研究課題/領域番号 |
21K18308
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研究種目 |
挑戦的研究(開拓)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分61:人間情報学およびその関連分野
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
和田 隆広 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (30322564)
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研究分担者 |
池田 和司 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (10262552)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2021年度)
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配分額 *注記 |
25,870千円 (直接経費: 19,900千円、間接経費: 5,970千円)
2023年度: 11,960千円 (直接経費: 9,200千円、間接経費: 2,760千円)
2022年度: 7,670千円 (直接経費: 5,900千円、間接経費: 1,770千円)
2021年度: 6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
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キーワード | 動揺病 / 宇宙酔い / 数理モデル / SVC仮説 |
研究開始時の研究の概要 |
乗物酔い(動揺病)では,その機序としては感覚矛盾説が広く受け入れられている.「矛盾」を具体的に扱った,主観的重力矛盾 (SVC)仮説では,感覚器で得た重力方向と,中枢神経系に構築されていると考えられる内部モデルで予測された重力方向の差を「矛盾」と考える.SVC仮説は重力方向の知覚を主に取り扱っていることから動揺病と宇宙酔いを統一的に記述できる可能性があるとの着想に至った.本研究では,代表者がこれまでに提案しているSVC仮説の計算モデルに,欠けていた視覚による垂直方向知覚を含むものに拡張することで,SVC仮説によって動揺病と宇宙酔いの記述に挑戦すると共に,その有効性を実験にて検証する.
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研究実績の概要 |
多くの宇宙飛行士が経験する宇宙酔いの解決が有人宇宙開発において望まれている.宇宙酔いはいわゆる乗物酔い(動揺病)とは異なる点も多く,発生機序には不明な点も多い.一般の動揺病については,最近の計算モデリング研究によって,理解が少しずつ進んでいる.本研究では申請者らがこれまで提案しているSubjective Vertical Conflict仮説(重力方向に関する運動知覚に対するコンフリクトが動揺病に繋がるという仮説)の計算モデルを,宇宙酔いの表現に適用できるように拡張することを目的としている.初年度である2021年度は,当初の予定通り,1)視覚を含む動揺病計算モデルに取り組んだ.特に,これまでの動揺病モデルでは一切扱えていなかった,視覚による重力知覚(Visual Vertical)の機能を有する動揺病モデルを開発した.建物等がよく見える屋外で移動する際の視覚を模擬したカメラ画像とIMUにて計測された頭部運動を提案モデルに入力した結果,良好な視覚情報が得られる場合に比べ,部分的に視覚が遮られて正確なVVが得られにくい状況においては,モデルで予測される動揺病が大きくなることを確認した.今後は動揺病計測実験を実施し,モデルの妥当性を確認する.また,動揺病の深い理解を目指し,動揺病の定量的な評価や分子メカニズム解析のため、発症時のマルチオミクス解析を行うことにした.本年度は別疾患を利用したマルチオミクス解析手法の確認,マルチオミクスデータ取得および解析の環境整備および倫理審査を含む手順の確認を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書では,2021年度は,視覚を含む動揺病計算モデル開発に挑戦することになっていた.予定通り,前述の視覚による垂直知覚の影響を加味した動揺病もデルを開発した.さらに,当初予定になかったが,動揺病の定量的な評価や分子メカニズム解析のため,発症時のマルチオミクス解析を行うことにし,その準備を進めた.以上から,概ね順調に進行していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
順調に進行していることから,申請書に沿って当初の予定通り研究を進める.申請書に記載の通り,2021年度に開発したモデルの有効性を確認するために,地上における実験を実施する.(a)静的視覚機能の効果実験と,(b)運動予測効果の実験を共に行い,動揺病発症率の観点から,モデル評価を実施する予定である.また,2023年度に実施する微小重力実験の準備として,計算実験を実施する. また,新たに追加した,動揺病の定量的な評価や分子メカニズム解析については,倫理審査と並行して予備実験および予備解析を行うとともに,倫理審査承認後に本実験を実施して分子メカニズムの解明を試みる.
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