研究課題/領域番号 |
21K18155
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研究種目 |
挑戦的研究(開拓)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分17:地球惑星科学およびその関連分野
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
境 毅 愛媛大学, 地球深部ダイナミクス研究センター, 准教授 (90451616)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
24,960千円 (直接経費: 19,200千円、間接経費: 5,760千円)
2025年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2024年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
2023年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2022年度: 5,330千円 (直接経費: 4,100千円、間接経費: 1,230千円)
2021年度: 7,280千円 (直接経費: 5,600千円、間接経費: 1,680千円)
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キーワード | トロイダル型ダイヤモンドアンビルセル / コニカルサポート型2段式ダイヤモンドアンビルセル / 高圧発生技術 / 高圧物質科学 / 圧力スケール / 惑星深部科学 / 高荷重 / 2段式ダイヤモンドアンビルセル / 巨大ガス・氷惑星内部科学 / X線吸収分光 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、独自の高圧発生技術の開発を行い、1000万気圧(1テラパスカル)の発生を目指す。これまで不可能であった500~1000万気圧領域の実験を可能にすることで、そのような圧力下で物質がどのような振る舞いをするのかを明らかにする。また、この技術を惑星科学に応用することで、例えば巨大惑星の内部構造の謎に迫ることができる。高圧物質科学を軸として、他にも構造物性・地球深部科学・超伝導分野などの様々な分野へ応用し新たな地平を開拓する。
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研究実績の概要 |
本研究では、新しい高圧発生技術の開発を通して、極高圧物質科学・巨大惑星深部科学の開拓を行うことを目的としている。令和5年度は、トロイダル型ダイヤモンドアンビルセル(t-DAC)において、アンビル先端形状をベベル型から半球状型に変更し高圧発生試験を行った。レニウム(Re)ガスケットをそのまま試料としてX線回折実験(SPirng-8 BL10XU)を行い、発生圧力を評価した。形状の詳細は省略するが、令和5年度に行った5回の実験のうち4回の実験で400 GPaを超す圧力発生に成功し、うち一つはほぼ500 GPaに到達することができた。世界的に見ても400 GPa以上の圧力発生は非常に稀であり、一部のチャンピオンデータが偶発的かつ散発的に報告されている状況の中で、再現性良く繰り返し400 GPaを超える実験ができていることは本研究の目指す再現可能な確かな技術の確立の理念に合致するものであり、良い成果が出ていると評価できる。本成果は圧力発生の技術論文としてまとめる予定である。またこれとは別にこれまでの様々な試料に対する圧縮データを用いて、9つの物質に対する状態方程式を内部整合的な圧力スケール群とした確立した論文を投稿中である。 2段式ダイヤモンドアンビルセル(ds-DAC)については、クリプトン(Kr)を試料とした実験とオスミウム(Os)を試料とした実験を、広大およびESRFとの共同研究としてX線回折実験(ESRF ID27)とX線吸収実験(ID24-BCM)を行った。Krの実験は、ds-DACへのガス試料の封入の最初の例となる。加圧初期段階としての封入は成功し、その後残念ながら目立った高圧力の発生は実現できなかったが、2段目アンビル周辺でのガス試料特有の試料の動きについてのノウハウを得ることができた。Osの実験においては約300 GPaの圧力下でX線吸収(XAFS)測定に成功し、ID24-BCMでの高圧下かつ微小試料の測定の好例として共同研究者により結果がまとめられ現在論文投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の念願である500 GPaに手が届いたと言える結果をようやく出すことができた。圧力決定において問題となる圧力スケールについても、これまでの様々な物質に対する圧縮データをもとに内部整合的な圧力スケール群を構築し、国際学会で発表した。またこの内容は現在学術論文として投稿中である。 また惑星科学分野への応用として前年度に行った巨大氷惑星内部におけるダイヤモンド生成に関する研究成果について学会で発表を行った。さらにR5年度はC-H-O系において少し異なる化学組成・出発物質でのレーザー加熱DAC(LHDAC)による高温高圧実験を行い、同様にダイヤモンドが生成する可能性を見出した。
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今後の研究の推進方策 |
現在のt-DACによる極高圧発生についてアンビル形状を精密化する作業を推し進め500 GPaを確実に出せるセットアップ、それを有意に超えるセットアップを模索する。また、低コスト化(CVDダイヤによる圧発生テスト)など新しい技術への挑戦も並行して行う。 同時に惑星科学的なアプローチとして巨大氷惑星内部やスーパーアースマントル鉱物の結晶構造相転移や物性変化に着目した実験を行う。現在スーパーアースマントル条件下におけるアルカリ土類金属酸化物のB1-B2相転移と金属化についての検証実験を進めている。 X線吸収分光分野の応用としては、コニカルサポート型の2段目アンビルの背面を完全に掘り抜いた形のperforated(穴開き)型についての実験にまだ着手できていないので、X線吸収分光測定(XAFS)に使用可能な形について具体的に設計・製作を進め、どこまでの圧力発生が可能か、同時にどこまで低エネルギーのX線が使用可能となるかをテストできるようにしたい。
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