研究課題/領域番号 |
21K18184
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研究種目 |
挑戦的研究(開拓)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分26:材料工学およびその関連分野
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
松下 智裕 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (10373523)
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研究分担者 |
松井 文彦 分子科学研究所, 極端紫外光研究施設, 教授 (60324977)
水野 潤 早稲田大学, ナノ・ライフ創新研究機構, 客員上級研究員(研究院客員教授) (60386737)
橋本 由介 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 助教 (60872877)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
26,000千円 (直接経費: 20,000千円、間接経費: 6,000千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2023年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2022年度: 9,750千円 (直接経費: 7,500千円、間接経費: 2,250千円)
2021年度: 9,750千円 (直接経費: 7,500千円、間接経費: 2,250千円)
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キーワード | 電子エネルギー分析器 / ドーパント / 原子配列 / 光電子ホログラフィー / 原子分解能ホログラフィー |
研究開始時の研究の概要 |
新素材の開発において不純物ドーピングは普遍的に用いられる方法である。ドーパントの立体原子配列について申請者は光電子やオージェ電子によるホログラフィで観測できることを示してきた。ホログラムを得るには電子の放出角度分布を広い立体角で測定する必要がある。市販の電子エネルギー分析器に匹敵する分解能を持ちつつ、広立体角の電子放出分布を測定可能な広角2次元角度分解電子エネルギー分析器を開発し、電子線励起オージェ電子ホログラムを観測して、半導体などのドーパントの原子配列を解明する。
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研究実績の概要 |
本研究は、電子エネルギー分析器の革新と、その分析器を用いた最新材料のドーパントの化学状態ごとの立体原子配列の解析を目的とする。ドーピングにより物性を改変することは科学技術の基礎の1つである。しかし、従来はドーパントの原子配列を直接測定することが難しかった。本研究開発する光電子ホログラフィー測定装置は、この課題を解決する。原理は以下の通りである。試料にX線や電子線を照射し、ドーパントから光電子やオージェ電子を励起する。この電子の放出角度分布は、ドーパントの周囲の立体原子配列を記録したホログラムとなっている。この情報からドーパント周辺の立体原子配列を導出できる。電子線を励起源とすれば、研究室レベルでの測定が可能となる。この測定には、±45°以上の広い立体角で電子を検出しつつ、高い分解能を持つ電子エネルギー分析器が必要である。しかし、市販の分析器ではこの条件を満たせない。そこで、平行化レンズと阻止電場型アナライザ(RFA)を組み合わせた新型の電子エネルギー分析器を開発する。研究実施計画として、まず電子軌道の理論計算を行い、それを元に電子エネルギー分析器の設計を行った。設計上、楕円メッシュ電極を製作する必要があるため、その加工技術の開発を行った。加工に成功した楕円メッシュ電極を用いて、電子アナライザとそれを収納する真空チャンバーを製作した。本年度は、マイクロチャンネルプレートと電子レンズの組み立て、真空チャンバーへのインストールまでを完了した。2024年度にアナライザーを動作させて評価を行う予定である。また、別のアイディアとして、平行化レンズと阻止電場の組み合わせで別の電極配置を行ったアナライザについて理論的な評価を行い、分解能などの計算結果を論文化した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度に加工が完了した電子エネルギー分析器の重要な部品である楕円電極を用いて、電子エネルギー分析器全体の組み立てを行った。真空チャンバー内部の配線や耐圧などの動作条件の確認を実施した。次に、真空チャンバーを組み上げ、電子エネルギー分析器をチャンバー内に設置した。現在のセットアップでは、電子の運動エネルギーが阻止電位以上であれば、スクリーンに投影される方式となっている。つまり光電子のハイパスフィルターとして機能する。この状態で電子エネルギー分析器の角度分解能、エネルギー分解能の評価を進める予定である。この装置の設計と進捗について、日本物理学会にて報告を行った。さらに、この電子エネルギー分析器をバンドパスフィルターに変更するための電極の開発も並行して行った。一方で、共同研究者から電子平行化レンズと阻止電場の配置を大きく変更したバンドパスフィルター型の電子エネルギー分析器の提案があった。この新しい電子エネルギー分析器について、電子軌道の解析と分解能の評価を行い、論文にて発表した。
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今後の研究の推進方策 |
電子エネルギー分析器全体が組み上がったため、真空立ち上げ、電子エネルギー分析器への配線、制御プログラムの開発などを行う予定である。プログラムはPython言語を使って開発し、申請者が開発している原子分解能ホログラフィーの解析ソフトウエア3D-AIR-IMAGEと連動して動作するようにする。これにより、測定から解析までシームレスに実行することが可能になる。申請者はSPring-8 BL25SUに設置されている阻止電場型電子エネルギー分析器の開発経験があり、これらのハードからソフトに至る開発を問題なく進められると考えている。調整の際、光電子・オージェ電子の励起源として、電子銃やX線管を用いる。初期評価では電子エネルギー分析器をハイパスフィルターとして動作させ、ホログラム像の歪み、地磁気の影響、角度分解能などを評価する。また、阻止電位を変動させてロックイン計測を行い、エネルギー分解能の評価も進める。これらの結果を基に、角度分解能とエネルギー分解能を高めるための電子エネルギー分析器自体の調整を行う。 一方、この装置は電極間距離が長いため高電圧での動作が可能である。したがって、硬X線光電子分光の領域でも利用できる可能性がある。そこで、新たにSPring-8で硬X線領域の光電子ホログラフィー測定を計画し、利用申請を行った。申請が採択されたため、2024年度中にSPring-8に持ち込み、硬X線ホログラフィーの測定を実施する計画である。これらの得られた成果について学会にて報告し、論文化を進める予定である。
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