研究課題/領域番号 |
21K18071
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分90130:医用システム関連
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
張 慧 群馬大学, 大学院理工学府, 助教 (80794586)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | シリコンナノワイヤバイオセンサ / ナノワイヤ構造の最適化 / 高感度化 / 電子線描画 / 抗原抗体検出 / 表面処理 / シリコンナノワイヤ / バイオセンサ / アスペクト比 / 超高感度検出 / 医用システム / 細線化 / 断面アスペクト比 / ウイルス検出 |
研究開始時の研究の概要 |
感染初期段階で少量のウイルスを高感度かつ迅速に検出できる技術の開発が渇望されているが、主流のPCR法は低濃度物質を検出できるが、測定に時間と労力がかかる上、ウイルス数が少ない感染初期には偽陰性となる問題点がある。本研究では、生体分子の微量電荷によるSiNWチャネルの空乏層変化を最大限に引き出す最適なSiNW構造を提案し、aM濃度以下の超高感度SiNWバイオセンサの実現を目指す。さらに、特定ウイルスを検出できる表面修飾法及び夾雑物のフィルタリング法を確立して、医療現場で極微量のウイルスを高感度かつ迅速に検出できる革新的な超高感度バイオセンサシステムを創製する。
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研究実績の概要 |
本研究では、感染初期段階で微量なウイルスを高感度かつ迅速に検出するために、Siナノワイヤ(NW)の構造を最適化することで高感度化の可能性を探求し、またSiNWの表面修飾法の確立およびマイクロ流体チップの構築によって超高感度バイオセンサシステムの創製を目指す。令和4年度では、コロナ感染拡大防止に関しては行動制限がある程度解除されたため、東京大学の共同利用設備を利用し研究を推進して、以下の成果を得た。 (1) SiNW構造の最適化による検出感度依存性の調査:SiNW幅を低減することによって、検出感度を向上できることが示唆されているが、SiNW幅の細線化による検出感度向上の限界は解明されていなかった。そこで、本研究では電子線描画条件と反応性イオンエッチングの条件を最適化した結果、従来の幅16 nmより細線化させた幅約10.8 nmのSiNWが形成できた。また、卵白アルブミンと抗卵白アルブミングロブリンG(IgG)の特異的結合の測定から、濃度6 aM(10^-18 mol/L)の超低濃度IgGの検出に成功した。さらに、異なる幅のSiNWバイオセンサを用いたIgG生体分子検出結果に基づいて、SiNWの初期空乏層厚さおよびIgG分子の付着によるNW内部の空乏層変化を解析した。この解析結果から高感度に検出できるSiNWの限界幅は8 nmであることを予測できた。 (2) 異なる表面処理を施したSi表面における化学結合状態の分析:特異的な生体分子を検出するため、Si表面処理技術の確立は重要である。作製したSiNWバイオセンサを以下の順番で表面処理を行った。1)希塩酸処理、2)オゾン処理、3)ホスホン酸処理、4)抗原修飾、5)抗体IgG付着。その後、X線光電子分光分析装置を使用して各処理を施したSi表面の化学結合の状態変化を調査した。その結果、表面処理で期待したSi表面の化学結合状態が確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
電子線描画条件と反応性イオンエッチングの条件の最適化により、幅10.8 nmのSiNWを形成することに成功し、研究目標である幅10 nmのSiNW形成に近づくことができた。また、細線化されたSiNWバイオセンサを用い、抗原抗体の特異的な結合を利用して抗卵白アルブミンIgG分子を検出した。その結果、最低濃度6 aMのIgG検出が確認できた。この結果は報告されているSiNWバイオセンサの中で最も低濃度の測定結果である。さらに、SiNW幅の検出感度依存性から予測したIgGの付着によるSiNW内部空乏層化という研究結果は先例がない新しい知見である。 また、X線光電子分光分析装置を使用して、異なる表面処理を施したSi表面における官能基の測定を行い、抗原抗体分子がSi表面に付着したことが確認できた。R4年度の後半では、使用していたHSQ電子線レジストが劣化して販売元に問い合わせたところ、HSQレジストが生産終了となり入手困難になったため、同等の特性を持つ代替試薬を調達した。代替試薬の調製方法、成膜条件、電子線描画などの各工程の条件出しをすべてやり直した。最適な描画条件を明らかにするための条件調査に時間がかかった。以上の状況を考慮すると、改善すべき課題が依然として存在するが、進捗した部分があるため、総合的にはおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は、以下の項目について研究を進める。 1) SiNW高さの調整による検出感度の評価:前述の研究で作製したSiNWの高さは約20 nmであった。今後の研究ではSiNW高さを10 nm程度に低減することで、検出感度をさらに向上させる可能性を調査する。SiNWの高さを低減することで、SiNW内部の電子数が大幅に減少する可能性があるため、SiNW内部不純物濃度の調整も行う予定である。 2) マイクロ流体チップの作製及びウイルス検出評価:検体溶液を連続的にSiNWバイオセンサに送液するため、マイクロ流体チップを作製する。鼻水や唾液から採集した検体溶液中の夾雑物を除去するため、マイクロ流体チップ内には開口幅が数μmのフィルタ構造を作製する予定である。検体溶液はマイクロ流体チップを通ってセンサの表面に輸送され、SiNW表面に修飾した抗体と結合してウイルスを検出する。評価に用いる検体試薬は、まずは市販の不活化されたインフルエンザの抗原と抗体を用意して、センサ表面には異なる抗体を修飾しておき、混合した抗原を導入して測定する。良好な応答が得られた場合には、異なる型や亜種の試料を入手して特異性と再現性を確認する予定である。 また、生体分子の等電点とバッファー溶液のpH濃度の関係を調査し、ウイルスを高感度に検出できる溶液環境を構築する予定である。これにより、特定のpH濃度条件下で生体分子の結合特性を最適化し、ウイルスの高感度検出を実現する。
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