研究課題/領域番号 |
21K18278
|
研究種目 |
挑戦的研究(開拓)
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分56:生体機能および感覚に関する外科学およびその関連分野
|
研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
富田 浩史 岩手大学, 理工学部, 教授 (40302088)
|
研究分担者 |
菅野 江里子 岩手大学, 理工学部, 准教授 (70375210)
尾崎 拓 岩手大学, 理工学部, 准教授 (70621069)
田端 希多子 岩手大学, 理工学部, 特任准教授 (80714576)
|
研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
25,870千円 (直接経費: 19,900千円、間接経費: 5,970千円)
2024年度: 5,330千円 (直接経費: 4,100千円、間接経費: 1,230千円)
2023年度: 6,110千円 (直接経費: 4,700千円、間接経費: 1,410千円)
2022年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2021年度: 9,360千円 (直接経費: 7,200千円、間接経費: 2,160千円)
|
キーワード | ステップ関数型オプシン / 遺伝子治療 / 網膜変性疾患 / ミューラー細胞 / 線条体 / 網膜変性 / チャネルロドプシン / 神経栄養因子 / 光遺伝学 |
研究開始時の研究の概要 |
当研究室で開発したswitChは光照射によってチャネルが開き、光の消灯後も数分間、チャネルの開状態が持続し、紫光照射で即座に閉じる機能を有する。網膜のグリア細胞や網膜色素上皮細胞は脱分極刺激により神経栄養因子を産生することが知られており、これらの細胞にswitCh遺伝子を発現させることで、昼間、太陽光で神経栄養因子が産生され、室内あるいは夜間には、産生が止まるシステムを作り出すことができる。緑内障や網膜色素変性症は、本邦の中途失明原因の第1,2に位置し、神経保護薬の開発が待ち望まれている。本研究は、このような疾患に対する有効な治療技術となる可能性がある。
|
研究実績の概要 |
当研究室で開発したステップ関数型オプシン(SFO)に分類されるswitChは、450~600nmの光照射でチャネルが開口し、1秒間の光照射では光消灯後も約7分間開口が持続し陽イオンの流入が持続する。また、開口状態の際に、400nmの光を照射することで即座に閉口させることが可能な特徴的なSFOである。現在までに、switChを恒常的に発現する培養ミューラー細胞に光照射を行うことでGDNFの発現が増加すること、switCh発現Tgラットは連続光照射による視細胞変性に対し、耐性を示すことが明らかとなっている。 今年度は、GDNF以外の神経栄養因子の発現の変化を調べるとともに、switChによる神経変性保護の可能性を調べる目的で脳への遺伝子導入で光による行動制御が可能かについて調べた。 培養細胞において、BDNF, CNTF, NGF, bFGF, EGFの発現を調べたところ、NGF, CNTFについては変化が見られなかったものの、BDNF, bFGF, EGFの発現は3-5倍に増加した。GDNFの発現増加によりBDNFの発現が誘導されることが報告されているが、bFGF,EGFの増加のメカニズムは不明である。また、switChを線条体に導入し、線条体を光ファイバーで光刺激を行ったところ、光刺激と対側で運動を制御できることが新たに判明した。 以上の結果から、switCh遺伝子の導入により、神経栄養因子の発現を誘導できることだけでなく、神経細胞に発現させることによって神経細胞の活動を短い光刺激で長時間制御可能であることが明らかとなった。 今後は、照射する光の量や時間を制御し、産生されるGDNFタンパク量を測定する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
グリア細胞にswitChを導入し神経栄養因子の誘導を試みたが、非特異的プロモーターを用いた場合、神経細胞にも導入され、神経細胞の活動制御へと繋がった。実際、パーキンソンモデルで用いられる行動試験を用いて、線条体に遺伝子導入を行ったところ緑色光刺激で対側足の抑制が見られ、1秒の光刺激でその抑制は3分以上持続した。また、400nm(紫色)の光刺激で、その抑制は直ちに解除され、照射する光波長で行動を制御できることが確認できた。以上の結果は、網膜のみならず脳への単一の遺伝子導入で、照射する光波長を変えることで活動を制御できることが明らかとなった。
|
今後の研究の推進方策 |
GFAPプロモーターを持つAAVベクター2型ベクターの硝子体内投与による遺伝子導入効率は低く、AAV6型変異型を用いることで導入効率の改善が見られた。当研究室で新たに開発した変異型AAV2種類は培養細胞を用いたスクリーニングで高い導入効率が得られたため、これらの血清型でミューラー細胞への導入を試み、より変性保護効果を高めることができるかを検証する。また、Tgラット網膜中のGDNFの発現量をタンパクレベルで検出し、保護効果をさらに高めるための光条件や照射時間を決定する。
|