研究課題/領域番号 |
21K18324
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研究種目 |
挑戦的研究(開拓)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分90:人間医工学およびその関連分野
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
佐々木 善浩 京都大学, 工学研究科, 准教授 (90314541)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
25,870千円 (直接経費: 19,900千円、間接経費: 5,970千円)
2025年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2023年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2022年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2021年度: 6,760千円 (直接経費: 5,200千円、間接経費: 1,560千円)
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キーワード | 膜タンパク質 / 無細胞蛋白質合成 / 固相合成法 / 人工細胞 |
研究開始時の研究の概要 |
Merrifieldはペプチド固相合成法の開発により1984年ノーベル賞を受賞した。しかしながら、この手法は水に不溶な膜タンパク質には適用できない。全タンパク質の半数以上を占める膜タンパク質の人工合成法の開発は、生物学、医学、薬学において極めて重要であるが、膜タンパク質の簡便な合成は未だ不可能である。本研究では、この膜タンパク質を固相システムにより大量合成する。従来、膜蛋白質は細胞を用いて合成されるが、その活性の低さ、時間・コスト等が非効率、バイオハザードの危険、などが問題である。本研究では、微粒子表面に担持した脂質膜に対し、無細胞合成法により発現した膜タンパク質の直接組み込みを行う。
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研究実績の概要 |
全タンパク質の半数以上を占める膜タンパク質の人工合成法の開発は、基礎生物学、医学、薬学において極めて重要であるが、膜タンパク質の簡便な合成は未だ不可能である。本研究では、この膜タンパク質を固相システムにより大量合成する未踏科学技術に挑戦する。従来、膜タンパク質は、大腸菌などで過剰発現させ、界面活性剤により可溶化したのち、膜に再構成して得られる。この手法は、活性保持が困難、時間・コスト等が非効率、バイオハザードの危険、など多くの問題が残されている。この問題の解決に向け、本研究では、微粒子表面に担持した脂質膜(脂質膜コート微粒子)に対し、無細胞合成法により発現した膜タンパク質の直接組み込みを行うことを目的に研究を行った。 研究遂行にあたり、以下の3点に焦点をあてて研究を遂行する。 1) 脂質膜コート微粒子の作製と評価2)無細胞膜タンパク質合成と膜への組み込み、3) 膜タンパク質ハイブリッド微粒子の機能評価とバイオ応用。研究の3年目にあたる2023年度は当初の計画に従い、ひきつづき上記の項目1)および2)について重点的に研究を行った。前年度までに、新たに開発した脂質膜透過法を用い、人工の脂質膜のみならず天然の生体膜を効率的にコア微粒子に被覆する手法を見出した。また、磁性ナノ粒子を脂質膜と複合化する手法も開発した。さらに、複数の膜タンパク質を単一の微粒子に搭載するための手法の開発を目的として、固相合成法により脂質膜被覆微粒子に対して複数の膜タンパク質を簡便に搭載することが可能であることを予備的に明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度においては、おもに1) 脂質膜コート微粒子の作製と評価、および、2) 無細胞膜タンパク質合成と膜への組み込み、について重点的に研究をおこなった。以下におのおのの研究項目における進捗状況をまとめた。 1) 脂質膜コート微粒子の作製と評価: 通常、膜タンパク質を保持するために用いられるリポソーム(中空球状の脂質膜)や生体膜ナノ粒子は、比較的不安定かつハンドリングも困難である。本年度は脂質膜透過法によるシリカ微粒子の被覆を行なった。さらに、ここで被覆した生体膜についてプロテオームプロファイリングを行い、細胞の状態に応じて選択的に膜タンパク質が抽出されていることも見出し、これらの結果の論文投稿を進めている(Biorxive, 2023)。またコア微粒子としてシリカのみならず、多孔質微粒子、銀ナノ粒子を用いる系についても検討をおこなった。 2) 無細胞膜タンパク質合成と膜への組み込み:脂質膜コート微粒子存在下、再構築型の試験管内タンパク質合成系であるPURE systemを用いて目的とする膜タンパク質を発現させる。本年度は、この手法を用いて、細胞接着関連の複数の膜タンパク質を単一の微粒子に構築できることを明らかにした。具体的には、ギャップジャンクションを形成するコネキシンと、タイトジャンクションを形成するクラウディンをモデル膜タンパク質として用い、連続的に固相合成を行うことで、それぞれの膜タンパク質が確かに発現していることを、ウェスタンブロッティング、蛍光抗体標識などにより、予備的に明らかにした。さらに、これらの膜タンパク質の共同効果により、細胞接着が強化される予備的な知見を得た。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き、1) 脂質膜コート微粒子の作製と評価、および、2) 無細胞膜タンパク質合成と膜への組み込み、について研究をおこなうとともに、3) 膜タンパク質ハイブリッド微粒子の機能評価とバイオ応用についても検討をすすめる。まず、1)については、用いる微粒子を工夫することでその性質を最大限利用する方法を検討する。脂質膜コート微粒子として、ナノサイズの空孔を有する多孔質シリカ微粒子や抗菌活性を有する銀ナノ粒子を用い、薬物の内包や抗菌機能について評価を行い、3)のバイオ応用としてDDSキャリアなどとしての展開をはかる。2)については、細胞接着関連タンパク質をさらに複数個発現させることで、細胞接着における膜タンパク質の作用機序についてモデル系で明らかにすることを目指す。また、膜受容体、ヘマグルチニン、細胞接着に関わる膜タンパク質など多種のタンパク質を用いて本手法の一般性について引き続き、検討を行う。
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