研究課題/領域番号 |
21K18087
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分90130:医用システム関連
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
福嶋 勇太 帝京大学, 理工学部, 助教 (50754751)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2022年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2021年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
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キーワード | 特徴量選定 / 機械学習 / 針 / 穿刺 / ロボット / たわみ / 制御 |
研究開始時の研究の概要 |
心臓を包む心膜に針を刺し、心臓と心膜の間に貯留した液体を排出する心嚢穿刺手技は、直ちに貯留液が排出されなければ命に関わる重要な手技である一方で、心筋や重要な臓器の損傷が5.9 %の確率で発生し、最悪の場合死亡する。上記のような誤穿刺の要因の1つに針のたわみが挙げられる。針のたわみを低減し正確に穿刺を行うため、ロボットを用いた研究が多く行われているが、モデル化誤差や組織の動きの影響などが課題として挙げられる。そこで本研究では心嚢穿刺の自動化を目標にして、組織の動きによって生じる針のたわみを機械学習によって推定し、推定されたたわみを基に針の軌道を修正する、経皮的穿刺における針制御手法の提案を行う。
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研究実績の概要 |
本研究は針穿刺手技の自動化を可能とするロボットの開発を目指し、まずは心嚢穿刺手技を対象に、ターゲティングエラーを減少させる針制御手法の提案を目的として、(1)針底部周りの力覚情報を基に機械学習を用いて現在の針先のたわみを推定、(2)それを用いて針先のたわみを減少させる針底部位置を推定する手法の開発を行っている。以下(1)および(2)について2024年度に実施した内容を報告する。 (1):現在の針底部から針先までのベクトルから、針底部からターゲットまでのベクトル上へ引いた垂線を針たわみベクトルとしている。本年度では力覚情報および針底部の移動距離を特徴量、針たわみベクトルを目的変数とし、シンプルなLSTMモデルを構築し、針たわみベクトルが推定可能であることを明らかにした。一方で、針のたわみが短時間で大きく変動する際に推定精度が低下した。これは学習データ数の他、特徴量、非線形成分に対してモデルが対応できていないことが原因と考えられ、特徴量選定およびモデル再設計の必要性が示唆された。 (2):現在の針たわみベクトルを発生させている針底部位置の推定が可能なのか明らかにするため、特徴量を針たわみベクトル(計測値)、力覚情報および針底部の移動距離を特徴量、現在の針たわみベクトルを発生させている針底部位置を目的変数としシンプルなLSTMモデルを構築した。結果、RMSEは最大で0.8 mmとなった。また針底部を上または下に移動させた際、RMSEの低下が見られた。これは(1)と同様に特徴量選定の他、針に力が加わりながらたわむ際、外力等の影響もあり現象が複雑化し、精度が低下したためと考えられる。今後はアンサンブル学習のように、学習させるタスクを分け、それぞれをモデル化し最後に総合的な予測結果を出力する手法の提案が必要であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨今の半導体不足の影響を受け実験機材(Yaw、Pitch、Rollモータ)の納期遅れの影響に伴い、針底部を制御する制御機構の制作に遅れが生じている。そのため、針たわみベクトルを低減する針底部位置の推定モデルに対する検証が実施できていない。 また、本研究では(1)針底部周りの力覚情報を基に機械学習を用いて現在の針先のたわみを推定するモデル、および(2)それを用いて針先のたわみを減少させる針底部位置を推定するモデルの開発を実施しているが、現在は最も簡単な構成でモデルを設計している。そのため比較的大きな針のたわみが短時間で発生した場合等、特定条件下で誤差が増加する傾向があり、各モデルの推定精度向上のため特徴量選定やモデルの設計方法について調査および検討を行う必要性が生じており、やや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
現在の提案手法では、短時間に針たわみベクトルの増減や針底部周りの力覚情報の変化が生じた際に推定精度が低下することが明らかになった。よって当初の計画ではin vivo実験により提案手法の精度検証を行う予定であったが、針たわみ推定モデル、および針たわみ低減を可能とする針底部位置の推定モデルの推定精度向上を優先する。今後の推進方策を以下に記載する。 (A)各モデルに対する特徴量選定:開発した機械学習モデルの予測結果に対して入力である特徴量の重要度等の解析を行うことにより、モデルの精度向上が見込めることが知られている。近年ではモデルの説明を行う技術(XAI)が注目されているが、LSTM等の時系列データに対する深層学習に対応した技術は少ない。そこでLSTM等の時系列データに対する深層学習に対応した特徴量解析手法を調査、適用して提案モデルの推定精度向上を図る。 (B)各推定モデルの設計を再検討:本研究では2種類の機械学習モデルを構築することで、針のたわみを低減する針制御手法を設計しているが、今回設計したモデルはシンプルなLSTMであった。近年では複雑なタスクに対して、タスクを分割し、複数のモデルで異なるタスクを学習させその予測結果の平均値を計算、最終的な予測結果にするアンサンブル学習等により、推定精度の向上を図る取り組みがなされている。本研究でも上記アプローチ方法を参考に、本研究に適応可能なモデルの設計、開発を実施する。
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