研究課題/領域番号 |
21K18217
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研究種目 |
挑戦的研究(開拓)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分38:農芸化学およびその関連分野
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
萩原 大祐 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (20612203)
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研究分担者 |
一木 珠樹 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 遺伝資源研究センター, 上級研究員 (70355501)
高橋 弘喜 千葉大学, 真菌医学研究センター, 准教授 (60548460)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
26,000千円 (直接経費: 20,000千円、間接経費: 6,000千円)
2024年度: 7,280千円 (直接経費: 5,600千円、間接経費: 1,680千円)
2023年度: 7,280千円 (直接経費: 5,600千円、間接経費: 1,680千円)
2022年度: 5,720千円 (直接経費: 4,400千円、間接経費: 1,320千円)
2021年度: 5,720千円 (直接経費: 4,400千円、間接経費: 1,320千円)
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キーワード | マイコウイルス / 担子菌 / 子嚢菌 / キノコ / 糸状菌 / ウイルス感染 / 抗ウイルス化合物 / 相互作用 / FLDS法 / ゲノミクス解析 / 宿主特異性 / 大規模探索 / 共進化 / ウイルス探索 / 糸状菌育種 |
研究開始時の研究の概要 |
多くの糸状菌種においてマイコウイルス感染が報告されている。ウイルス感染が、宿主糸状菌の生育や病原性など多様な特性に影響を及ぼすとの報告があるが、統一的な理解は得られていない。糸状菌が健康、食品、産業など様々な分野に関連するため、マイコウイルスの潜在的な影響を理解し、社会的に共有することが極めて重要である。本研究では、前例のない規模の多様な属、科、門にわたる糸状菌を対象としてウイルス探索を実施し、ウイルスが宿主へ及ぼす影響を体系的に比較解析する。さらに、ウイルスの人為的な導入により、宿主機能を改変する技術の確立を目指し、既存の育種研究にブレークスルーをもたらす技術の開発に挑戦する。
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研究実績の概要 |
野外から子実体キノコを収集し、ポテトデキストロース寒天培地で分離培養に成功した担子菌株からウイルスを探索した。51株を液体培地で培養し、得られた菌糸体からdsRNAを抽出してアガロースゲル電気泳動し、ウイルス感染の可能性がある株を5株得た。FLDS法により対象のdsRNAの配列解析を実施すると、Agrocybe praecox orthocurvulavirus 1、Agrocybe praecox tulasvirus 1、Leucocoprinus alphapartitivirus 1、Coprinopsis endornavirus 1、Flammulina betapartitivirus 1、Flammulina alphapartitivirus 1、Flammulina alphapartitivirus 2の7種のウイルス配列が得られた。分類の特徴から推測して、5種がdsRNAウイルス、1種が(+)ssRNAウイルス、残りの1種が(-)ssRNAウイルスと考えられる。いずれもこれまでに報告のないウイルスであった。 また、子嚢菌類キノコを対象としたウイルス探索も実施した。野外から収集した子実体から分離に成功した子嚢菌57株の培養菌体よりdsRNAを抽出し、アガロースゲル電気泳動すると、4株がウイルス由来と推測されるバンドを示した。FLDS解析により、電気泳動でバンドを示さなかった株からもウイルス配列が検出され、計7株のウイルス配列が得られた。2種がdsRNAウイルス、5種が(+)ssRNAウイルスであると考えられ、いずれも未報告のウイルスであり、これらの宿主菌種における初めてのウイルス感染例となった。 これらの非栽培種のキノコを対象としたウイルス探索により、環境生態系におけるマイコウイルスの多様性を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに報告例のない菌種も含めてウイルス感染の実態を明らかにしており、網羅的なマイコウイルス探索を着実に実施できている。菌類からの報告例がほとんど無い系統のウイルス配列も得られており、マイコウイルスの多様性解明に貢献している。近年、環境メタデータからウイルス配列を網羅的に解析する研究が進展しているが、この手法では宿主を特定できないことから表層的な配列探索に留まり、宿主との関係性や進化、ウイルスの機能性の議論に及ばない。一方、本課題では着実に分離菌株対象としたウイルス探索を積み重ねており、これらの生物材料はマイコウイルスの生態機能研究の発展に寄与する。
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今後の研究の推進方策 |
前年度までに確立した効率的なウイルス除去法を活用して、複数種を対象としてウイルス除去株を取得する。得られたウイルス除去株と感染株との比較から、宿主に対するウイルスの機能性を網羅的に評価する。宿主菌やウイルスの種を越えてその表現型を比較することで、ウイルス機能の普遍性と多様性を明らかにすることを目指す。
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