研究課題/領域番号 |
21K18261
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研究種目 |
挑戦的研究(開拓)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分50:腫瘍学およびその関連分野
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
岸 裕幸 富山大学, 学術研究部医学系, 特別研究教授 (60186210)
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研究分担者 |
本園 千尋 熊本大学, ヒトレトロウイルス学共同研究センター, 講師 (10642910)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
26,000千円 (直接経費: 20,000千円、間接経費: 6,000千円)
2023年度: 8,190千円 (直接経費: 6,300千円、間接経費: 1,890千円)
2022年度: 9,230千円 (直接経費: 7,100千円、間接経費: 2,130千円)
2021年度: 8,580千円 (直接経費: 6,600千円、間接経費: 1,980千円)
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キーワード | 主要組織適合抗原 / T細胞受容体 / MR1分子 / HLA非依存的 / MR1 |
研究開始時の研究の概要 |
T細胞抗原受容体(TCR)を用いたTCR-T細胞療法は免疫チェックポイント阻害剤療法を補完する免疫学的がん治療法のひとつとして注目されている。我々は最近、腫瘍浸潤リンパ球中にHLAクラスI分子非依存的に腫瘍細胞を認識するTCRが多数存在することを見出した。本研究では、HLA非依存的TCRの抗原提示分子、抗原およびその腫瘍反応性を明らかにし、TCR-T細胞療法への応用を図る。これまでHLA非依存的なTCR-T細胞療法は未開拓であり、本研究でHLA非依存的なTCR-T細胞療法を開発できれば、世界初の治療法になり多くのがん患者の治療に寄与できる。
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研究実績の概要 |
阻害剤療法を補完する免疫学的がん治療法のひとつとして注目されている。課題として、治療に使われる細胞傷害性CD8陽性T細胞のTCRが主要組織適合抗原 (HLA) クラスI分子に拘束されており、HLAクラスI分子の多型性のために、1人の患者から取得した腫瘍特異的TCRを、HLAの異なる別の患者の治療に用いることができないことがある。我々はこれまでに乳癌患者の腫瘍浸潤CD8陽性T細胞のTCRを単一細胞レベルで解析し、その中から患者HLAクラスI分子に関係なく腫瘍細胞に反応するTCRを見出した。本研究の目的として、取得したHLAクラスI非拘束性腫瘍反応性TCRの抗原提示分子を明らかにし、抗原分子を同定することが掲げられている。これまでにMHC class-I like molecule(MR1)分子が関与することを示してきたが、令和4年度はHLA-E分子やCD1分子が当該TCRの反応性に関与しないことを確認した。また、これまでに報告されているほぼ全てのがん細胞に反応するMR1拘束性TCRと異なり、我々のMR1拘束性TCRは乳がん細胞にしか反応しないことがわかった。さらに、これまでに同定されているMR1拘束性のT細胞は、いずれもMR1のリガンドであるAc-6-FPでその反応が阻害される。しかし、我々のTCRの乳がん細胞に対する反応はAc-6-FPで阻害されないことが明らかになった。以上より、我々が同定したMR1拘束性TCRは、これまでに見出されていない新規のMR1拘束性TCRであることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度は解析するHLAクラスI非依存性のTCRがHLA-E分子には拘束されないことを確認した。また、近年同定されたがん反応性MR1拘束性TCRがほとんどすべての癌細胞に反応するのに対し、我々の同定したMR1拘束性TCRは乳がん細胞に特異的に反応することが示された。さらに、MAIT細胞および近年同定されたMR1拘束性のT細胞のいずれもがその反応性をMR1のリガンドであるAc-6-FPで阻害されるのに対し、我々の解析しているMR1拘束性TCRの反応はAc-6-FPでは阻害されないことを示した。以上より、我々の同定したMR1拘束性TCRは、これまでに報告されていない全く新規のMR1拘束性TCRであることが明らかになった。研究はほぼ順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、乳がん細胞特異的なMR1のリガンドの同定を行うために、 1)CRISPR/Cas9システムを用いた全ゲノムのノックアウトを用いて、抗原の提示に関与する分子の同定を行う。 2)我々のMR1拘束性TCRが反応する乳がん細胞と反応しない乳がん細胞のメタボローム解析を行い、リガンドを推定し、検証していく。
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