研究課題/領域番号 |
21K18231
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研究種目 |
挑戦的研究(開拓)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分43:分子レベルから細胞レベルの生物学およびその関連分野
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
吉種 光 公益財団法人東京都医学総合研究所, 基礎医科学研究分野, 副参事研究員 (70569920)
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研究分担者 |
松尾 拓哉 名古屋大学, 遺伝子実験施設, 講師 (00452201)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
26,000千円 (直接経費: 20,000千円、間接経費: 6,000千円)
2023年度: 7,800千円 (直接経費: 6,000千円、間接経費: 1,800千円)
2022年度: 7,800千円 (直接経費: 6,000千円、間接経費: 1,800千円)
2021年度: 10,400千円 (直接経費: 8,000千円、間接経費: 2,400千円)
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キーワード | 概日時計 / circadian rhythm / 生化学 / 質量分析 / 翻訳後修飾 / リン酸化 / カサノリ / クラミドモナス / 概日リズム |
研究開始時の研究の概要 |
概日時計の自律振動メカニズムとして時計遺伝子の転写・翻訳を介したフィードバック制御の重要性が提唱されてきた。しかし、これらは真の時計振動体からの機能出力リズム、つまり「時計の針」にすぎないのではないだろうか。本挑戦的開拓研究では、分子間相互作用・翻訳後修飾・酵素活性・立体構造変化などのタンパク質ダイナミクスが真核生物においても時計振動子(時計のクオーツ)として機能する、という予備的知見に基づき、クオーツの実体の同定と自律振動原理の理解を目指す。
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研究実績の概要 |
様々な生理現象には約24時間周期のリズム性が観察され、これは概日リズム(circadian rhythm)と呼ばれる。このリズムを駆動する分子機構は概日時計と呼ばれ、その自律振動メカニズムとして時計遺伝子の転写・翻訳を介したフィードバック制御の重要性が提唱されてきた。しかし、これらは真の時計振動体からの機能出力リズム、つまり「時計の針」にすぎないのではないだろうか。本研究では、分子間相互作用・翻訳後修飾・酵素活性・立体構造変化などのタンパク質ダイナミクスが真核生物においても時計振動子(時計のクオーツ)として機能する、という予備的知見に基づき、クオーツの実体の同定と自律振動原理の理解を目指している。様々な生物種における「概日時計クオーツ」の実体解明を目指し、初年度に引き続きこれまで吉種が推進してきた哺乳類概日時計クオーツの研究を追求した。具体的には、時計タンパク質複合体に含まれる新規因子を同定し、その機能を解析した。酵素活性依存的に翻訳後修飾を介して転写活性を抑制するメカニズムを明らかにすることができた。これと並行して、様々な生物種における概日時計クオーツの実体を追求した。具体的にはクラミドモナスの主要な時計タンパク質にFlagタグを付加して相互作用因子を探索した。さらに、クラミドモナス時計タンパク質ROC15に関する研究を展開し、網羅的な変異体スクリーニングにより、ROC15のリン酸化修飾に関与する遺伝子を同定した。当該遺伝子は環境(光刺激)に応答して起こるROC15のリン酸化に関わることを明らかにし、その成果はPLOS Genet誌に掲載された。さらに、この遺伝子の変異体を利用することによりROC15の概日的なリン酸化に焦点を当てた解析が可能となり、キナーゼ阻害剤ライブラリのスクリーニングの結果、ROC15の概日的なリン酸化を強力に抑制する阻害剤を同定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究計画では、分子間相互作用・翻訳後修飾・酵素活性・立体構造変化などのタンパク質ダイナミクスが真核生物においても時計振動子(時計のクオーツ)として機能する、という予備的知見に基づき、クオーツの実体の同定と自律振動原理の理解を目指している。研究実績の概要に記載したように、これまでに計画通りの実験が遂行され順調な成果を上げている。これに加えて特筆するべきこととして、哺乳類概日時計クオーツ研究において、新規時計タンパク質を同定することができた。当該成果をよりインパクト高くアウトプットするために研究をさらに加速したい。
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今後の研究の推進方策 |
地球上で生活する多くの生物は、1日の中でダイナミックに変動する環境サイクルに適応するために概日時計(circadian clock)を獲得した。2017年ノーベル生理学・医学賞は時計遺伝子Periodの発見と概日時計を生み出す機構「時計遺伝子の転写・翻訳を介したフィードバック制御」の提唱である。行動リズムなど時計からのアウトプットを指標にした変異体スクリーニングから次々と“時計遺伝子”が同定され、転写フィードバック制御が時計振動の本質であると考えられるに至った。しかし我々は最近、カサノリの除核実験系を再構築し、転写がない条件においても明瞭な光合成リズムを測定することに成功した(未発表)。つまり、従来の定説である「核を必要とする転写フィードバック仮説」を覆す決定的な証拠を掴んだのである。我々は、転写リズムは機能出力として時計の針の役割を担っているだけであり、細胞質に存在する未知なる時計振動子がクオーツとして機能しているという大胆な作業仮説をたて、これを検証する。 これまで、哺乳類、シアノバクテリア、クラミドモナスなどの各種時計モデル生物において、時計タンパク質複合体の生化学的な解析を展開してきた。最終年度も引き続き、様々なモデル生物を駆使して時計タンパク質の翻訳後修飾の状態や相互作用因子などのタンパク質ダイナミクスの時刻変動を定量的に解析する。特に、哺乳類で同定した新規時計タンパク質の解析を当初の計画を超えて解析を進めたい。これら相互作用リズムや翻訳後修飾リズムが生み出される分子メカニズムを追求し、生物種を超えた自律振動の共通原理を理解する。
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