研究課題/領域番号 |
21K18189
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研究種目 |
挑戦的研究(開拓)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分28:ナノマイクロ科学およびその関連分野
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
斉藤 好昭 東北大学, 国際集積エレクトロニクス研究開発センター, 教授 (80393859)
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研究分担者 |
手束 展規 東北大学, 工学研究科, 准教授 (40323076)
池田 正二 東北大学, 国際集積エレクトロニクス研究開発センター, 教授 (90281865)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
25,870千円 (直接経費: 19,900千円、間接経費: 5,970千円)
2025年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2024年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2023年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2022年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2021年度: 14,300千円 (直接経費: 11,000千円、間接経費: 3,300千円)
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キーワード | 反強磁性スピントロニクス / スピン軌道トルク / 磁気抵抗効果 |
研究開始時の研究の概要 |
『反強磁性体を用いた超高密度メモリデバイス』の実現に向けて、微細化による本質的な限界が生じない独自構造について、学理と工学応用の両面から追求する。具体的には、読出し信号増大に重要なスピン依存伝導機構と、書込み効率化に重要なスピン軌道トルク、及び、反強磁性体界面に働く磁気的交換結合機構の解明を進め、(1)大きな読み出し信号が得られる反強磁性体の探索、(2)高効率書き込みが可能な反強磁性体の探索、(3)その間の交換相互作用制御技術の確立を行い、(1)~(3)の全ての技術を採り入れたデバイスの動作を原理検証することで、反強磁性体を基軸とした超高密度・超高速・低消費電力スピンメモリを開拓する。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、本質的に微細化限界が生じない『反強磁性体を用いた超高密度メモリデバイス』の動作原理を実証し、超大容量・超高速性・低消費電力性を有する次世代メモリデバイスを開拓することにある。 令和(R)5年度は、R4年度に続き、書込み用電極としてR3度提案したSynthetic反強磁性積層膜の探索を深耕するとともに、その積層膜上にバルク反強磁性体であるIrMnを有するトンネル接合読出し素子の作製を進めた。また、R3年度に改造した超高真空スパッタ装置を用い、バルク反強磁性体RuO2の作製にも取り組み、スピン軌道トルク(SOT)書込みの実験を行った。以下に得られた知見の詳細を示す。 (1)R3年度提案したIr下地層/Co/Pt/Ir/Pt/Co/Irキャップ層構造を有するSynthetic反強磁性書込み用電極(Phys. Rev. B 105, 054421 (2022))のIr下地層またはIrキャップ層の元素の種類をW,Ta,IrMn変えることにより、上下のCo層に働くジャロシンスキ守谷相互作用の大きさを変えることを試みた。その結果、垂直磁化膜を有するSynthetic反強磁性積層膜を無磁場でSOT反転できることを見出した(Phys. Rev. B 108, 024419 (2023))。 (2)Synthetic反強磁性書込み用電極上に、IrMn/MgO/IrMnからなる反強磁性TMR接合読出し用素子の作製を試みた。ホール素子上に円柱形状のIrMn/MgO/IrMn-TMR接合を作製した。結果、Synthetic反強磁性中のCoがSOT磁化反転をすることを見出した。 (3)反強磁性体RuO2上に、スピンHall効果が大きなPt層を積層し、電流-スピン変換効率を調べた。その結果、RuO2,Pt単体よりも変換効率が大幅にEnhanceすることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
令和5年度は、Synthetic反強磁性書込み用電極のキャップ層、下地層の材料を変え、磁性層/非磁性層界面のナノ構造エンジニアリングを行うことにより、垂直磁化膜を有するSynthetic反強磁性膜を無磁場でSOT反転できることを見出すとともに、バルク反強磁性書込み用電極である反強磁性体RuO2にPt層を積層し大きな電流-スピン変換効率を得ることに成功した。これらは、反強磁性体を用いたSOT-MRAMの高密度化・低消費電力化に貢献できる成果と考えられるため。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は、Synthetic反強磁性膜を無磁場でSOT反転できることを見出すとともに、バルク反強磁性書込み用電極である反強磁性体RuO2にPt層を積層し大きな電流-スピン変換効率を得ることに成功した。また、反強磁性体トンネル接合の探索も進め、Synthetic反強磁性書込み電極構造の上にIrMn/MgO/IrMnからなるTMR接合読出し用素子を作製し、Synthetic反強磁性中のCoがSOT磁化反転することを見出した。 令和6年度からは、令和5年度までに得られた知見を用い、Synthetic反強磁性構造、RuO2反強磁性を用いた更なる書込み特性向上を目指すとともに、それらの書込み用電極構造上に、大きな読み出し信号が得られる反強磁性体TMR接合の探索も推し進める。具体的には、読出し信号増大に重要なスピン依存伝導機構と、書込み効率化に重要なスピン軌道トルク、及び、反強磁性体界面に働く磁気的交換結合機構の解明を進め、(1)大きな読み出し信号が得られる反強磁性体の条件出し、(2)高効率書き込みが可能な反強磁性体の深耕、(3)その間の交換相互作用制御技術の確立を行い、(1)~(3)の全ての技術を採り入れたデバイスの動作を原理検証することで、反強磁性体を基軸とした超高密度・超高速・低消費電力スピンメモリを開拓する。 研究代表者の斉藤は、研究計画の立案、書き込み用反強磁性体/読み出し用反強磁性体の設計と探索を行い、反強磁性体を基軸にした超高密度スピンデバイスの高性能化を目指す。分担者の池田、手束は、代表者と共に、新規デバイスの作製を行う。手束は斉藤と共に、特殊な評価手法により、MR値、反強磁性体材料の反転効率と反強磁性2層構造の動作を調べ、反強磁性体エンジニアリングにフィードバックする。チームの総合力により、反強磁性体を基軸とした超高密度・超高速・低消費電力スピンメモリを開拓する。
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