研究課題/領域番号 |
21K18034
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分90030:認知科学関連
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研究機関 | 愛知淑徳大学 |
研究代表者 |
満倉 英一 愛知淑徳大学, 人間情報学部, 助教 (50845948)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | アモーダル補完 / 視覚数理モデル / 大域的補完 / 局所的補完 / 曲率 / 形状補完 / 標準正則化理論 |
研究開始時の研究の概要 |
他の物体によって一部を遮蔽された物体の被遮蔽領域における形状を補完することをアモーダル補完と呼ぶ.従来のアモーダル補完の数理モデルは形状の局所的補完には成功しているが,大域的補完には成功しているとは言いがたい.そこで本研究は,多くの視覚数理モデルで用いられる標準正則化理論の枠組みで,3次元面の等高線の曲率を用いて形状に関する評価関数を新たに提案し,アモーダル補完の視覚数理モデルの構築を目指す.このモデルを構築できれば,ヒトの視覚系が最適化問題を解いているとの解釈への新たな科学的証拠となるとともに,遮蔽が頻発する実環境における高度な形状検出アルゴリズム等への工学的応用も期待できる.
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研究実績の概要 |
他の物体によって一部を遮蔽された物体の被遮蔽領域における形状を補完することをアモーダル補完という。アモーダル補完は,被遮蔽物体全体の特徴を用いる大域的補完と,被遮蔽領域周辺の特徴を用いる局所的補完に大別される。 昨年度は,数値シミュレーションのために,遮蔽物体と被遮蔽物体の奥行き関係を3次元面:関数φ(x, y)として定義した。また,これまでに研究代表者が提案した3次元面の曲率を用いた評価関数を関数φ(x, y)で再記述することで,アモーダル補完モデルに用いる評価関数を提案した。さらに,この評価関数に最急降下法を適用し,補完領域における評価関数が最小となる関数φ(x, y)の更新則を導出した。そして,この更新則をアモーダル補完モデルとして遮蔽領域に適用する数値シミュレーションの結果,ヒトの局所的補完結果に一致するパターンと矛盾するパターンを見出した。これらの結果から,局所的補完についても,評価関数を再検討する必要があることがわかった。 本年度は,評価関数を修正するための手がかりを得るために,新たに3種類のパターンを用いて,数値シミュレーションを実施した。これら3種類の画像は,Kanizaの三角形,Itoら(2010)およびOliver et al. (2016)の先行研究を参考に作成した。これらに対して提案モデルを適用する数値シミュレーションを実施した結果,Kanizaの三角形に対する補完結果は,ヒトの局所的補完結果に一致した。しかし,それ以外のパターンは一致しなかった。これらの成果は,査読付き論文誌に掲載された。 さらに,視覚情報補完に関する評価関数を検討するために,心理実験を行い,その研究成果を国内外の学会等で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度予定していたシミュレーション用計算機の導入が本年度末となった。これはコロナ感染症拡大に伴う世界的な半導体不足に加えて,物価の高騰,製品の入れ替え時期が重なったことによる。また,予定外の大学業務が増大した。これらの結果,研究全体に遅れが生じた。次年度以降にスケジュールを見直すことで,これらの点を改善する。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は,先行研究において,心理実験によって明らかになっているヒトのアモーダル補完結果や数理モデルの出力結果との比較を行った。その結果,本研究で提案した局所的補完モデルの出力結果とヒトの知覚が一致するパターンと,一致しないパターンが明らかになった。 この問題を解決するには,①ヒトの局所的補完は,局所的補完モデルのみで再現できる可能性と,②大域的補完モデルとの統合したモデルによって再現できる可能性を考慮する必要がある。それぞれを解決するために,次年度は,①局所的補完モデルの修正と,②大域的補完モデルの提案を実施する。 本研究ではこれまで,局所的補完モデルを構築した後に,大域的補完モデルを構築し,最終的にこれらを統合するという方針で研究を実施してきた。しかし,ヒトの視覚系は階層構造をなしており,階層間の相互作用によって視覚機能が実現されている。したがって,局所的補完特性と大域的補完特性を統合した数理モデルによって,ヒトの知覚を再現できなかった局所的補完を再現できる可能性も考えられる。 そこで,アモーダル補完の関連領野であるV1野,V2野,V4野間でなされている情報伝達の経路について,先行研究を調査する。これをもとに,上記①,②の方針を決定したい。 ①の場合,既存のアモーダル補完モデルで用いられている評価関数を参考に,モデルを修正する。②の場合,これまでと同様の方針で,Shimaya(1997)によって提案された曲率を用いる形状の対称性に関する評価関数をもとに,3次元曲率を用いた新たな評価関数を提案することで,大域的補完モデルを構築する。 次年度は,本年度に導入したPCに,より高性能なGPUを搭載することで,シミュレーションに要する時間を短縮したい。得られた研究成果を日本視覚学会,神経回路学会の大会や研究会等で発表し,i-Perceptionなどの海外査読付き論文誌にも投稿を予定している。
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