研究課題/領域番号 |
21K18035
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分90110:生体医工学関連
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
田中 浩揮 千葉大学, 大学院薬学研究院, 助教 (60801743)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 免疫抑制 / RNAデリバリー / mRNA送達 / 炎症性疾患 / ドラッグデリバリーシステム |
研究開始時の研究の概要 |
自己免疫疾患の標準治療である免疫抑制薬を用いた病態制御は、生涯にわたる服薬が必要なうえ副作用が強い。本疾患の高いアンメットニーズを充足するには、患者体内に存在する自己反応性T細胞を抑制し、自己抗原に対する免疫寛容を成立させる必要がある。本研究では、mRNA導入技術を基盤とし、抗原提示を担う樹状細胞の表現型を抑制性に“上書き(リライティング)”、従来の自己免疫疾患の細胞治療が抱える問題点に取り組む。具体的には、樹状細胞に効率的にmRNAを導入可能な技術を開発し、免疫抑制性タンパク質を導入することで機能を改変する。これにより。生体内で抑制性を維持できる抗原特異的なtol-DCsを創出する。
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研究実績の概要 |
自己免疫疾患の標準治療である免疫抑制薬を用いた病態の制御は、副作用が強くまた生涯にわたる反復的な投与を必要とする。自己に対する過剰な免疫を防ぐためには、患者体内に存在する自己反応性のT細胞を抑制し、標的抗原に対する免疫寛容を成立させる必要がある。従来から、提示した抗原に対して免疫寛容を成立させるtolerative-DCsによる細胞治療が提唱されてきた。本細胞はin vitroでは抑制性のフェノタイプを示すが、患者の体内へ投与された場合は炎症環境に曝露されることから、炎症性に再誘導される懸念がある。 本研究で我々は、mRNAの導入により72時間程度樹状細胞の表現型を改変することを試みた。1年度目では、Ly-6C(low)/CD11c(high)群の単離と遺伝子導入を試みた。本細胞の単離には成功したものの、遺伝子の導入が困難な細胞であることが明らかとなったため、骨髄由来樹状細胞のミクスチャに対して72時間以上にわたり遺伝子を導入可能な製剤を作成してきた。一方、単離した骨髄由来樹状細胞は分化途上である可能性が示唆されている。 2年度目である本年度では、In vitroにおいて樹状細胞からのIL-10の放出を促進できる遺伝子を探索した。また、ナノ粒子の直接投与による表現型の書き換えのための事前検討として、導入タンパク質に対して獲得免疫を刺激しないLNPの開発を行った。これは、LNP型のRNAワクチンの研究が世界的に進む中で、LNPそのものがin vivoで樹状細胞に遺伝子を導入しそのワクチン機能を発揮している可能性が示唆されているためである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は複数のmRNAの組み合わせからなる36遺伝子群を樹状細胞に導入し、IL-10の誘導効率を検討した。その結果として、15種の組み合わせにおいて骨髄由来樹状細胞からのIL-10の発現が確認された。一方、骨髄由来樹状細胞は分化の過程にある細胞であることから、In vitroにおける抑制能の評価は適していない可能性が考えられる。そこで本研究では、見出した遺伝子を生体へ直接投与することとした。多種の核酸を効率的に評価するために、In vivoで簡便にRNA送達が可能なReady-to-Use型の製剤を確立した。本製剤は凍結乾燥型の製剤であり、mRNA溶液を加えて加熱するだけで使用することが可能である。
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今後の研究の推進方策 |
今後はIn vivoに対して本年見出した転写因子の組み合わせを導入する。導入した皮膚組織におけるIL-10などの抑制性サイトカイン量を検証するとともに、転写因子をモデル抗原OVAのmRNAと同時に投与することで、発現したモデル抗原OVAに対する免疫応答がどのように変化するか解析する。具体的には、抗体価や細胞傷害性T細胞活性を評価することで獲得免疫を評価する。獲得免疫の働きを阻害できた条件において、制御性のT細胞の分化や増殖が見られるかについては、Pepboy/OT-IIシステムを用いて検討を進める。
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