研究課題/領域番号 |
21K18152
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研究種目 |
挑戦的研究(開拓)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分16:天文学およびその関連分野
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
粟木 久光 愛媛大学, 理工学研究科(理学系), 教授 (30252414)
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研究分担者 |
鈴木 浩文 中部大学, 工学部, 教授 (20282098)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
25,740千円 (直接経費: 19,800千円、間接経費: 5,940千円)
2024年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2022年度: 9,230千円 (直接経費: 7,100千円、間接経費: 2,130千円)
2021年度: 8,190千円 (直接経費: 6,300千円、間接経費: 1,890千円)
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キーワード | X線反射鏡 / CFRP / 超精密加工 / X線望遠鏡 / 炭素繊維強化プラスチック / 高角度分解能 / 精密加工 |
研究開始時の研究の概要 |
宇宙は活動的な現象に満ちており、X線を使った宇宙観測は活動的宇宙の解明に大きく貢献してきた。X線撮像観測ではX線望遠鏡が大きな役割を果たしてきたが、X線望遠鏡、特に硬X線望遠鏡の製作は難しく、大面積での高角度分解能化は、いまだ、道半ばというのが現状である。本研究では、NuSTARの角度分解能を超えた過去最高の反射鏡を作成すること(ステップ1)、さらには、その上を行く10秒角の結像性能をもった望遠鏡の製作に挑戦すること(ステップ2)である。本研究による高角度分解能硬X線望遠鏡製作技術の確立は、硬X線撮像観測の道をひらき、高エネルギー宇宙への窓を開くものとなる。
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研究実績の概要 |
宇宙は活動的な現象に満ちており、X線を使った宇宙観測は活動的宇宙の解明に大きく貢献してきた。その中で、X線望遠鏡を用いた撮像観測は大きな役割を果たしてきた。しかし、X線望遠鏡、特に硬X線望遠鏡の製作は難しく、大面積での高角度分解能化は、いまだ、道半ばというのが現状である。本研究では、NuSTARの角度分解能を超えた過去最高の反射鏡を作成すること(ステップ1)、さらには、その上を行く10秒角の結像性能をもった望遠鏡の製作に挑戦すること(ステップ2)である。 令和5年度は、令和4年度に気づいたサブミクロンサイズの異物付着に起因したガラス表面凹凸を除去するために、ガラス表面の洗浄を工夫を行った。その結果、CFRP平板ミラーでは100mm四方あたり数個程度まで凹みを減少させることができた。現在、この手法のウォルター形状CFRPミラーへの適用を試みている。ステップ2では、反射鏡全面で高形状精度を実現する必要がある。このためには(1)回転二次曲面から構成されるウォルター形状を周方向に分割するのではなく、1周鏡として製作すること、そして、(2) 出来上がった反射鏡を望遠鏡筐体の中に精度良く配置する必要がある。(1)の開発は企業と共同で着手しており、実現可能な方法が企業より1つ提案され試作されている。現在、より精度の良いものを目指して検討を進めている。次に(2)の方法としてASTRO-H衛星搭載硬X線望遠鏡で実施したアライメントバーの精密調整法を実施する。精密調整法ではピエゾ素子を用いてアライメントバーを押し引きすることで、反射鏡の位置をミクロン以下の精度で調整する。現在、精密調整法を望遠鏡筐体に取り込むように設計を進めている。また、金型の形状精度を改善する手法を検討し、その成果を報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
10秒角の結像性能を持った多重薄板型望遠鏡製作技術は未だ確立していない。我々はステップ2を目指し課題を明らかにし歩を進めている状況である。 令和5年度は令和4年度に立てた方針(高角度分解能化には表面の凹みを減少させることが近道)に基づき研究を進め、ガラス洗浄法の改善が凹みの減少に効果的であることを実証した。洗浄法の改善によるガラスの表面粗さの劣化が懸念されたが、X線反射率の測定では洗浄後の表面粗さ~1nm(暫定)であることを確認している。 また、ステップ2を実現するには、反射鏡全面で高形状精度を実現する必要がある。ASTRO-Hで採用されたセグメント鏡では、周方向に端があるために薄板ガラスを貼り付けた際に、スプリングバックの影響がでやすく、端の部分で結像性能が悪くなることが予想される。そこで、我々は、周方向に端のない1周鏡の開発に企業と共同で着手している。実現可能な方法が1つ提案され試作されたところである。この1周鏡とハウジング内への精密位置決め法により、ステップ2を目指す要素が揃うことになる。
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今後の研究の推進方策 |
現在、ウォルター形状に適用するためにガラス貼付けで使用する接着剤の条件を詰めているところである。この条件が整い次第、1周ウォルター鏡に適用する。望遠鏡筐体の設計は5月中頃には終了する予定であり、6月末を目処に加工を外注する。望遠鏡筐体を使うことで、筐体に格納した状態でのウォルター鏡の性能評価が可能となる。9月末頃までに試作品(1号)を製作し、可視平行光源を用いた性能評価を実施する。その後、宇宙科学研究所にてX線を用いた性能評価を実施する予定である。その評価結果を受けて試作品2号を製作し、翌年にX線を用いた評価を実施する。ウォルター鏡の開発は企業との共同開発で行い、配置の精密調整とX線を用いた評価は愛媛大学で実施する。 金型の超精密加工は本研究をさらに発展させる上で重要である。中部大学が中心となり、よりレベルの高い超精密加工を実施する上での課題とその対応策について調査する。
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