研究課題/領域番号 |
21K18312
|
研究種目 |
挑戦的研究(開拓)
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分62:応用情報学およびその関連分野
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
内田 誠一 九州大学, システム情報科学研究院, 教授 (70315125)
|
研究分担者 |
中島 直樹 九州大学, 大学病院, 教授 (60325529)
加葉田 雄太朗 長崎大学, 情報データ科学部, 助教 (40830097)
|
研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
26,000千円 (直接経費: 20,000千円、間接経費: 6,000千円)
2023年度: 9,100千円 (直接経費: 7,000千円、間接経費: 2,100千円)
2022年度: 7,150千円 (直接経費: 5,500千円、間接経費: 1,650千円)
2021年度: 9,750千円 (直接経費: 7,500千円、間接経費: 2,250千円)
|
キーワード | 多目的最適化 / 特異点論 / 医療データ / 機械学習 / パレート解 / 医療情報処理 / 特異点 / 実データ分析 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,医療現場における治療方針決定を,多目的最適化の枠組みで数理的に扱うことで,根拠に基づく医療の進展に寄与することを目的とする.実際,治療方針の決定には,「治療費,治療効果,リスク,リソース(医師団や医療設備)使用量」など考慮すべき複数の評価指標が存在し,さらにそれらのトレードオフまでも考慮する必要がある.そこで本研究では,これを多目的最適化問題として捉え,治療方針の数理的な最適決定を目指す.
|
研究実績の概要 |
今年度も,異分野チームとして構成された担当者間でディスカッションを何度も継続してきた.その一部は,画像の認識・理解シンポジウムにおいて発表済み(タイトル:多目的最適化問題の一意解のための特異点論応用)である.単なる応用研究と異なり,むしろ数学に近い分野の研究が基盤として存在するため論文を多発するのは難しいが,それでも着実に理論的成果は出ている.上記シンポジウムの段階では,複数の二次関数を目的関数とした場合の多目的最適化問題において,そのパレートフロント(パレート解集合)の形状を吟味し,複数の着眼点での特異点を見出すことに成功した.二次関数は,正規分布の対数尤度や,最小二乗系,機械学習における正則化など,実問題で頻繁に用いられる典型的な目的関数である.それらを複数の目的関数としたときに,一般的な荷重和による単一目的化ではなく,多目的のまま扱いながらパレートフロントの曲率最小点の意味での一意解の導出とその意味を見出したのは,成果の一つである.その後も度々対面でのディスカッションも行ってきた.2022年度末時点では,二次関数の代わりに正規分布形状を目的関数に用いた場合について議論を行った.二次関数の場合のパレートフロント形状が比較的安定しているのに比べ,複数の正規分布を用いた場合のパレートフロントは正規分布間の位置関係によって大きく変化し,それによって特異点位置も異なる.例えば,2つの正規分布について,それらの平均間距離を徐々に広げると,特異点位置の軌跡は一種の分岐構造を描くことがわかった.すなわち特異点を頼りに求めた唯一解の様相は状況によって大きく異なるという興味深い成果が得られている.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述の通り,理論研究内容については予想以上の広がりが起きており,多目的問題で多用される二次関数や正規分布を用いてパレートフロントの特異点(曲率最小点や速度最大・最小点)について,その性質を数学的に扱う枠組みができている.特に正規分布については,(当初意図していた情報学における応用に加え)数学的な価値のある成果も生まれつつあり,今後に期待している.医療データのほうも収集が進んでいる.ただし,具体的に特定の医療データに基づいての多目的最適化については未着手である.以上の点を考慮し,「おおむね順調」の評価とした.
|
今後の研究の推進方策 |
理論研究については,引き続き正規分布を中心に,そのパラメータ(分散,平均,次元数)がパレートフロント特異点に与える影響等について,理論的な検討を重ねる.また実問題応用については,複数のトイプロブレムにおいて具体的な一意解を求める検証を行う.そして最終年度にふさわしい集大成として,医療データに関する多目的最適化問題を具体的に設定し,その一意解を求めたうえで,一意解の医療問題における意義を吟味する.
|