研究課題/領域番号 |
21K18180
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研究種目 |
挑戦的研究(開拓)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分26:材料工学およびその関連分野
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 (2022) 東北大学 (2021) |
研究代表者 |
高梨 弘毅 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 先端基礎研究センター, センター長 (00187981)
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研究分担者 |
窪田 崇秀 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (00580341)
加藤 秀実 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (80323096)
鈴木 和也 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 先端基礎研究センター, 研究員 (20734297)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
26,000千円 (直接経費: 20,000千円、間接経費: 6,000千円)
2023年度: 6,630千円 (直接経費: 5,100千円、間接経費: 1,530千円)
2022年度: 7,540千円 (直接経費: 5,800千円、間接経費: 1,740千円)
2021年度: 11,830千円 (直接経費: 9,100千円、間接経費: 2,730千円)
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キーワード | ハイエントロピー合金 / 軟磁性 / 磁気異方性 / 異方性磁気抵抗効果 / 異常ホール効果 / スピン軌道トルク / スピンホール効果 / スピン蓄積 / 電磁機能 / スピントロニクス / 磁気抵抗効果 |
研究開始時の研究の概要 |
ハイエントロピー合金は空間対称性が局所的に破れた系の集合体であり、スピン軌道相互作用が顕在化し、従来合金には見られない優れた電磁機能、特にスピントロニクス機能が出現する可能性がある。 本研究では、ハイエントロピー合金の均一固溶体単結晶を作製し、これまで未開拓であった、スピン軌道相互作用に基づいて現れる磁気異方性や異常磁気抵抗効果、異常ホール効果、異常ネルンスト効果、スピン軌道トルク等の系統的な評価を行い、微視的な構造解析との比較を通して、ハイエントロピー合金においてスピン軌道相互作用がマクロな特性としてどのように発現するかを明らかにし、従来合金にはない優れた電磁機能を開拓する。
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研究実績の概要 |
2022年度は、昨年度に引き続きキュリー温度が室温よりも高いことが期待される強磁性FeNiCoCuPd合金材料に着目し、バルク材料と薄膜材料の研究を実施した。バルク材料の研究では前年度に作製した試料を用いて、SEM観察による微細組織観察を行った。多結晶FeNiCoCuPd合金(等モル組成)では、fcc相が主相であったが、比較的FeNiCoリッチなfcc相とCuPdリッチなfcc相がマイクロメートルスケールで観測され、さらにXRD測定からも2相の存在が示唆された。薄膜材料作製の研究では、本年度からスパッタリング法による均一なFeNiCoCuPd薄膜の作製方法の確立を目的とした検討を開始した。超高真空スパッタリング法を用いて、FeCo(等モル組成), Ni, Cu, Pdターゲットを用いた4元同時スパッタリングにより作製を試みた。その結果、バルク材料と比較して顕著な相分離のないFeNiCoCuPd合金薄膜の作製条件を見出し、室温で明瞭なヒステリシスを観測した。さらに、薄膜中のFeNiCo量を一定にし、CuPd比を0-40%の比率で可変した試料(Fe20Ni20Co20Cu40-xPdx)においても顕著な相分離のない薄膜が形成可能であることを明らかにした。また、これらの試料において、磁気特性、電気抵抗率、異方性磁気抵抗効果、異常ホール効果の評価を組成比の観点から行い、CuとPdの比率に対し、系統的な変化が生じることを確認した。薄膜材料における強磁性ハイエントロピー合金は、これまでに良質な試料が得られていなかったことから、磁気伝導現象を詳細に検討することが困難であった。しかし、本年度実施の研究により薄膜作製方法が確立されたことにより、磁性ハイエントロピー合金の磁気伝導現象の研究の系統的な推進が可能になったといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
バルク材料の研究については、構造解析と磁気特性の測定は完了したものの、電磁機能の検討は評価に着手したところである。一方、薄膜材料の研究においては、強磁性薄膜材料の作製方法の確立に成功し、スパッタリング法による広範囲の組成制御が可能であることが示されたことから、強磁性ハイエントロピー合金中のPd量に着目した研究を実現できることが分かり、実際にそれらの試料の磁気伝導現象の評価を行った。以上から、おおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
バルク材料について、現在、評価を実施している電気抵抗率、異常ホール効果、異方性磁気抵抗効果などのスピン依存伝導現象の評価を完了させ、磁気および磁気伝導特性の組成依存性に関する考察を深める。薄膜材料について、前年度に作製したFeNiCoCuPd薄膜を透過型電子顕微鏡による微細構造観察を実施し、磁気・磁気伝導特性における組成依存性との関係性を明らかにする。また、スパッタリング法による作製方法の利点である広範囲の組成制御や積層構造作製技術を活用して、組成と磁気伝導特性との関係について系統的な実験を実施し、ハイエントロピー合金特有の電磁機能の発掘を目指す。さらに、FeNiCoCuPd合金において、Pdを希土類元素等の元素に置換することにより、スピンオービトロニクスの研究分野の発展に寄与する新しいハイエントロピー薄膜材料の探索を行う。
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