研究課題/領域番号 |
21K18307
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研究種目 |
挑戦的研究(開拓)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分61:人間情報学およびその関連分野
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
門内 靖明 東京大学, 先端科学技術研究センター, 准教授 (90726770)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
26,000千円 (直接経費: 20,000千円、間接経費: 6,000千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2021年度: 22,620千円 (直接経費: 17,400千円、間接経費: 5,220千円)
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キーワード | テラヘルツ波 / レーダー / 生体計測 / アンテナ / 導波路 / 生体信号 |
研究開始時の研究の概要 |
電磁波の反射位相に着目したセンシングにより、センサを皮膚に近づけるだけで非接触的に生体電気信号を計測する技術の実現を目指す。一般に電磁波は低周波なほど皮膚下に深く到達可能な一方、高周波なほど空間分解能が向上する。このトレードオフ下で、本提案に最適な電磁波の周波数を決定する。次に、反射位相をパターン計測するためにセンサアレイを構築する。ピクセルごとに反射波と参照波との非線形検波を行って位相を個別に検出できるようにする。そして、上記で作製されたセンサを用いて、健康状態のモニタリングおよび身体動作の推定のアプリケーションの原理実証を行う。
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研究実績の概要 |
反射位相をパターン計測するための漏れ波構造を試作した。導体板間に構成される導波構造中において実効屈折率分布に基づくレンズを実装し、入力ポートから励振される波動を2次元ビームに変換する構造を実現した。そして、反射波と参照波との非線形検波を行って位相を計測できるようにし、試験物体として配置した振動子の振動位相を読み取れることを原理実証した。しかし取得された信号強度が低いため、今後は適切な漏れ量を達成する導波構造の作製が必要となる。また、並行してパターン計測の高度化に向けて、直線偏波の方向を電子的に制御する方法、ならびにテラヘルツ波と同程度の波長を有する超音波のパルスパワーを増幅する方法を提案・実証した。具体的には、マジックティを介して結合する2台の発振器の結合位相をバラクタダイオードへの印加電圧によって制御することで、マジックティの2つの出力ポートに接続された直交偏波アンテナペアへのパワー分配率を連続的に制御し、直線偏波方向を任意に変えられることを実証した。また、テラヘルツ波と同程度の波長を有する超音波のパルス増幅を可能にする方法についても提案・実証した。音響共振器に対して回転型のシャッターで開口部を開閉して内部に蓄積された音響エネルギーを瞬時開放することで、高い瞬時パワーを放出できることを実証した。その際、導波管フランジのチョーク構造と同様の音響チョーク構造を導入することで、音響共振器のQ値を向上させられることを示した。さらに、テラヘルツ波を水槽内の水に照射する際に光音響効果によって発生される超音波の音圧の定量評価ならびに生体内情報伝送への応用の原理実証を行い、計測プローブおよび情報キャリアとしての有用性を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
試作された導波構造から十分な信号強度、すなわち漏れ量を得るには、大面積性と導波構造作製精度とのトレードオフを考慮して導波構造を改善する必要があることが分かった。一方で、テラヘルツ波の偏波方向の電子制御を可能にする方法や、テラヘルツ波と同程度の波長を有する超音波のパルス増幅を可能にする方法など、要素技術上の進展があった。また、光音響効果を介してテラヘルツ波を超音波に非接触変換する手法を実装・評価し、生体内情報伝送への応用を原理実証した。よって、本研究計画は概ね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、まず漏れ波を生成する導波構造を改善する。具体的には、導波構造中に組み込まれた導体メッシュ層部分の極板間距離を設計値に近づける。また、サーキュレータの漏洩を利用する新たなミキシング構造の実装を検討する。使用する周波数については、達成可能な出力の下で透過性の高さと分解能の高さの間のトレードオフを考慮して決定する。また、光音響効果を介して生成される超音波による生体内情報伝送についても、伝送容量の向上に取り組む。以上を通して、身体動作の推定や健康状態のモニタリングなどのアプリケーションの原理実証を試みる。
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