研究課題/領域番号 |
21K18198
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研究種目 |
挑戦的研究(開拓)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分30:応用物理工学およびその関連分野
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
井上 修一郎 日本大学, 理工学部, 教授 (30307798)
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研究分担者 |
行方 直人 日本大学, 理工学部, 准教授 (20453912)
高田 則雄 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (50415212)
大貫 進一郎 日本大学, 理工学部, 教授 (80386002)
岸本 誠也 日本大学, 理工学部, 助教 (90843053)
佐甲 徳栄 日本大学, 理工学部, 教授 (60361565)
小林 伸彰 日本大学, 理工学部, 准教授 (50611422)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
25,870千円 (直接経費: 19,900千円、間接経費: 5,970千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2022年度: 10,010千円 (直接経費: 7,700千円、間接経費: 2,310千円)
2021年度: 13,520千円 (直接経費: 10,400千円、間接経費: 3,120千円)
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キーワード | 分散補償 / 信号検出感度 / 断層撮影 / 量子パルスゲート / 主モード選択率 / 2次元フーリエ変換 / FDTD法 / 時間分解測定 / 生体断層撮影 / 単一光子検出 / 周波数上方変換 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、生体試料にフェムト秒微弱光パルスを照射し、生体内部からの反射光パルスを時間分解測定することにより生体試料の断層撮影を行う。その際、生体深部で反射して戻ってきた光パルスと同時刻に到来する生体内部で多重反射(散乱)して戻ってきた光パルス(背景雑音)を量子パルスゲートにより除去する。これにより、生体深部から反射して戻ってくる単一光子レベルの光パルスを高い S/N 比で検出することが可能となる。この断層撮影技術を脳血管構造の3次元計測に応用し、極限微弱光による脳深部の「観察」を実現することで、光遺伝学を用いた脳活動「操作」の適用範囲を拡大できることを実証する。
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研究実績の概要 |
今年度は、昨年度に構築したtime-of-flight(TOF)測定系を改良し、マウス固定脳を観察対象として断層撮影における性能評価を行った。具体的には、分散補償ファイバによりプローブ及びポンプ光パルスのパルス広がりを補償した。これにより、昨年度1ピコ秒あったパルス幅を530フェムト秒まで狭めることが出来た。また、光学系の制御に使用しているFPGAのメモリを32MBに増設することで、512×512ピクセルの二次元(2D)断層画像を高速に取得することができた。 改良後のTOF測定系を用いてマウス固定脳の断層撮影を行った。その結果、深さ方向の分解能66μmで大脳皮質から脳梁・海馬まで鮮明な断層画像(A-Bスキャン画像)が得られた。撮影深度は2~3mmに達している。プローブ光パルスの波長は1556nmであるが、波長1.7μmの光源を使用した光コヒーレンストモグラフィ(OCT)と同じレベルの撮影深度が得られた。また、マウス固定脳表皮から2mm程度までの任意の深さにおいて鮮明な2D断層画像を得ることができた。TOF測定系の信号検出感度は111dBであり、OCTに比べて10dB以上高い感度を達成できた。さらに、実験条件(光パルスの時間波形、周波数上方変換効率など)を考慮した量子パルスゲートの主モード選択率が0.99(1の場合、最大のS/N比が得られる)であることを理論計算により確認した。一方、生体を模擬した複数の散乱体から直接反射して戻ってくる信号光パルスを多重散乱して同時刻に戻ってくる光パルス(雑音)から分離する手法を時間領域有限差分法と2次元フーリエ変換を用いて開発した。これにより、設定した角度以上で多重散乱して戻ってくる光パルスを除去することができた。更に、マウス脳細胞位置に基づく3次元解析モデルを作成し、FDTD法により光パルス散乱問題が解析可能であることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度、time-of-flight (TOF) 測定系を構築し、マウス固定脳の断層撮影が可能であることを確認した。その際、深さ方向分解能と撮影速度の改善が必要であった。今年度は、分散補償によるパルス幅の狭窄化により、深さ方法分解能を改善することができた。また、光学系を制御する Field Programable Gate Array (FPGA) のメモリーを増設することで、二次元断層画像を高速に取得することができた。さらに、実験条件から量子パルスゲートを評価するためのモード選択率を理論的に計算する数値計算手法を確立することができた。一方、試料内部で一回反射して戻ってくる信号光パルスと同時刻に戻ってくる多重散乱光パルスを分離して信号光パルスの時間波形を抽出する FDTD 法による計算機シミュレーション手法も開発できた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに開発した time-of-flight (TOF) 測定系では、1台のモードロックフェムト秒ファイバレーザーからプローブ光パルスとポンプ光パルスを切り出しているため、測定に十分なパルス光出力を得ることができなかった。そのため、周波数上方変換効率も 10 % 程度であった。来年度は出力の大きなフェムト秒ファイバレーザー(出力 ~ 500 mW、パルス幅 ~ 50 フェムト秒)を導入することにより、この問題を解決する。また、このファイバレーザーを使用すると 100 フェムト秒程度のパルス幅のプローブ及びポンプ光パルスを生成可能と考えられる。これにより、光コヒーレンストモグラフィー(OCT) と同等の深さ方向分解能 ~ 10μm を達成できる。さらに、50 % 以上の周波数上方変換効率と 140 dB 程度の信号検出感度が期待できる。一方、計算機シミュレーションによる反射光パルスの時間波形予測に関しては、これまでに開発したシミュレーション手法をマウス脳の計算モデルに適用し、量子パルスゲートに最適な主モードを決定する。この結果をもとに今年度導入したフェムト秒パルス整形装置(性能評価済み)によりポンプ光パルスの波形整形を行い、量子パルスゲートの性能評価を行う。
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