研究課題/領域番号 |
21K18191
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研究種目 |
挑戦的研究(開拓)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分28:ナノマイクロ科学およびその関連分野
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
新井 豊子 金沢大学, 数物科学系, 教授 (20250235)
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研究分担者 |
富取 正彦 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 名誉教授 (10188790)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
26,000千円 (直接経費: 20,000千円、間接経費: 6,000千円)
2023年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2022年度: 16,380千円 (直接経費: 12,600千円、間接経費: 3,780千円)
2021年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
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キーワード | 周波数変調原子間力顕微鏡 / 赤外分光 / タングステン探針 / ナノ力学 / 原子レベル顕微鏡/分光法 / 力学的エネルギー散逸 |
研究開始時の研究の概要 |
周波数変調原子間力顕微鏡(FM-AFM)では、振動する探針と試料の間に働く微弱な相互作用力(保存力)を高感度測定して原子分解能で表面像を取得する。本研究では、独自開発のFM-AFMを基に「探針振動に対して位相制御されたパルス外場印加で変化する力学応答を、力学的散逸エネルギー信号として高感度測定することで原子・分子種を捉える(分光する)」という着想で原子レベルの空間分解能を持つ顕微鏡/分光法を開拓する。本研究は、研究代表者のFM-AFMの独自開発および散逸エネルギーの高感度測定の実績に裏付けられたものである。
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研究実績の概要 |
本研究では、周波数変調原子間力顕微鏡(FM-AFM)を基に、赤外光を照射した際の試料表面の分子の分極変化を原子レベルで力学的に高感度検出する赤外分光法(探針振動同期検波赤外分光法(TS-IR))を開発する。 赤外光源としてパルス量子カスケードレーザー(QCL)を選定し、研究開始当初から国内メーカーと打ち合わせ、2022年5月に特別仕様のQCLが納品されたが、種々のトラブルのため、メーカーに戻し調整を繰り返し行い、2023年1月に金沢大学に設置して、QCLの発振を確認した。今年度、試料にレーザー光の照射テストを行ったが、充分な照射パワーが得られなかった。そこで、基盤研究(A)との合算により、米国製のQCLシステムを導入した。QCLシステムを、現有のFM-AFM装置と同じ除振機構の上に設置し、探針直下の試料に赤外レーザー光を照射するための光学系を設計し、組み込んだ。探針振動に同期させてレーザー発振できることを確認した。 本研究では、音叉型水晶振動子を基体とし金属探針を形成した力センサーを用いる。タングステン線を、酸化性ガス(水素と酸素の混合ガス)の高温の炎の中に入れるとタングステンの酸化・酸化物の昇華が繰り返され、エッチングされる。燃焼ガスラインにソレノイドバルブを導入して、エッチング時間を10 msの精度で制御した。W線を挿入後250-300 msで炎を消火すると再現性よく先端半径が100 nm以下のW探針を作製できた。炎エッチングで先鋭化したW探針先端を透過型電子顕微鏡(TEM)で、観察および電子線回折像を解析したところ、先端は[110]方向を向いて単結晶化していること、先端は扁平しており、扁平面が(001)面のテラスとステップから形成されていることが推定された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度導入した、量子カスケードレーザー(QCL)では、当初見積もっていた仕様を満たしていなかったことが、今年度になって明らかとなった。今年度、基盤研究(A)との合算で、本研究の要求仕様を満たすQCLシステムを導入できたので、研究期間を1年延長して、当初目的の達成をめざす。
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今後の研究の推進方策 |
FM-AFMの探針試料間への光の集光方法の検討から始め、充分な出力で発振しているか確認する。テスト試料として選定したマイカ基板を用いて、FM-AFM/TS-IR能力を実証する。
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