研究課題/領域番号 |
21K18247
|
研究種目 |
挑戦的研究(開拓)
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分47:薬学およびその関連分野
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
水口 裕之 大阪大学, 大学院薬学研究科, 教授 (50311387)
|
研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
26,000千円 (直接経費: 20,000千円、間接経費: 6,000千円)
2023年度: 9,100千円 (直接経費: 7,000千円、間接経費: 2,100千円)
2022年度: 9,100千円 (直接経費: 7,000千円、間接経費: 2,100千円)
2021年度: 7,800千円 (直接経費: 6,000千円、間接経費: 1,800千円)
|
キーワード | ゲノム編集 / iPS細胞 / オルガノイド / 肝臓 / 腸管 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、ゲノム編集技術とヒトiPS細胞やオルガノイドを用いた細胞分化誘導系を利用して、肝臓と腸管における特定遺伝子のヒトモデルでの表現型解析系の開発を行う。具体的には、1) ヒトiPS細胞やヒト肝臓・腸管オルガノイドにおける高効率両アリルゲノム編集技術の開発を行う。そして、実証例として各種候補遺伝子群をノックアウトさせたヒトiPS細胞やヒト肝臓・腸管オルガノイドを用い、2) 肝癌や肝繊維化に関与する新規疾患関連遺伝子および中胚葉細胞の肝発生における機能解析、3)腸管上皮細胞分化に関わる遺伝子群の機能解析を行い、ヒトモデル表現型解析法としての有用性を実証する。
|
研究実績の概要 |
本研究は、ゲノム編集技術とヒトiPS細胞やオルガノイドを用いた細胞分化誘導系を利用して、特定遺伝子のヒトモデルでの表現型解析系の開発を行うことを目的とする。遺伝子組換えマウスの普及は、個々の遺伝子の機能解明研究に“最終的な答え”を提供し、生命科学研究に決定的な貢献をしてきた。しかしながら、遺伝子組換えマウスを用いた研究成果がヒトに外挿できないことも多く、『種差』の問題があった。そこで本研究では、創薬応用の観点からも重要な組織である肝臓と腸管に焦点をあて、ヒト肝発生や肝幹前駆細胞から肝細胞/胆管上皮細胞への分化選別、ヒト腸管幹細胞から腸管上皮細胞への分化過程に関与する各種分子の機能解明、非アルコール性脂肪肝疾(NASH)関連分子であるMAIP1を実証例として、ヒトモデルでの汎用性の高い表現型解析法を確立する。R5年度は、以下の成果を得た。 1)本研究で確立したゲノム編集技術を用いて、薬物代謝酵素等の様々な分子のノックアウトに成功した。 2)肝幹前駆細胞から肝細胞への分化過程においても、肝星細胞様の細胞からTLL1が産生されることを明らかにした。また、胆管上皮細胞および肝細胞への分化過程におけるTLL1の産生細胞を継時的かつより詳細に特定するために、TLL1の下流にレポーター遺伝子を搭載したヒトiPS細胞株の樹立を行った。 3)ヒトiPS細胞から腸管上皮細胞への分化誘導系やヒト腸管オルガノイドを用いた腸管上皮細胞分化に関わる遺伝子群の機能解析を目的に、用いる培地の最適化を行った。 4)高脂肪高コレステロール食負荷モデルおよびMCD dietによるNASHモデルを用いてMaip1欠損の影響を評価した。さらに、Maip1 floxマウスを樹立し肝臓特異的Maip1 KO系を樹立した。また、前年度に作製済みのMAIP1欠損ヒトiPS細胞由来肝オルガノイドを利用した単層培養系を確立し、ヒト肝細胞への脂質蓄積に対するMAIP1欠損の影響を評価した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
R5年度は以下を実施し、おおむね順調に進展している。 1)本研究で確立したゲノム編集技術を用いて、ヒトiPS細胞やヒトiPS細胞由来肝細胞オルガノイドにおいて、薬物代謝酵素等の様々な分子のノックアウトに成功した。 2)肝幹前駆細胞から肝細胞への分化過程においても、肝星細胞様の細胞からTLL1が産生されることを明らかにし、これが肝細胞分化に抑制的な機能を有していることを示した。また、胆管上皮細胞および肝細胞への分化過程におけるTLL1の産生細胞を継時的かつより詳細に特定するために、TLL1の下流にレポーター遺伝子を搭載したヒトiPS細胞株の樹立を行った。現在、肝細胞や胆管上皮細胞への分化誘導中の各段階において、TLL1陽性細胞をsortingにより分取し、解析を進めている。 3)腸管オルガノイドを単層培養化した場合や、特殊な基材で培養することで腸管機能が上昇することを見出したので、本過程に関与する培地の最適化を行い、どのような因子が腸管機能向上に重要かを解析した。 4)Maip1欠損マウスでは高脂肪高コレステロール食負荷モデルで脂肪肝形成が亢進し、肝障害および線維化マーカーが上昇することを見出した。また、MCD dietによるNASHモデルではMaip1欠損により線維化が亢進することを見出した。一方、floxマウスを作出し、これに8型アデノ随伴ウイルス(AAV8)ベクターを用いて肝臓特異的にCreを発現させることにより肝臓特異的Maip1欠損マウスを作製した。さらに、樹立したMAIP1欠損ヒトiPS細胞由来肝オルガノイドを用いた単層培養を行った結果、脂質蓄積の亢進は起きないことを見出した。
|
今後の研究の推進方策 |
1)ヒトiPS細胞やヒト肝臓・腸管オルガノイドにおける高効率両アリルゲノム編集技術開発: 本研究項目は完了した。 2)ヒトiPS細胞から肝細胞への分化誘導系やヒト肝臓オルガノイドを用いたTLL1および中胚葉細胞の肝発生における機能解析: TLL1レポーター細胞を用いて、肝細胞への分化過程および胆管上皮細胞への分化過程におけるTLL1産生細胞の継時的な同定および解析を行う。これを通して、TLL1や中胚葉系細胞が肝発生にどのような影響を与えるかを明らかにする。 3)ヒトiPS細胞から腸管上皮細胞への分化誘導系やヒト腸管オルガノイドを用いた腸管上皮細胞分化に関わる遺伝子群の機能解析: 引き続き、ヒト腸管オルガノイドにおける腸管機能が向上するメカニズムを解析し、優れたin vitro薬物評価系の開発につなげる。 4)NASH関連マイクロRNA miR-27bの標的遺伝子MAIP1の機能解析: 肝臓特異的Maip1欠損マウスについて、脂質蓄積・炎症・線維化などのNASH関連表現型を評価する。また、MAIP1欠損ヒトiPS細胞由来肝オルガノイドでは樹立過程で脂質代謝の馴化が起きた可能性が疑われたことから、単層培養の開始後にshRNA発現レンチウイルスベクターを用いてMAIP1のノックダウンを行ない、脂質蓄積への影響を評価する。
|