研究課題/領域番号 |
21K18314
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研究種目 |
挑戦的研究(開拓)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分63:環境解析評価およびその関連分野
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中田 慎一郎 大阪大学, 高等共創研究院, 教授 (70548528)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
25,740千円 (直接経費: 19,800千円、間接経費: 5,940千円)
2024年度: 7,280千円 (直接経費: 5,600千円、間接経費: 1,680千円)
2023年度: 7,670千円 (直接経費: 5,900千円、間接経費: 1,770千円)
2022年度: 8,190千円 (直接経費: 6,300千円、間接経費: 1,890千円)
2021年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | ゲノム編集 / DNA1本鎖切断 / ゲノム構造異常 / 遺伝子治療 / CRISPR/Cas9 / ニッカーゼ / 大規模欠失 / ノックアウト / 染色体構造異常 / DNA損傷 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、DNA1本鎖損傷により誘発される染色体構造異常発生機構および染色体構造異常発生を抑制する分子機構を解明することである。これまで完全に研究対象外とされてきたDNA1本鎖切断による染色体構造異常の発生機構、発生時の分子機構を解明することは、環境変異原がゲノムに与える影響を研究する上で、学術的・技術的に大きなインパクトをもたらすと考えられる。また、DNA1本鎖損傷由来染色体構造異常の発生を抑制する分子機構の解明は、DNA損傷(環境影響)とゲノム恒常性(防御)の研究に新たな概念を提示することになると期待できる。
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研究実績の概要 |
1つの染色体において、DNA 2本鎖のそれぞれに DNA 1本鎖切断であるニックが発生した際に、2つのニックで挟まれた領域が高頻度に削除されることを発見してきた。このような染色体の構造異常は悪性腫瘍で多く認められ、ヘテロ接合性の喪失の原因となる。一方、機能獲得型変異やドミナントネガティブ効果が原因となる常染色体顕性(優性)疾患において、変異アレル特異的に大規模欠失を発生させることができれば、その疾患が治癒する可能性がある。このような観点から、複数のニックにより生じる比較的大きな deletion の発生機構の解明は、生物学的な意義が高いと考えられる。 本年度には、2つのニックの位置関係、DNA 修復遺伝子機能との関係に関して解析を進めてきた。ニックの位置関係については以下のようにして解析した:遺伝子のセンス鎖上のニックを固定し、アンチセンス鎖上のニックをセンス鎖上のニックよりも(センス鎖における)5′側または(センス鎖における)3′側にニック間距離を様々に設定して発生させた。ゲノム編集済細胞からゲノム DNA を抽出し、long range PCR-ゲル電気泳動を実施し、long deletion 頻度を解析した。DNA 修復遺伝子との関連に関しては、数種類の遺伝子ノックアウト細胞において、同様の実験を実施することで解析を行った。また、多様な標的においてニック間の遺伝子が削除可能であることを確認した。 本実験により、ニックの位置関係によりlong deletion 頻度が異なることが明らかとなった。一方、本年度に使用した遺伝子ノックアウト細胞においては、明確な deletion 頻度の違いは検出されなかった。より精度・特異性の高い手法での解析およびbreakpointの配列解析のためのサンプルを多数収集した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通り、Long deletionが発生しやすいニック配置の特徴を同定した。これは、複数の遺伝子でも同様の結果が得られていることから、普遍的な法則を捉えたと予想される。また、複数の遺伝子ノックアウト細胞におけるLong deletionの頻度の測定を終えた。さらに、遺伝子ノックアウト細胞におけるLong deletion解析用サンプルや、breakpointでのDNA配列解析用のサンプルを多数作成した。これらのサンプルは翌年度以降の解析において速やかに進めることが可能な状況となった。以上より、おおむね順調に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
本年度における問題点としては、Long PCRを用いた手法はニック間の距離によってlong range PCRデザインを変更する必要があることが挙げられる。また、long range PCRを用いた手法では、特異的かつ高感度にdeletionを検出することが困難であることが挙げられる。研究室では、long deletionをlong range PCRを用いず、短いPCRにより定量的に解析するため、新たにdroplet digital PCRによる解析を可能とするプロトコルを確立した。この手法を用いることでより精密にDNA損傷修復関連遺伝子欠損細胞におけるdeletion頻度の解析を実施していく。また、DNA損傷修復関連遺伝子欠損細胞におけるbreakpointの配列をアンプリコン次世代シーケンスにより解析する。これらの解析結果を総合し、複数のニックによりlong deletionが発生する分子機構を解明する予定である。
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