研究課題/領域番号 |
21K18193
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研究種目 |
挑戦的研究(開拓)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分28:ナノマイクロ科学およびその関連分野
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研究機関 | 大阪公立大学 (2022) 大阪府立大学 (2021) |
研究代表者 |
秋田 成司 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 教授 (60202529)
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研究分担者 |
石原 一 大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 教授 (60273611)
有江 隆之 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 准教授 (80533017)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
25,870千円 (直接経費: 19,900千円、間接経費: 5,970千円)
2023年度: 7,410千円 (直接経費: 5,700千円、間接経費: 1,710千円)
2022年度: 8,710千円 (直接経費: 6,700千円、間接経費: 2,010千円)
2021年度: 9,750千円 (直接経費: 7,500千円、間接経費: 2,250千円)
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キーワード | 量子エミッタ / 揺らぎ / ナノ電気機械 / 2次元材料 |
研究開始時の研究の概要 |
原子層膜により省電力駆動かつ数GHz程度の高周波動作が可能なナノ電気機械デバイス(NEMS)が実現できる。さらに、室温動作可能な量子エミッタとしても注目を集めている。本研究では原子層NEMS非線形ナノ機械振動子をプラットフォームとし、機械的振動のような低周波フォノンと光・電子系とを協奏させた量子マニピュレーションにより機械的揺らぎを量子極限まで抑圧し、線幅の狭い高純度な単一光子の生成とその応用に関する分野を開拓する。
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研究実績の概要 |
本研究では原子層NEMS非線形ナノ機械振動子をプラットフォームとし、機械的振動のような低周波フォノンと光・電子系とを協奏させた量子マニピュレーションにより機械的揺らぎを量子極限まで抑圧し、線幅の狭い高純度な単一光子の生成とその応用に関する分野を開拓することを目的とし本年度は以下について検討を進めた。 1.フォトンと機械共振器のカップリング: 単原子層機械振動子と結合した発光体の発光現象が振動子の運動に与える影響とその制御の可能性を検討した。実験的には低温(4K)環境において光共振器構造を持つ機械的共振器に光子源をおき、その発光と機械振動のカップリングについて検討した。静的環境下だけでなく共振状態で光共振器構造由来の発光増強とピークシフトを確認した。理論的には、発光現象を微視的に記述する量子マスター方程式と微視的Maxwell方程式を、光学的共振器が存在する条件で連立させ光学応答を計算した。さらにその光学応答に基づいて機械振動子に印加される光圧を計算し、発光による反跳力が単原子層機械振動子の運動にどのような影響を与えるかを巨視的な運動方程式により明らかにしてきた。 2.ナノ機械振動子のモード間結合と機械的エネルギー移動の実現:単光子源となるhBNの下層にグラフェンを積層し静電駆動できる構造を検討した。この時、予期せず層間相互作用に起因すると思われる機械的な共振においてモード分裂および分裂したモード間でのエネルギー移動を見出した。また二つの弱く結合したナノ機械共振器間のエネルギー交換に起因する現象を観測した。さらに、積層デバイスで重要となる面内・面外熱(フォノン)伝導を明らかにしてきた。層間の相互作用がフォノンの伝導にどのように影響を与えているかを積層角の観点から論ずるため、量子エミッタとしても注目されているh-BNとグラフェンの層間熱コンダクタンスを計測した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では原子層NEMS非線形ナノ機械振動子を用い機械的振動のような低周波フォノンと光・電子系とを協奏させた量子マニピュレーションにより機械的揺らぎを量子極限まで抑圧し、線幅の狭い高純度な単一光子の生成とその応用に関する分野を開拓することを目的としている。 フォトンと機械共振器のカップリングに関する実験的研究に関しては試料構造の検討を完了し具体的な測定に取り掛かっている。また、単光子中心生成に関しても走査型電子顕微鏡(大気導入可能)を用いた電子線による形成を行った。理論的側面からは単原子層に存在する欠陥や量子ドットの発光の記述に先立ち、単原子層に面状の発光体が存在する場合に、発光が光学的共振器の効果によって単原子層機械振動子の振動モードにどのような影響を与えるかを計算した。その結果、機械振動子の固有振動数をシフトさせる光ばね効果が有意に現れることが明らかになった。これは光共振器効果により発光体の発光モードと機械的振動モードが結合した結果であり、発光による光ばね効果の存在を初めて指摘したものである。 ナノ機械共振器の結合とシステム化による機械的振動モードの冷却へ向け、ナノ機械振動子のモード間結合と機械的エネルギー移動を検討し、機械的振動の抑圧現象などを実現している。さらに、原子層の積層角度と層間のフォノン伝導の関係を明らかにするため、基板上のグラフェンをジュール加熱し、直上のh-BNの温度をラマン分光法で計測することで層間の熱コンダクタンスを調べた。積層角度18度において熱コンダクタンスが10^7 W/m^2 Kとなり、理論から予測される値より一桁小さい結果となった。これは層間の不純物による散乱が原因であると考えられる。 上記の結果からほぼ計画通り順調に進捗していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
機械的揺らぎを量子極限まで抑圧し、線幅の狭い高純度な単一光子の生成するためにナノ機械共振器の結合とシステム化による機械的振動モードの冷却と発光中心生成について引き続き実験的な側面から検討を進める。さらに、理論的な側面からは面状の発光体を仮定して行った計算を欠陥や量子ドットの場合に適用し、発光による反跳効果が単一光子源としての性能にどのような影響を与えるかを明らかにしていく。また機械振動子の振動が発光体の線幅に与える影響を発光体の格子振動と機械振動子の振動の結合を取り扱うことにより評価する。このことにより単一光子源と機械的共振モードを結合させた場合の揺らぎ抑圧の度合いと量子エミッタの単一光子源としての純度の関係を明らかにし、実験結果の解析に資する。 hBNカラーセンター種類と歪みの効果の理解を促進させるため、グラフェンと積層するなどし、静的な歪を定量的に印加可能な試料を作製し発光線幅と歪との関係を明らかにする。さらに、2次元原子層薄膜内に制御良く歪みを印加する転写技術を利用し、歪みとフォノン伝導の関係も明らかにする。歪みの動的制御に資するため、ダイヤモンド中のNVセンターを利用した面内歪み計測手法の開発も同時にすすめる。
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