研究課題/領域番号 |
21K18240
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研究種目 |
挑戦的研究(開拓)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分45:個体レベルから集団レベルの生物学と人類学およびその関連分野
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
三浦 徹 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (00332594)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
26,000千円 (直接経費: 20,000千円、間接経費: 6,000千円)
2025年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2024年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2023年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2022年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2021年度: 9,100千円 (直接経費: 7,000千円、間接経費: 2,100千円)
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キーワード | 珍無腸動物 / 雄性生殖器 / パターニング遺伝子 / 突出部委 / 付属肢 / 無性生殖 / トランスクリプトーム / 分裂 / 突出部位 / 縦分裂 / 珍無腸動物門 / 左右相称動物 / 交尾器 / 繁殖様式 / 有性生殖 / 体内受精 |
研究開始時の研究の概要 |
動物の交尾器の発生には付属肢の発生に必要なパターニング遺伝子が関与していることが知られている。また、突出部位を発生させるDistal-less遺伝子も交尾器と付属肢の発生に用いられている。一方、動物界全体では、付属肢を持たない動物においても、雄性生殖器を有するものが多数知られる。これらから左右相称動物の共通祖先で既に交尾器を有した可能性も考えられる。交尾器の起源が付属肢よりも古ければ、交尾器の発生機構が、付属肢発生に転用された可能性もある。本研究では、最も古い左右相称動物とされる珍無腸動物を対象として、交尾器の分子発生機構および進化発生学的機構を解明することで、この仮説を検証する。
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研究実績の概要 |
本研究課題は、左右相称動物の起源に関係すると考えられている無腸動物の繁殖様式について、交尾器形成の機構に着目して進化発生学的研究を展開している。潮間帯から潮下帯において生息するミサキムチョウウズムシを対象として、生殖腺と雄性交尾器の形成について詳細な組織観察を行っている。これまでに、卵巣組織は体の後半部の上皮近傍に、精巣組織は体の前半部の上皮近傍に形成されることが明らかとなり、前半部の腹側に雄性交尾器が形成されることが明らかとなった。また、雌性生殖器に比して雄性生殖器の方が先に発達する雄性先熟であることも確認された。また、トランスクリプトーム解析データから主要な発生制御因子の遺伝子カタログを作成しており、リアルタイム定量PCRに基づいて、付属肢形成遺伝子などの主要な発生制御因子の遺伝子発現解析を進行している。微小な生物のためサンプル調製に手間取っているが、試行錯誤しながら着実に進めている。また、他の左右相称動物では一般的に見られる遺伝子群が本種では見つからないものがいくつかあり、珍無腸動物門の系統学的位置を考える上でも興味深い結果が得られている。 一方、無腸動物 Convolutriloba longifissura について、体の前後に横分裂を行った後、後半部分のみが正中線にそって縦分裂を行うという特徴的な無性生殖様式をとることが明らかとなっっている。経時観察および組織観察、更にトランスクリプトームに基づくRNA-seq解析により、この縦分裂では、組織学的特徴と、再生による2つの頭部の形成により縦分裂が進行することが示唆された。その他、左右相称動物である環形動物や節足動物の様々な種においても、多様な繁殖様式が明らかとなり、左右相称動物の進化における繁殖パターンの多様化に関する示唆が得られている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ミサキムチョウウズムシの成長に伴う生殖器官の発達についてデータがまとまってきており、組織学的記載についての論文をまとめつつある。同時に、主要な発生制御遺伝子の発現動態について、リアルタイムqPCRのデータが蓄積しつつあり、本研究課題で掲げる仮説の検証は順調に進んでいると言える。その一方で、他種の無腸動物であるConvolutriloba longifissuraの縦分裂のメカニズムについても論文化を進めている。左右相称動物における繁殖様式の進化を考える上では、他の動物門との比較も重要であり、その意味においても、環形動物や節足動物、脊椎動物での繁殖に関わる進化発生学的知見が蓄積しつつあり、当初予定していたよりも幅の広い展開が見られており、今後の展望も期待されている。
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今後の研究の推進方策 |
ミサキムチョウウズムシの交尾器の発達とその分子発生学的基盤については、現在解析を進めている発生制御遺伝子の発現動態について更に詳しく調べ、データを蓄積していき、総合的な考察を目指す。in situ ハイブリダイゼーションや免疫染色などの実験系も確立しつつあるため、個々の遺伝子の詳細な発現部位についても特定されることが期待される。更に、シングルセルRNA-seqなどについても検討を行い、具体的な勝算が得られると期待されればそのような解析も積極的に行っていく。他の動物門等でもデータが蓄積されているため、動物界全体における繁殖様式の進化などに結びつけた考察が得られることを目指す。
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