• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 前のページに戻る

AI機械学習でつくる頭部外傷の個別化医療のための新しい重症度指標

研究課題

研究課題/領域番号 21K18079
研究種目

若手研究

配分区分基金
審査区分 小区分90130:医用システム関連
研究機関神戸大学

研究代表者

松尾 和哉  神戸大学, 医学研究科, 医学研究員 (90900168)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
キーワード頭部外傷 / 機械学習 / 転帰予測 / 重症度 / レジストリ / 入院期間 / AI / 血液バイオマーカー
研究開始時の研究の概要

頭部外傷は若年者の後遺障害の原因にもなるためその治療成績の向上が望まれるが、この数十年間大きな進歩はみられていない。頭部外傷の複雑な病態を的確に反映していない不十分な重症度指標に沿った患者の層別化が、適切な治療対象の選別を妨げ、ひいては新規治療の開発を妨げている可能性がある。そこで本研究では、身体所見と画像所見のみならず新たな血液バイオマーカーも学習因子とする機械学習に基づく頭部外傷後の転帰予測モデルを開発し、新たな頭部外傷の重症度指標の作成を目指す。

研究実績の概要

まず、多施設共同研究で収集した頭部外傷患者1200人のデータに機械学習を応用して作製した頭部外傷後の転帰3分類予測モデルを、webアプリとして実装した。転帰予測モデルをwebアプリ化することで、どの施設でも使用が可能になる。従って今後の多施設前向き研究において、モデルの転帰予測性能の検証が簡便かつ確実になるため意義がある。
次に、転帰予測モデルの前向き検証試験の前段階として、他施設の症例の転帰も正確に予測可能か、既存のレジストリデータで外部検証を行った。このレジストリでは抗血栓薬の影響の調査目的に65歳以上の頭部外傷患者のデータが国内多施設から収集されている。このレジストリでは、私たちが作製した転帰3分類予測モデルが入力因子に用いる血糖値、Hb、CRP、頭蓋外外傷の情報が収集されていない。そのため、これらの欠損因子を適切に補完するため、まずは各種の欠損値補完法の適性を調べ、最適な欠損値補完法を見出した。欠損値補完法は、多重代入法、 k近傍法での一括補完、k近傍法での因子個別補完、Random Forestでの一括補完、Random Forestでの因子個別補完、回帰モデルでの因子個別補完、Transformerを使ったTab PFNモデルなどによる欠損因子の個別予測補完について調べた。その結果、内部検証では正解率76.4%, AUROC 0.895で転帰3分類予測ができた。しかし外部検証では、回帰モデルで個別に欠損値を予測補完したデータで最も高精度に転帰予測できたが、それでも正解率65.9%, AUROC 0.846と不十分だった。この結果から、他施設の症例に転帰予測モデルを適応するにはデータ整合性が重要であることが示唆された。従って、今後の研究の発展に向けたデータの拡張に品質不整合なレジストリデータを用いるには、より正確な欠損値補完法の工夫が必要であることが分かった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

4: 遅れている

理由

当該年度中に頭部外傷患者の転帰予測モデルの有用性を明らかにするための前向き臨床試験を行う予定であったが、未実施である。その一因として、まず作製した転帰予測モデルが医療機器該当と認定されたため、転帰予測モデルの臨床利用のためには医療機器承認試験を経た承認が必要であると判明したからである。従って、計画していた前向き臨床試験は医療機器承認試験を兼ねるのが最適と考え、まずは医療機器製造・販売資格を有する企業と提携する必要が生まれた。この企業提携がいまだ達成困難であることから研究計画の変更を余儀なくされ、研究は予定よりも遅れている。
また、当初は転帰予測モデルへの導入を予定していた新規血中バイオマーカーであるGFAPとUCH-L1については、すでに頭部外傷の転帰予測マーカーとして海外製薬企業により特許取得されていることが判明した。そのため、医療機器としての製造販売を前提とせざるを得ない私たちの転帰予測モデルに新規血中バイオマーカーを導入するには、特許範囲を慎重に検討する必要や、同企業との提携が必要であることが判明した。この調整が困難で研究計画の変更を余儀なくされ、予定よりも研究は遅れている。この新規血中バイオマーカーの代替として、既存の血液凝固マーカーを組み合わせてバイオマーカーとして用いるための研究を遂行途中である。
最後に、頭部CT画像の元データの収集と画像解析から特徴量抽出と転帰予測へ応用する研究も予定より遅れている。JPEGまたはPNG形式でのCT画像収集を行うべく倫理審査委員会による承認を得たが、協力施設との調整に時間を要しているのが原因である。

