研究課題/領域番号 |
21K18212
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研究種目 |
挑戦的研究(開拓)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分36:無機材料化学、エネルギー関連化学およびその関連分野
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
入江 寛 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (70334349)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
26,000千円 (直接経費: 20,000千円、間接経費: 6,000千円)
2026年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2025年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2024年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2023年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2022年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2021年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
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キーワード | 水素製造 / 鹹水分解 / 太陽光 / 光触媒 / 赤色光 |
研究開始時の研究の概要 |
次世代のエネルギー資源として注目されている水素を、恒久的に地球上に降り注ぐクリーンな太陽光エネルギーを利用して鹹水から製造すべく検討を行う。地球上に存在するほとんどの水は海水であり、さらに太陽光が強い地域での水の確保は困難であるため、鹹水(代表例は海水、塩化物イオンを含む水)の使用が不可欠と考えられる。そこで本研究では、太陽光の有効利用の観点から可視光全域を利用できる光触媒を用い、かつ海水利用を想定した塩化物イオン共存下で水を完全分解することによって水素、酸素を量論比で発生させ、エネルギーとして水素を獲得できる技術を検討する。
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研究実績の概要 |
次世代のエネルギー資源として注目されている水素を、恒久的に地球上に降り注ぐクリーンな太陽光エネルギーを利用して鹹水から製造すべく検討を行っている。地球上に存在するほとんどの水は海水であり、さらに太陽光が強い地域での水の確保は困難であるため、鹹水(代表例は海水、塩化物イオンを含む水)の使用が不可欠と考えられる。そこで本研究では、太陽光の有効利用の観点から可視光全域を利用できる光触媒を用い、かつ海水利用を想定した塩化物イオン共存下で水を完全分解することによって水素、酸素を量論比で発生させ、エネルギーとして水素を獲得できる技術の検討を行った。具体的には、塩化物イオン共存下での水分解では塩化物イオンと水の酸化反応が競争反応となるため、塩化物イオンでなく選択的に水を酸化し酸素を発生させる助触媒の探索、創出を試みた。 令和5年度は、すでに見出している酸化ルテニウム酸素発生助触媒を種々の光触媒材料に担持し、水の完全分解を試みた。ある光触媒材料では擬似海水(塩化ナトリウム3 wt%添加した蒸留水)を完全分解(水素、酸素が定量比で発生)でき、別の光触媒材料では完全分解できないといった現象が観察された。このことから、酸素発生助触媒だけでは海水の分解を完全には達成できないと考え、海水分解に向けて塩化ナトリウムが光触媒材料に与える影響を再検討した。また、水素発生助触媒としての白金も必ずしも塩化ナトリウムの影響を受けるわけでないことが明らかとなり、海水分解に向けた新たな視点が加わったと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度は、令和3, 4年度見出した塩化ナトリウム(NaCl、ナトリウムイオン(Na+)、塩化物イオン(Cl-))の影響を受けない酸化ルテニウム(RuO2)酸素発生助触媒を用いた検討を行った。 ・種々の光触媒材料(タンタル酸銀(AgTaO3)やチタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、タンタル酸ビスマス(BiTaO4))を作製し、それらに含侵法にてRuO2を担持した(BiTaO4/RuO2, SrTiO3/RuO2, AgTaO3/RuO2)。BiTaO4/RuO2では水を完全分解できす、SrTiO3/RuO2では海水を完全分解できず、AgTaO3/RuO2では海水を完全分解できた。 ・犠牲剤を用いた水の半反応による水素(H2)発生では白金(Pt)担持SrTiO3 (Pt/SrTiO3)ではNaClあり(擬似海水)の場合、なしに比べて大きくH2発生量が低下したもの、Pt担持BiTaO4 (Pt/BiTaO4)ではNaClあり、なしにかかわらず同じH2発生量であった。 以上の結果から、光触媒材料によってNaClの影響の有無があること、H2発生助触媒であるPtが必ずしもNaClの影響を受けているわけではないことが明らかとなった。海水分解に向けてNaClがH2発生反応に与える影響と共にNaCl光触媒材料に与える影響の再検討を開始した。 検討を進めた結果、光触媒材料によってはNaClの影響を受けないものも存在することが分かり、海水分解に向けた新たな視点が加わったと考えている。以上からおおむね順調に進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
・R5年度、NaCl存在下でもプロトンを還元し水素(H2)を発生できるCrOx/Pt,Au/ZnRh2O4、すなわちH2助触媒Pt, AuをCrOxで保護したCrOx/Pt,Auを担持したロジウム酸亜鉛(ZnRh2O4)、とNaClの存在下でも水を選択的に酸化し酸素(O2)を発生できる酸化ルテニウム担持バナジン酸ビスマス(RuO2/BiVO4)を複合化したCrOx/Pt,Au/ZnRh2O4/Au/BiVO4/RuO2の疑似海水での分解実験を行なったが海水分解できなかった。両者を接合しているAuがNaClの影響を受けていると考えられるため、接合に寄与するAuもCrOxによる保護の検討を今後も進めていく。 ・RuO2がNaCl存在下でも水を選択的に酸化できる理由を第一原理計算の手法を用いて解明を試みている。Cl-の吸着で説明ができそうなところまで進んでいるため、引き続き検討する。同様の考察が可能か、Pt,Au/ZnRh2O4, CrOx/Pt,Au/ZnRh2O4で比較検討を行う。 ・BiTaO4光触媒がNaClの影響を受けずにH2を発生できることが明らかとなったため、まずは光触媒材料を構成する元素に注目しBi, Taから構成されるタンタル酸ビスマス(Bi3TaO7, Bi7Ta3O18)の疑似海水中での分解を試みる。
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