研究課題/領域番号 |
21K18159
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研究種目 |
挑戦的研究(開拓)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分18:材料力学、生産工学、設計工学およびその関連分野
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
高谷 裕浩 大阪大学, 大学院工学研究科, 教授 (70243178)
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研究分担者 |
水谷 康弘 大阪大学, 大学院工学研究科, 准教授 (40374152)
上野原 努 大阪大学, 大学院工学研究科, 助教 (10868920)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
25,870千円 (直接経費: 19,900千円、間接経費: 5,970千円)
2024年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2023年度: 9,360千円 (直接経費: 7,200千円、間接経費: 2,160千円)
2022年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2021年度: 8,970千円 (直接経費: 6,900千円、間接経費: 2,070千円)
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キーワード | エンジニアード・サーフェス / ナノ表面トポグラフィ / 光子散乱 / 量子的ゴーストイメージング / 光スピンホール効果 / 散乱ドレスト光子 / ラマン分光 / 量子もつれ光子対 |
研究開始時の研究の概要 |
ナノ表面トポグラフィを加工し,人工的に多様な機能を付与するエンジニアード・サーフェスの要求が高まっている.その機能性の機序はナノ表面トポグラフィのスケール階層的な幾何特性に基づいている.本研究は,機能を発現する幾何学的構造の基本単位,大面積の秩序性,均一性および局所的な幾何特性を損なう超微細欠陥のそれぞれのスケール階層に適応する光子と物質の相互作用である,量子的3Dゴーストイメージング(量子もつれ光子対),光スピンホール効果(量子的偏光解析法),ラマン散乱分光(散乱ドレスト光子検出)に基づいた新たな光子散乱表面計測原理を確立し,新たなエンジニアード・サーフェス・メトロロジーの確立をめざす.
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研究実績の概要 |
本研究は,機能を発現する幾何学的構造のエンジニアード・サーフェス・メトロロジー基盤を確立するため,ナノ表面トポグラフィによる光子散乱の根源的な機序を解明し,スケール階層に適応する光子と物質の相互作用に基づく新たな光子散乱表面計測原理の学理構築を目的としている.本年度は,3次元量子的ゴーストイメージング(3D-QEPGI)を実現し,さらに光スピンホール効果による表面トポグラフィ計測原理を確立するため,ナノ表面トポグラフィによる光子散乱計測の基礎実験,QEP-GI光学系の改良と高解像度QEP-GIの測定実験,光スピンホール効果による表面幾何学構造計測に注力し,つぎの研究成果を得た. [1]:光子散乱表面計測原理の学理構築において基準となる計測原理の確立が重要である.そこで,長さの国家基準である光周波数コムを用いた光逆散乱計測法によるマイクロ-ナノ表面トポグラフィ計測の高精度化と測定範囲拡張に取り組んだ.白色レーザの散乱光分光計測によって矩形溝の表面トポグラフィを数100nmの誤差で測定可能であることを示した.さらに,サブナノメートル表面粗さによる光子散乱特性の基礎解析を進めるため,ブリュースタ入射による光子散乱測定光学系を構築し光子散乱分布計測技術を確立した. [2]: Type-ii 位相整合BBOを用いた自発パラメトリック下方変換(SPDC)による量子もつれ光子源を改良し,QEP-GI顕微鏡の基本原理の検証および超高解像計測実験を遂行した.空間周波数が既知の被撮影物体を用いたイメージングによってQEP-GIの空間分解能を明らかにした. [3]:光スピンホール効果(SHEL)の弱測定に基づく測定光学系および量子的偏光解析法によるナノ表面トポグラフィ測定アルゴリズムを構築した.オプティカルフラット表面の測定実験によって大面積の表面粗さ分布を高速に測定できる可能性を示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
エンジニアード・サーフェスの多様な機能性の機序は,ナノ表面トポグラフィのスケール階層的な幾何特性に基づいている.光子散乱表面計測原理の学理構築を行うためには,その基盤技術であるQEP-GIに2光子量子干渉による変位計測を導入した3次元QEP-GIの確立が不可欠である.QEP-GI光路系は走査系で検出されるアイドラ光子とシグナル光子の同時計数によってイメージングされる.さらに面法線方向の走査系によって表面深さ方向のスライス画像が取得される.イメージングの高解像度化と面法線方向の走査距離の測定はイメージングからメトロロジー基盤を確立する重要な測定技術である.そこで本年度は,量子ドット超格子などのナノ表面トポグラフィ計測への適用可能性を示すため,Type-ii 位相整合BBOを用いた量子もつれ光子源と光学系構成の改良を行い,QEP-GIの解像度評価と高解像度化を遂行した.次にSHELの弱測定に基づくナノ表面トポグラフィ測定実験を遂行し,測定原理の検証と有効性を示した.さらに,光子散乱の量子効果に基づく光子散乱表面計測のコア技術となる,ナノ表面トポグラフィによる光子散乱の理論的解明および光子散乱分布計測技術の構築を進めた. しかし,3D-QEPGIによる表面トポグラフィ計測の基本特性を明らかにするためには,ヘテロダインレーザー干渉計(精度0.1nm)を用いた表面深さ方向の距離計測が必要であるが,今年度前半におけるコロナ感染による実験の停滞によって干渉光学系の導入が遅れている.さらに,光スピンホール効果による表面トポグラフィ計測において,表面での反射前後で偏光状態が変化したときの光子の反射位置シフト量計測の高分解能化をめざす,冷却CMOSカメラシステムを利用した光スピンホール効果計測システムの構築と基本動作検証実験が未着手であることから,進捗状況として「やや遅れている」の評価とした.
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今後の研究の推進方策 |
今年度中に遂行する計画であった,3D-QEPGIによる表面トポグラフィ計測の基本特性を明らかにするため,アイドラ光子とシグナル光子の同時計数によるイメジングと同期した表面深さ方向の距離計測を検討する必要がある.当初はヘテロダインレーザー干渉計による距離計測光学系との総合を構想していたが,散乱光子を直接利用する偏光光子もつれを利用した光子干渉計の導入を検討する.基準測定器を利用した校正技術によってメトロロジーの基本原理を確立する.また,ナノ表面トポグラフィによる光子散乱理論に基づいた3D-QEPGI解析シミュレータの構築を推進する. 次に,光スピンホール効果は量子光学の原理である角運動保存則(スピン角運動量+軌道角運動量)に基づいて説明される散乱現象であり,反射前後の偏光状態変化による反射シフト量の精密計測アルゴリズムを確立することによって表面微細構造の大域的“不均一性”を評価する.マクロ・レベルの幾何学的特徴量計測実験によって光スピンホールによる幾何学的特徴量計測の基本特性を明らかにする. さらに,加工表面層の格子欠陥によって分断される原子集団は仮想量子ドットとみなすことができ,入射光子が結合すると新たな準粒子であるドレスト光子フォノンを生成し,欠陥との相互作用によって散乱ドレスト光子が放出される.その振動スペクトル(ラマン散乱分光)に基づく原子スケール欠陥解析手法を確立するため,新規にフェムト秒レーザを利用して表面層原子集団のみを励起する局所励起光学系を構築し,単一光子検出レベルの高感度ラマン分光装置を用いた基礎計測システムを構築する.サファイアガラスの基準スペクトル解析に基づいた計測システムの基本動作検証実験を遂行し,ナノレベルの表面層欠陥を有する光学結晶を用いて,散乱ドレスト光子のラマン分光特性と原子スケールの欠陥に起因する局所応力場状態の関係を明らかにする.
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