性について先行して研究を進めている。この点については概ね順調に進んでおり、論文出版や国際会議での発表、多くの国内外研究者との議論など、今後の発展可能性もひろがっている。一方で、研究者の所属変更に伴う研究環境整備に時間がかかったこともあり、当初予定していたテキスト構造自体の分析や、段落分けを用いた認知心理実験はやや遅れている。 以上から、今後の発展可能性が大きく広がった点も鑑みて、「おおむね順調に進展している」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度の引き続き、読者が多義性や曖昧性を活かした創発的な意味理解をする可能性とその場合のトップダウン・ボトムアップ処理間の制約条件の探求を進める。また、段落分け実験の結果をまとめた論文の出版を目指す。また、すでに行ったトップダウン処理の推定を行なった認知実験結果について論文執筆を行い、出版を目指す。以上の成果発表を行いながら、新規の認知モデルおよびそれを検証する認知心理実験の実施を行う。
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