研究課題/領域番号 |
21K18195
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研究種目 |
挑戦的研究(開拓)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分29:応用物理物性およびその関連分野
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
三宮 工 東京工業大学, 物質理工学院, 准教授 (60610152)
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研究分担者 |
石井 あゆみ 帝京科学大学, 生命環境学部, 准教授 (70406833)
秋葉 圭一郎 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 先端機能材料研究部, 主任研究員 (80712538)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
25,870千円 (直接経費: 19,900千円、間接経費: 5,970千円)
2023年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2022年度: 10,530千円 (直接経費: 8,100千円、間接経費: 2,430千円)
2021年度: 10,140千円 (直接経費: 7,800千円、間接経費: 2,340千円)
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キーワード | 電子顕微鏡 / カソードルミネセンス / 時間相関 |
研究開始時の研究の概要 |
蛍光寿命顕微鏡においては、光の回折限界に起因して、分子・原子レベルでの機能が重要となる100nm以下の情報が得られない。最近の超解像法等によって分解能の向上は試みられているものの、数十nmが限界である。本研究では、光子ー光子相関および電子ー光子相関測定という全く新しい計測手法により、蛍光寿命顕微鏡による回折限界を打破する。この手法では、電子プローブの空間分解能で測定可能であり、既存の光による寿命顕微鏡の分解能をはるかにしのぐ。高い空間分解能を生かした透過電子顕微鏡ベースの計測によりナノ構造の同時計測・直接対比も可能となる。
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研究実績の概要 |
蛍光寿命顕微鏡においては、光の回折限界に起因して、分子・原子レベルでの機能が重要となる100nm以下の情報が得られない。最近の超解像法等によって分解能の向上は試みられているものの、数十nmが限界である。本研究では、電子線励起発光(カソードルミネセンス、CL)をベースに光子ー光子相関および電子ー光子相関測定という全く新しい計測手法により、蛍光寿命顕微鏡による回折限界を打破する。この手法では、電子プローブの空間分解能で測定可能であり、既存の光による寿命顕微鏡の分解能をはるかにしのぐ。高い空間分解能を生かした透過電子顕微鏡ベースの計測によりナノ構造の同時計測・直接対比も可能となる。 このうち、光子―光子相関に関しては、マッピングシステムを用いた応用計測を実施した。具体的CsPbBr系(CPB)金属ハライドペロブスカイトの解析やInGaNの計測を実施した。CPBでは、4:1:6の組成では発光が強いことが知られているが、その原因には諸説あり、本研究で確立したナノスケール発光寿命マッピングとスペクトルマッピングを用いて、異なる方法で作製された粉末試料と単結晶試料の解析を実施した。その結果、発光寿命や発光分布に違いが見られ、フォトルミネセンス(PL)計測では得られなかった違いを確認することができた。また、CLの2次の光子相関で得られるフォトンバンチング曲線の理論による定式化を理論家との共同研究で実施した。 電子―光子相関計測においては、上述のCPBを用いたシンチレータの開発に成功した。CPBのCLにおける発光寿命は、nsオーダで、既存の検出器よりも一桁以上高速であることから、超高速電子検出器への応用が期待できる。また、電子―光子相関における検出信号の定式化を行い、得られる信号の解釈、摘出可能なパラメータを検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
光子―光子相関については、マッピングが可能なシステムの開発がほぼ応用できる状態になっており、すでにCPBのマッピングなど半導体の解析が進められている。また、理論的な考察からは、2次の相関における光子バンチングの本質的な意味が明らかになってきた。この理論解析の論文も投稿済みである。 電子―光子相関については、電子検出が稼働すること、さらにマッピングが可能なことも確認できており、装置としては、おおよその形がすでに完成してきている。電子―光子相関の検出信号の定式化を行い、得られる信号の解釈、摘出可能なパラメータを検討により、もつれにかかわる重要なパラメタが抽出できることが明らかになった。これらの結果をまとめた論文を投稿済みである。 いずれのテーマも想定よりも前倒してすすめられており、関連内容の成果について速報として多くの学会発表ができている。また、既に国内出願していた電子―光子相関に関する特許は、海外むけのPCT出願の手続きが進められた。
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今後の研究の推進方策 |
・光子―光子相関 マッピングシステムを用いた半導体応用を引き続き実施する。すでに着手しているCsPbBr系(CPB)金属ハライドペロブスカイトの解析を論文化する。また、現状では室温観察しか実施できていないが、フォノンの影響を下げるための低温観察など発光寿命解析に重要となるアプローチをすすめていく。また、半導体のようなインコヒーレントな発光だけでなく、表面プラズモンや遷移放射、チェレンコフ光、スミスパーセル放射などコヒーレントな発光の解析も実施する。コヒーレントな発光の多くは、fsオーダーの寿命の高速発光であり、既存の検出器で発光寿命解析は困難であるが、相関の絶対値を吟味することで、コヒーレント発光の光子の特性を評価することができる。
・電子―光子相関 上述のCPB検出器よりもさらに高速なコヒーレント発光の検出器の利用も検討する。コヒーレント発光の寿命はfsオーダーであることから、これまでにない超高速電子検出器が原理的に可能である。検出器側をコヒーレント発光とすることで、発光から電子検出まで系全体のコヒーレンスを確保することも期待でき、コヒーレンスを利用した新たな計測への発展も可能であると考えられる。
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