研究課題/領域番号 |
21K18044
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分90110:生体医工学関連
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研究機関 | 聖マリアンナ医科大学 |
研究代表者 |
岩端 秀之 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 助教 (70770923)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2022年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2021年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 人工卵巣 / 妊孕性温存 / 卵巣組織移植 / 微小残存病変 / 原始卵胞 |
研究開始時の研究の概要 |
近年、小児・AYA世代がん患者に対する妊孕性温存療法の1つである卵巣組織凍結は、月経発来前の小児女性がん患者にとって唯一の妊孕性温存療法となり、卵巣組織凍結・移植は“研究段階の技術”ではあるが、本邦においても実施件数が増加傾向にある。卵巣組織凍結・移植における最大の懸念は、卵巣組織内に存在する腫瘍細胞が移植時に再移入する可能性であるが、近年ではそのリスクに対して「人工卵巣」を用いた新たな移植方法が考案されている。今後安全かつ効率的な人工卵巣の開発と臨床応用を踏まえ、より実地臨床に近い条件での検証に基づいた知見が必要と考えられる。 今回研究代表者は人工卵巣を用いた単離卵胞の発育に関する研究を立案した。
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研究実績の概要 |
アガロース(A)やコラーゲン(C)を素材とした人工卵巣デバイスを作成した。マウス卵巣より器械的に卵胞単離を行い、直径や150~180マイクロメートルの初期二次卵胞を約20個デバイスへ充填しin vitro およびin vivoでの有用性の評価を行った。in vitro研究ではそれぞれの素材のデバイス上の卵胞発育を8日間観察した。評価には卵胞径、培養液中のエストラジオール(E)値を用いた。本研究においてAデバイスでの卵胞発育と比較してCデバイスでの卵胞発育は、卵胞径の増加および培養液中のE値の上昇の点で明確であった。さらに発育した卵胞から低率であるものの成熟卵子を獲得することに成功した。また、in vivo研究において同種マウスに卵胞を充填したCデバイスを腹膜および卵巣嚢へ移植した。移植後2週間で卵胞の生存、卵胞径の増大を確認することができた。二次卵胞を用いた免疫組織学的染色によってアポトーシスを確認したがCデバイス内での卵胞はアポトーシス発現が起こっていなかった。しかし、同様のコラーゲンを用いたスポンジを使用して卵胞発育を試みたがin vivoにおいて、そのデバイス内では卵胞発育を確認することができなかった。 今後はホルモン動態の確認などを検討していく必要があると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
パンデミックによる診療の多忙化などの社会的な背景から研究の進行が滞ってしまったため進捗状況は遅れている。 単離した卵胞の生体内外での発育や生存を確認することができたが成熟卵子の獲得効率は依然低率である。よって二次卵胞を用いて、より多くの卵胞を充填できるような人工卵巣デバイスへの改良を行う必要があると考えられる。改めて作成した人工卵巣デバイスを用いてマウスへの移植を行う。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度と同様に、移植から数週間後に採取した卵胞は切片を作成しHE染色、さらにはGDF9またはBMP15を用いた免疫組織学的染色やTUNEL法を用いて、卵胞発育の証明および卵胞へのダメージ評価を行う。さらにCD31やVEGF(血管内皮細胞増殖因子)を用いた免疫組織学的染色による血管新生の有無を確認する。また、卵胞の発育が認められれば、卵胞を採取し、卵胞単離による卵子への影響を調査するために獲得した成熟卵子の受精率、胚盤胞到達率を検証する。産仔獲得に向けて人工卵巣移植マウスの交配を行い、産仔獲得率、流産率、外表奇形の有無を検証する。 上記の結果を踏まえ単離された原始卵胞中心の卵胞群人工卵巣へ充填し、同様の研究を行う。原始卵胞を充填した人工卵巣が機能すれば、月経が持続する期間などについても評価を行う。 さらに研究が進めばVEGFなどを含むゲルやシートで卵胞を植え付けた人工卵巣を覆い、それを移植することによって月経が発現するまでの期間や月経が持続する期間などについてゲルを使用しない群をそれぞれ比較・検証する。上記研究について論文作成についても準備を行っていく。
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