研究課題/領域番号 |
21K18296
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研究種目 |
挑戦的研究(開拓)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分59:スポーツ科学、体育、健康科学およびその関連分野
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研究機関 | 松本大学 |
研究代表者 |
河野 史倫 松本大学, 大学院 健康科学研究科, 教授 (90346156)
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研究分担者 |
小野 悠介 熊本大学, 発生医学研究所, 教授 (60601119)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
24,700千円 (直接経費: 19,000千円、間接経費: 5,700千円)
2024年度: 4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
2023年度: 4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
2022年度: 9,100千円 (直接経費: 7,000千円、間接経費: 2,100千円)
2021年度: 5,720千円 (直接経費: 4,400千円、間接経費: 1,320千円)
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キーワード | 骨格筋 / エピジェネティクス / 運動 / ヒストンターンオーバー / サテライト細胞 / ヒストンシャペロン / H2B-GFP / リプログラミング |
研究開始時の研究の概要 |
運動が骨格筋にエピジェネティクスを引き起こすこと(運動エピジェネティクス)が分か り始めている。ヒストンターンオーバーの活性化は運動エピジェネティクスの一端を担う 現象であり、遺伝子構造を緩んだ状態に変化させ遺伝子を読み取りやすくするが、その活 性化メカニズムは不明である。本研究の目的は「運動によるヒストンターンオーバーの活 性化は新規に供給されたサテライト細胞由来の筋核(新生筋核)で起こっている」という 仮説を証明することである。運動効果獲得に必要な遺伝子基盤をサテライト細胞が供給することが証明できれば、骨格筋の適応能力そのものを制御する仕組みとして、運動に新たな意義を見出すことができる。
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研究実績の概要 |
運動によって骨格筋線維で生じるヒストン置き換わり(ヒストンターンオーバー)活性化の仕組みを追究している。「ヒストンターンオーバーはサテライト細胞に由来する新生筋核で起こっている」という仮説を立て一連の研究に取り組んでいる。2023年度は、運動トレーニングによって増加する新生筋核を可視化し、それらにおいてヒストンターンオーバーのトリガーとなるヒストンシャペロンSPT16発現が高まっているか検討した。骨格筋特異的ACTA1プロモーターの制御下において核移行シグナルを有するEGFPを発現するウイルスベクターをマウス前脛骨筋に注入し、1カ月後から12週間のレジスタンストレーニングを実施した。その結果、トレーニングにより総筋核数ならびにEGFP陰性(新生)筋核数が有意に増加した。EGFP陽性(既存)筋核数は逆に減少した。SPT16陽性筋核は特に新生筋核に認められた。これらの結果は、運動によるヒストンターンオーバーの活性化がサテライト細胞由来の新生筋核で起こっていることを強く示唆する。熊本大学(小野研究室)では単一核RNA-seq解析のための予備実験ならびに本実験を実施した。この解析で使用するPax7-EYFPマウスを用いてEYFP発現を誘導した状態で、トレーニングによりEYFP陽性筋核が出現することを確認した。松本大学ではSPT16ノックインマウスを作成し、繁殖している。2024年3月時点で3系統それぞれF4まで交配完了しており、現在ドライバーマウス(ACTA1-MCM)との交配を開始している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
サテライト細胞由来の筋核を可視化し特定する実験、単一核RNA-seq解析はいずれも順調に進んでいる。ノックインマウス作製は、F0獲得自体が早期に完了し、実験全体が前倒しに進行している。3検討いずれもF4以上まで交配が進んだこと、全ての系統でCreによるtransgeneの発現誘導が確認できたこと(F2時点)から当初の計画以降の進展であると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度はノックインマウスを用いた実験を実施する。まず、現在保有する3系統から最適な系統を絞る。ドライバーマウスと交配した後、8週齢時にタモキシフェン投与を行う。その後1ヵ月飼育し、original SPT16およびtransgenic SPT16それぞれの遺伝子発現を全身臓器で調べ、タモキシフェン非投与個体と比較する。骨格筋においてはウェスタンブロット法を用いてタンパク質発現レベルも調べる。リーズナブルなtransgenic SPT16発現が認められた系統はさらにH2B-GFPマウスと交配し、SPT16発現誘導により筋線維においてヒストンターンオーバーが活性化されることを直接測定する。さらにトレッドミルを用いた走運動トレーニングを実施する。運動条件をマイルドに設定し、本来phenotypicな変化までは誘導できない運動プロトコールでも適応変化を誘発できるか評価する。
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