研究課題/領域番号 |
21K18320
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研究種目 |
挑戦的研究(開拓)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分90:人間医工学およびその関連分野
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研究機関 | 東北大学 (2022-2023) 千葉大学 (2021) |
研究代表者 |
秋田 英万 東北大学, 薬学研究科, 教授 (80344472)
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研究分担者 |
田中 浩揮 東北大学, 薬学研究科, 准教授 (60801743)
櫻井 遊 東北大学, 薬学研究科, 講師 (00707234)
松下 博和 愛知県がんセンター(研究所), 腫瘍免疫制御TR分野, 分野長 (80597782)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
26,000千円 (直接経費: 20,000千円、間接経費: 6,000千円)
2024年度: 9,100千円 (直接経費: 7,000千円、間接経費: 2,100千円)
2023年度: 9,100千円 (直接経費: 7,000千円、間接経費: 2,100千円)
2022年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2021年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
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キーワード | DDS / RNAワクチン / 癌免疫 / RNAワクチン / 凍結乾燥 / 癌治療 / ネオ抗原 / 脂質ナノ粒子 / ワクチン / RNA / がん抗原 |
研究開始時の研究の概要 |
生体内で抗原を発現させるRNAワクチンは、同一の製剤ながら多種の抗原に迅速に対応できる点で、個別化がんワクチンを実現するための重要な技術となる。我々は、細胞内の環境還に応答して生体膜を突破し、自己崩壊することで細胞質内へRNAを送達できる脂質様材料を開発した。本研究では、簡便にmRNA搭載ナノ粒子を調製可能な製剤を開発する。また、搭載するmRNA配列を設計し、さらに、免疫活性化機構を探索することで効率と安全性を追求する。
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研究実績の概要 |
次世代シークエンサーの技術が発展する中、患者個々の腫瘍組織において特異に発現する変異蛋白質(ネオ抗原)を標的とするワクチンが、個別化がん免疫治療法として注目されている。特に、生体内で抗原を発現させるRNAワクチンは、多種の抗原に迅速に対応できる点で、個別化がんワクチンを実現するための重要な技術となる。 我々は、細胞内に取り込まれた後にエンドソーム内の酸性pHに応答して正に帯電し、生体膜(エンドソーム膜)を突破した後には、細胞質の還元環境に応答して自己分解することで、細胞質内へRNAを送達できる脂質様材料としてSS-Cleavable and pH-activated lipid-like material: ssPalmを開発した。特に、ビタミンEを疎水性足場とするssPalmE粒子は免疫活性化能を有し、さらに、抗原をコードするmRNAを本材料から形成されるナノ粒子に対して皮下投与することで抗原特異的な細胞傷害性T細胞を活性化できることから、RNAワクチンとしての応用が期待できる。 今年度は、ssPalmEの細胞性免疫の免疫活性化機構や、抗原提示細胞の同定などをおこない、これら成果と共に論文に採択された。また、ビタミンEを足場構造に有しながら、さらに自己分解性を高めた脂質材料を開発した。本材料から形成される凍結乾燥型Ready-to-Use製剤の免疫活性化効果を実証した。一方、RNAを加えるだけでRNA内封ナノ粒子を調製できる凍結乾燥製剤の改良として、mRNAだけでなくアンチセンス核酸も簡便に搭載可能な液剤型のReady-to-Use製剤の開発に成功した。 また、抗腫瘍効果の検証に用いる癌抗原を決定するため、長期に培養した細胞株を用いてNGS解析をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、ssPalmEの細胞性免疫の免疫活性化機構として、I型インターフェロンの応答が重要な役割を果たすことを見いだした。さらに、皮下の特定の樹状細胞が抗原提示に関わることについても併せて見いだし、論文に採択された。 また、免疫活性化効果の期待できるビタミンEを足場とし、さらに、還元環境に応答して自己分解するフェニルエステル基を挿入した新規のssPalmEを開発した。本材料を用いて調製した凍結乾燥型Ready-to-Use製剤に対して、抗原をコードするmRNA溶液を加えることにより、簡便に任意のmRNAを搭載した脂質ナノ粒子を調製できることを見いだした。本製剤を投与することによって、効率的に細胞性免疫を誘導できることを明らかとした。 さらに、今後の免疫活性化型RNAワクチンを開発するために、モデルナ製のRNAワクチンで用いられている脂質材料を組み込んだ、組成の異なる脂質ナノ粒子を調製し、その免疫活性化能を評価した結果、その免疫活性化機構は脂質材料よりむしろ、コレステロールの含量に依存することが明らかとなった。X線小角散乱を用いた解析により、ナノ粒子内に形成される微小なコレステロール構造体の存在が免疫活性化に重要であることが示唆された。また、ネオアンチゲンの候補を探索すべくNGS解析をすすめており、解析中である。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度に向けて、抗腫瘍効果の検証に用いる癌抗原の候補を絞りこむ。また、これらのネオアンチゲンをコードしたmRNAを設計したRNAワクチン製剤を開発する。この際、ビタミンE足場型を有したssPalmを用いるが、mRNAの導入効率を高めるための製剤学的な改良を試みる。様々な候補となるmRNAを迅速に搭載する上で、Ready-to-Use技術を活用しながら活用する。最終的には、これらワクチンを投与した際の抗腫瘍効果について検証する。
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