研究課題/領域番号 |
21K18178
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研究種目 |
挑戦的研究(開拓)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分25:社会システム工学、安全工学、防災工学およびその関連分野
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
山本 由弦 神戸大学, 理学研究科, 教授 (10435753)
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研究分担者 |
千代延 俊 秋田大学, 国際資源学研究科, 教授 (40526430)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
25,610千円 (直接経費: 19,700千円、間接経費: 5,910千円)
2025年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2024年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2022年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2021年度: 11,570千円 (直接経費: 8,900千円、間接経費: 2,670千円)
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キーワード | 摩擦発熱 / 有機炭素 / 地震 / ロックエバル / S2 / S4 / TOC / Tmax / ビトリナイト / 火成岩貫入 / 短時間加熱 / 熱異常 / ケロジェン / 温度 |
研究開始時の研究の概要 |
初年度(2021年度)は、本研究の鍵となるRock Eval-6機器に用いるオートサンプラーの製作と圧力容器の整備とともに、ビトリナイトとTmaxの相関検討をスタートさせる。 2022年度は、その相関を完成させるとともに、昇温実験を開始し、Tmaxが実験的に与えた昇温情報を示すか、検証する。2023年度は、昇温実験を継続しつつ、応用ステージとして火成岩体による短時間加熱の抽出を試みる。2024年度には、実際の過去の地震断層から摩擦発熱量の抽出に挑戦する。最終年度の2025年度には、摩擦発熱量から計算される断層の運動パラメータを抽出し、成果を国際誌に登校することを目指す。
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研究実績の概要 |
前年度までに明らかになった小規模貫入火成岩脈周辺の短時間被熱に伴うS2(室内での加熱によってケロジェンから発生する炭化水素)とS4CO2(残存有機炭素)の減少について、検証実験を行った。窒素環境下のグローブボックス内において銅管に試料を封入する新たな試料調整方法を開発した。これによって、窒素環境下における加熱実験を可能にした。 パイロット的な加熱実験の結果、有酸素下における1000秒間の加熱では、S2は最高温度200℃から、S4CO2も400℃から減少が始まり、500℃になるとほぼ消失することが明らかになった。つまり、有酸素下ではS2の方が低い温度から反応を始めること、S4CO2はより高温側の指標になり得ることが明らかになった。一方、同じ最高温度300℃であっても被熱時間を1000秒から100万秒まで段階的に長くすると、S2は数100秒から、S4CO2も1万秒から減少が始まり、前者の方が数十秒スケールの短時間被熱を記録し、後者が数日程度の被熱まで記録できることが明らかになった。 一方、銅管封入を行った無酸素下の加熱実験では、S2は有酸素下にくらべて減少開始温度が150℃程度大きくなったものの、明瞭な減少が見られた。一方、S4CO2は減少が見られなかった。前年度までに明らかにした貫入火成岩脈周辺では、S2のほかS4CO2も明瞭に減少していた。地下では自由空気(酸素)がほぼ存在しないことから、間隙水中の酸素を消費したことがうかがわれた。今後再現実験が求められる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初予定していなかった無酸素環境での加熱試験が行えるようになり、S4CO2の減少には酸素、もしくは間隙水の影響がある可能性を突き止めた。今後検証実験が必要とされるが、当初の計画以上の進捗である。 本研究は、1)検証ステージ(1-1 ビトリナイトとTmaxの相関検証、1-2 加熱実験)と2)応用ステージ(2-1 露頭スケールの被熱異常検討、2-1 切片スケールでの断層沿いの摩擦発熱以上検討)で構成される。5カ年計画中の3年が完了した時点で、検証ステージ(1-1、1-2)と応用ステージの2-1が完了あるいは予想外に進展しつつ進行している。項目の時系列は計画通りに進行しているが、予想外の成果が出ており、当初の計画以上に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
成果概要に示したように、天然の短時間加熱とそれに伴う新指標の減少には、岩石中の間隙水が大きな影響を与えている可能性が見えてきた。これを検証するために、新たに開発した試料調整方法で銅管に岩石粉末と純水を封入した試験を試みた。しかし、加熱中に内部の圧力が急増し、破裂してしまい、実験が成功していない。超臨界状態での反応実験が必要と考えられるが、予算不足で立ち入れない。今後新たな予算獲得もしくは方法をとる必要がある。 今後は、加熱実験の再現実験を実施するほか、詳細な温度、被熱時間に区切った検討を行い、被熱温度定量化に向けた基礎データを蓄積する。また、これまで検討してきた貫入火成岩脈に加え、房総半島の断層に適用し、より短時間の被熱異常を検討する。
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