研究課題/領域番号 |
21K18329
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分1:思想、芸術およびその関連分野
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
尾川 明穂 筑波大学, 芸術系, 准教授 (20630908)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
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キーワード | 書字運動 / 手指構造 / 運動解析 / 字径 / 大字 / 筆管の回転 / 顔真卿 / 断筆 / アーカイブ / 身体性 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、書字運動の解析により、一世代にしか現れないような優れた書芸術が身体構造に起因する手指運動の制限で生じたこと―すなわち身体性に強く依拠することを明らかにしようとするものである。従来の学習法である古典書跡の拡大臨模(まねて書いたり敷き写すこと)では習得困難な部分に注目することで、書の教育・歴史の研究に繋げるとともに、運動解析の結果をアーカイブ化することで、書以外の身体技能の解明に資することを目指す。
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研究実績の概要 |
本年度は、勤務先の研究倫理審査の承認を受けた上で、協力者による運動解析を実施した。 実験に先立ち、日本・中国の名跡に見られる特徴的な字形により、いにしえの執筆法と運筆を検討したところ、①字・行を体の向きに対しやや左傾させ、②右手人差し指の指先~第二関節のやや下と、中指の指先(親指側の側面付近)~第一関節で筆管の奥を押さえ、その反対側を親指の指先~第一関節で押さえて、筆管を指の上で転がすことで書写していたものと推測した。協力者による実験においては、名筆として知られる王羲之「蘭亭序」神龍半印本、チョ遂良「雁塔聖教序」、顔真卿「顔氏家廟碑」の原寸臨書を依頼し、書風の再現度や手指運動の合理性を見ることで、上記推測の妥当性を検証した。 その結果、時計回りとなる筆管の回転により顔真卿楷書の特徴的な左払い「燕尾」が再現され、また、他の臨書でも手指運動の幅・量が少なくすむことが確認された。この執筆法・運筆の想定に基づくと、細い縦罫の紙(縦簾紙)の使用や、一旦切れたような転折(断筆)の出現など、理由の定かではない書法史上の事象についても説明できることから、書法史研究に応用可能であると結論づけた。以上は、口頭発表「手指運動解析の書法史研究への応用について」(第32回書学書道史学会大会、2022)において公表した。 また、上記の結果を受けて、漢字(楷書)の筆順の根拠が手指運動に求められる可能性について検証した。その結果、歴史的に採用されてきた筆順には、筆管を時計回り・反時計回り交互に回転させて運筆しやすいことが確認できた。長い紙絹(条幅)などへの大書が流行した中国明代以降、筆順に関わる論著が出現しているが、それは字径の拡大化によって筆管を回転させる運筆が採用されなくなったためと推測した。以上は、口頭発表「漢字楷書の筆順の考え方について」(書芸術研究会例会、2023)において公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実験結果の解析や、資料作成に時間を要するため、やや遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
実験手順の簡素化を図りつつ、上述の執筆法と筆管の回転を中心に検討することにより、速やかに考察を進めていきたい。
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