今後の研究の推進方策

これまでの研究成果から、私たちの機械学習を応用した頭部外傷後の転帰予測モデルは、学習データに含まれていない他施設の患者の転帰をまだ十分には予測できない可能性が明らかとなった。そのため、予測性能と汎化性能の向上のために、まずデータを増量する。データ増量には、次世代医療基盤法に基づく匿名加工医療情報を利活用する予定である。匿名加工医療情報は匿名化に際したデータ品質低下が懸念されるため、欠損データ等の適切な補完手法についての研究も深化させる。

報告書

(3件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 2021 実施状況報告書
  • 研究成果

    (9件)

すべて 2023 2022 2021

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 1件) 産業財産権 (1件)

  • [雑誌論文] Machine Learning to Predict Three Types of Outcomes After Traumatic Brain Injury Using Data at Admission: A Multi-Center Study for Development and Validation2023

    • 著者名/発表者名
      Matsuo Kazuya、Aihara Hideo、Hara Yoshie、Morishita Akitsugu、Sakagami Yoshio、Miyake Shigeru、Tatsumi Shotaro、Ishihara Satoshi、Tohma Yoshiki、Yamashita Haruo、Sasayama Takashi
    • 雑誌名

      Journal of Neurotrauma

      巻: 40 号: 15-16 ページ: 1694-1706

    • DOI

      10.1089/neu.2022.0515

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書 2022 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 頭部外傷後の死亡・高度障害・中等度障害・転帰良好の4分類予測: 多施設症例での機械学習モデル構築と性能評価2023

    • 著者名/発表者名
      松尾 和哉, 相原 英夫, 原 淑恵, 森下 暁二, 阪上 義雄, 三宅 茂, 巽 祥太郎, 山下 晴央, 篠山 隆司
    • 学会等名
      日本脳神経外科学会第82回学術総会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] Machine Learning-based Prediction of Four Types of Outcomes After Traumatic Brain Injury Using Data at Admission: A Multicenter Study for Development and Validation2023

    • 著者名/発表者名
      Kazuya Matsuo, Hideo Aihara, Yoshie Hara, Akitsugu Morishita, Yoshio Sakagami, Shigeru Miyake, Shotaro Tatsumi, Satoshi Ishihara, Yoshiki Tohma, Haruo Yamashita, Takashi Sasayama
    • 学会等名
      Neurotrauma 2023
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書 2022 実施状況報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] 頭部外傷後の死亡・高度障害・転帰良好の3分類予測:多施設症例での機械学習モデル構築と性能評価2023

    • 著者名/発表者名
      松尾 和哉, 相原 英夫, 原 淑恵, 森下 暁二, 阪上 義雄, 三宅 茂, 巽 祥太郎, 山下 晴央 篠山 隆司
    • 学会等名
      第46回日本脳神経外傷学会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 頭部外傷後の死亡・高度障害・転帰良好の3分類予測:多施設症例での機械学習モデル構築と性能評価2023

    • 著者名/発表者名
      松尾和哉, 相原英夫, 原淑恵, 森下暁二, 阪上義雄, 三宅茂, 巽祥太郎, 山下晴央, 篠山隆司
    • 学会等名
      第46回日本脳神経外傷学会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] AI機械学習モデルによる頭部外傷後の死亡・高度障害・転帰良好の3分類予測:他施設症例を予測する2022

    • 著者名/発表者名
      松尾和哉、相原英夫、原淑恵、藤原大悟、太田耕平、森下暁二、三宅茂、当麻美樹、山下晴央
    • 学会等名
      第45回日本脳神経外傷学会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] AI機械学習モデルによる頭部外傷後の死亡・高度障害・転帰良好の3分類予測:他施設症例を予測する2022

    • 著者名/発表者名
      松尾和哉, 相原英夫, 原淑恵, 藤原大悟, 太田耕平, 森下暁二, 三宅茂, 当麻美樹, 山下晴央
    • 学会等名
      第45回日本脳神経外傷学会
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
  • [学会発表] AI機械学習モデルによる頭部外傷後の死亡・高度障害・転帰良好の3分類予測:実臨床に向けた他施設への応用2021

    • 著者名/発表者名
      松尾和哉, 相原英夫, 原淑恵, 藤原大悟, 太田耕平, 森下暁二, 当麻美樹, 山下晴央
    • 学会等名
      日本脳神経外科学会第80回学術総会
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
  • [産業財産権] 頭部外傷患者の転帰を予測するプログラム2022

    • 発明者名
      松尾 和哉
    • 権利者名
      松尾 和哉
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      2022-161191
    • 出願年月日
      2022
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書

URL: 

公開日: 2021-04-28   更新日: 2024-12-25  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi