研究課題/領域番号 |
21K18315
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研究種目 |
挑戦的研究(開拓)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分63:環境解析評価およびその関連分野
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研究機関 | 国立極地研究所 |
研究代表者 |
江尻 省 国立極地研究所, 先端研究推進系, 准教授 (80391077)
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研究分担者 |
桂川 眞幸 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (10251711)
中村 卓司 国立極地研究所, 先端研究推進系, 教授 (40217857)
津田 卓雄 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 准教授 (90444421)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
26,000千円 (直接経費: 20,000千円、間接経費: 6,000千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 10,270千円 (直接経費: 7,900千円、間接経費: 2,370千円)
2021年度: 14,170千円 (直接経費: 10,900千円、間接経費: 3,270千円)
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キーワード | 原子・イオン共鳴散乱ライダー観測 / 大気圏・電離圏結合 / 鉛直輸送 / 二波長同時発振レーザー / カルシウム原子・イオン |
研究開始時の研究の概要 |
地球と宇宙の境界領域(高度80-150 km)は、大気が中性大気から電離大気(プラズマ)に変化する地球大気の遷移領域である。しかし、中性大気とプラズマ共に観測手段が限られており、同時観測が困難であるため、化学変化を伴うこの領域の物質輸送は本質的に未解明である。本研究では、この遷移領域において同一空間の中性原子とイオンの密度高度分布を同時に観測可能な世界初の原子・イオン共鳴散乱ライダーを開発し、地球と宇宙をつなぐ物質の鉛直輸送過程を解明することを目的とする。この観測的なブレークスルーを実現することで、中性大気とプラズマ大気を一体として扱う新しい環境計測の研究領域を切り拓く。
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研究実績の概要 |
地球と宇宙の境界領域(高度80-150 km)は、大気が中性大気から電離大気(プラズマ)に変化する地球大気の遷移領域である。しかし、中性大気とプラズマ共に観測手段が限られており、同時観測が困難であるため、化学変化を伴うこの領域の物質輸送は本質的に未解明である。本研究では、この遷移領域において同一空間の中性原子とイオンの密度高度分布を同時に観測可能な世界初の原子・イオン共鳴散乱ライダーを開発し、地球と宇宙をつなぐ物質の鉛直輸送過程を解明することを目的としている。送信レーザー開発では、チタンサファイア(Ti:s)レーザーをベースにした二波長同時発振・注入同期固体レーザーで、カルシウムイオン(Ca+)の共鳴散乱線(393.5 nm)に続き、カルシウム原子の共鳴散乱線(422.8 nm)での発振を確認した。共振器の調整により、単独発振の安定化・高出力化を進めている。ライダーシステム開発では、初年度に波長計の絶対波長校正システムを構築したが、波長計の校正実験中はTi:sレーザーの波長制御には使えない、つまり波長計を校正するためには観測を止めなければならないことが問題だった。波長計でTi:sレーザーの発振波長を制御しながら絶対波長校正も行うために、波長計の参照光源を波長安定化He-Neレーザー光から発振波長をカリウム原子のDoppler-freeの一つにロックしたレーザー光に置き換えることを試みている。また、送信レーザーと受信光学系を組み合わせてCa+およびCaのライダー観測実験も行い、イオン・原子共に有効な共鳴散乱信号を得ることにも成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度も送信レーザー開発班とライダーシステム開発班の二班体制で並行して装置開発を行った。送信レーザー開発では、電気通信大学の桂川眞幸教授と大学院生(研究協力者)が主体となって開発しているチタンサファイア(Ti:s)レーザーをベースにした二波長同時発振・注入同期固体レーザーで、初年度に成功したカルシウムイオン(Ca+)の共鳴散乱線(393.5 nm)での発振に続き、カルシウム原子(Ca)の共鳴散乱線(422.8 nm)での発振に成功した。共鳴散乱ライダー観測では、送信レーザーの波長が正確に共鳴散乱波長と一致している必要があるため、発振波長を正確に測定し調整する必要がある。レーザーの発振波長制御に用いている波長計の絶対精度の校正のために、初年度は、観測とは別に校正実験として行う手法を採用して校正システムを構築した。しかし、より正確な観測を行うためには、観測中も波長計の絶対精度校正を行うことが望ましい。これを実現するために、当初の予定には無かったが、波長計の参照光源としてより波長精度の高い光源を実現し、利用することを試みている。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は、これまで各々に開発を進めてきた送信レーザーとライダーシステムを組み合わせ、共鳴散乱ライダー観測試験をより重点的に行う。一波長ごとの観測で共鳴散乱ライダーシステムとしての動作確認を行いながら、観測ソフトウェアやデータ収録系の改良を行う。並行して、送信レーザー開発班は二波長同時発振とその安定化・高出力化、ライダーシステム開発班は波長計の絶対波長校正システムおよび受信光学系の改良を進め、二波長同時観測の実現を目指す。金属原子・イオン共鳴散乱ライダーシステムの開発状況および観測試験の結果について、国内外の学会・研究会で成果発表を行う。
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