研究課題/領域番号 |
21K18196
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研究種目 |
挑戦的研究(開拓)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分29:応用物理物性およびその関連分野
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研究機関 | 一般財団法人ファインセラミックスセンター |
研究代表者 |
小林 俊介 一般財団法人ファインセラミックスセンター, その他部局等, 主任研究員 (60714623)
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研究分担者 |
穴田 智史 一般財団法人ファインセラミックスセンター, その他部局等, 上級研究員 (40772380)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
26,000千円 (直接経費: 20,000千円、間接経費: 6,000千円)
2023年度: 8,320千円 (直接経費: 6,400千円、間接経費: 1,920千円)
2022年度: 8,970千円 (直接経費: 6,900千円、間接経費: 2,070千円)
2021年度: 8,710千円 (直接経費: 6,700千円、間接経費: 2,010千円)
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キーワード | 走査透過電子顕微鏡 / 情報科学 / 計測 / エネルギー関連材料 / 触媒 / 電池 / 欠陥 / 走査型透過電子顕微鏡 / 計測技術 / 画像処理技術 / 界面 |
研究開始時の研究の概要 |
次世代エネルギー関連の材料設計において、平均的な結晶構造だけではなく、界面や表面での構造緩和に起因する僅かな原子配列変化の制御が必要不可欠となりつつある。その為には、僅か数ナノメートル以下の領域で原子配列を高精度に計測する技術を実現させる必要がある。本研究では走査型透過電子顕微鏡法を用いた高精度画像取得・解析技術(電子顕微鏡学)と機械学習などを用いた画像処理技術(情報科学)を融合し、既存の計測精度を超えた、実空間における超精密原子位置計測技術の構築を目指す。
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研究実績の概要 |
触媒や電池材料などのエネルギー関連材料では界面や表面などの局所領域において、極めて僅かな原子変位に起因して物性が発現する。すなわち、この局所領域における原子変位を高精度に計測する手法が物性発現の起源を理解するためには必要となる。実空間上で局所領域での僅かな原子変位の計測技術を走査透過電子顕微鏡(Scanning transmission electron microscopy: STEM)法により確立することが本研究の目的である。観察される輝点が原子位置に対応するHAADF法を主としたSTEM法を用いた高精度画像取得・解析技術(電子顕微鏡学)と機械学習アルゴリズムなどを用いた画像処理技術を融合し、既存計測技術の精度を超えた実空間における超精密原子位置計測に取り組む。 既存設備を用いて網羅的に計測条件を検討することで原子位置精度を向上させた。そして、PtおよびPt3Co単結晶を用いて格子定数差の測定精度を検証した。その結果、像取得条件を精査することでHAADF STEM像からPtとPt3Co単結晶の格子定数差を良い精度で測定できることを確認した。その応用計測として固体高分子型燃料電池(PEFC)に用いられるPt触媒粒子の計測を実施し、表面におけるPt-Pt原子間距離が粒子内部と異なることを確認した。 また、原子位置精度を向上させるために、機械学習アルゴリズムを用いたノイズ除去などの画像処理を得られたHAADF STEM像への適応を検証した。機械学習アルゴリズムを用いたノイズ除去により、非常に明瞭な画像を得ることができる。一方で、画像再構成により原子変位が既定の位置から僅かにずれてしまう。現在、この機械学習アルゴリズムを用いた画像処理において各種パラメータを精査し画像処理にともなうアーティファクトが生じない条件を詳細に検討している。そして、画像の再構築により実験像を超える原子位置精度を達成しうるアルゴリズムの構築を目指していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度、網羅的に検証したSTEM法による原子位置高精度計測条件をPtおよびPt3Co単結晶に対して適用し計測精度を検証した。まず、PtおよびPt3Co単結晶から高角度散乱環状暗視野(HAADF)像を取得し、Pt単結晶試料のPt-Pt原子間距離を基準値とてPt3Co単結晶試料との格子定数差を求めた。その結果、Pt単結晶試料とPt3Co単結晶試料ではXRDにより計測したPt-Pt原子間距離の差と非常に良い一致を示した。この結果を踏まえて、実際の固体高分子型燃料電池(PEFC)に用いられる触媒ナノ粒子表面における精密原子構造解析を実施した。Pt触媒粒子からHAADF STEM像を取得し、Pt-Pt原子間距離を計測した。その結果、表面に対して平行方向の原子間距離は粒子内部・表面において大きく変化しない。一方、鉛直方向は表面近傍においてPt-Pt原子間距離が変化し、さらに単原子層ステップ付近ではより大きく変化することを実空間計測で明らかにした。 実験的に取得したHAADF STEM像の原子位置精度を向上させるために、機械学習アルゴリズムを用いた画像処理(画像再構成)を検証した。機械学習アルゴリズムを用いた画像再構成により、より明瞭な画像を得ることができる。特にSNの低い画像の原子位置精度を向上させることが可能であることを確認した。一方で、画像再構成において、元の画像に含まれている原子変位が既定位置から僅かにずれてしまうアーティファクトが生じることを確認した。 実験の側面においては当初の予定通り進捗している。一方、機械学習アルゴリズムを用いた画像再構成による原子位置計測においては解決すべき課題がある。そのため、当初の予定より進捗状況はやや遅れているとした。
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今後の研究の推進方策 |
実験による像取得と取得したSTEM像の画像再構成を実施し、既存計測技術の精度を超えた実空間における超精密原子位置計測に取り組む。2022年度はPEFCに用いられるPt触媒粒子表面のPt-Pt原子間距離計測の解析を実施した。2023年度はPt3Co粒子など合金触媒粒子表面に形成されるPt層(Ptスキン層)のPt-Pt原子間距離を実測し、合金化にともなう変化を実空間で検証する。また、機械学習アルゴリズムにおける各種パラメータを精査し、アーティファクトによる原子位置の変化量が解析精度の許容範囲以下となる条件を検討していく。
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